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経済学

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2015年3月22日

絶好調の日本経済?


日本の株価は久しぶりに2万円に迫り、企業収益も記録的水準にある。バブル期の株価は3万円近くあったのだし、企業収益も海外からの利益送金が円ベースでは膨らんで見えることに助けられているのだが、マスコミは異様な囃しぶりだ。安倍政権にゴマをすっているのだろう。

アベノミクスがいよいよ成果を発揮し出したのか? そういうわけでもないだろう。昨年第4四半期、やっとプラスになった成長率(年率換算で2.2%増)の経済成長のうち、多くは輸出増(2.7%増)、そして原油価格急落による輸入の伸びの鈍化に支えられている。輸出増は円下落に助けられたと言うよりは、米国経済の回復によるものだ。つまり安倍首相は強運の人で、米経済の回復と原油価格の急落という、アベノミクス以外の要素に助けられている。

しかし、政治は結果がすべて。これでいいのだ。原油価格の急落で、物価はますます伸びなくなるだろうから、「消費者物価を2%上げるのだ」という奇妙なターゲットも、この頃は蔵にしまわれた。良いことだ。

この頃、長期金利が乱高下することが増えている。金融機関が国債価格の下落を恐れて購入を一時手控えるようなことがあるからである。今はまた金利動向は落ち着いたようだが、もし国債が発行し過ぎと思われて、価格が下落、利子率は上昇ということになるとどうなるか? 国家財政が破綻し、世の中はハイパー・インフレということになる?
 
しかし国内に金融資産が1500兆円以上ある中で、毎年国債で借り上げる分は50兆円そこそこ。結局、風呂の中で湯をすくっては頭にかけて温まっているようなもので、不足気味の投資・消費を政府が成り代わってカネをまわしているのである。利子率が上昇する時は、景気が上昇して民間での資金需要が出てきた時だろう。その時は国債発行額を縮小すればいいのだが、好景気で税収が増えるまでにはタイムラグがある。一時的に予算が足りない事態が生ずるかもしれないが、予算というのはいつも目いっぱい支出されるわけでもないので、やり繰りはできるのでないか。

 となると当面の心配は、米国のシェール・オイル、シェール・ガス企業が発行した債券を大量に組み込んだデリヴァティヴ約4兆ドルが原油価格下落で暴落し、住宅ローン債権を組み込んだデリヴァティヴが暴落したことで起きた2008年の金融危機のようなことにまたならないか、ということである。当時、2大公社が発行する住宅ローンは5兆ドルに上っていた。

しかし、懸念を掻き立てる報道は、まだ主流にはなっていない。シェール部門ではエクソン等の大手が中小を統合し、大規模油田、ガス田で採取を続けている。ここでは設備の減価償却はすんでいるので、採掘原価は非常に低く、まだ利益が出る。従って、シェール債券価格崩落はまだ杞憂の段階に止まっているのだ。

(これは2月25日発行のメルマガ「文明の万華鏡」に載せたものに一部手を加えたものです)

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