いろいろな会合に出ていると、「日本はポストモダン国家」（要するに軍事力に依存せず、政府というものもあまり意識せず、経済で生きていける国、という意味だろう）だが、周辺の中国やロシアなどはそうではないので、これら力の世界に生きている国々をポストモダンへ向けて善導していくべきだという議論が出てくる。

基本的には賛成だ。東アジア諸国は中国も含めて、米国が提供してくれるstatus quoと米国が戦後６０年余主導してきたグローバルな自由貿易体制にのっかって繁栄を築いたのだから、ポストモダンの世界にもう移行できるはずだ。だが、「日本はポストモダン国家」だと胸を張り、他国にも同じになるようお説教するのはどうも面映ゆい。

と言うのは、日本は自らポストモダンになるのを勝ち取ったのではなくて、「負け取らされた」からだ。戦争に負けた結果、軍事力を奪われ、三流国にされようとしたのが、折よく起きた冷戦のおかげで自由貿易体制へのタダ乗りを許され、しかも世論の大半は平和主義だったから、今のようになっているのである。

僕は日本の周辺国を「ポストモダン」の方向へ導くことは、日本だけでなく彼ら自身の利益にも適っていると思うが、「日本を見習え」式の高い目線で物を言うと、相手に笑われてしまうのではないかと思う。