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政治学

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2010年11月15日

「政治家主導」――そんなこと前から当然

外国に行くと、よく日本人たちの間で「この前出張でやって来た国会議員のひどい振る舞い」が話題になっている。共通しているのは「政治家主導」のはき違え、公私混同である。

僕は官僚をしていたからよく知っているが、政治家は選挙と政局で忙しいので、「政策」は昔から官僚にまず練らせていた。自分ではそれを採用するかしないかを決め、採用したら党内、国会内でそれを通し、選挙区で説明することでやっていたのだ。

官僚はその昔フランスの法学者モンテスキューが定めた三権分立の原則を、少なくとも顔の上では守り抜き、国会の廊下では江戸時代の茶坊主のように腰を屈めてささっと小走りに歩くのを常とした。

政策の責任を負うのは政党、政治家だったから、内政にしても外交にしても、官僚は政策を練った者の名が外に出ないように気を配り(「官僚は黒子、官僚は無名」が原則である)、「花は政治家に」持たせるようにしたものだ。

それを行き過ぎた官僚たたきの風潮に乗って、官僚を怒鳴りつけ、自分の思いつきを命令一下で実行させることが政治家主導だと思っている政治家たちが登場したことが、国内でも外国でも問題を起こしている原因だ。政策は思いついただけではだめで、利害を有する国内の諸分野を説得し、新しい政策から損害を受ける者への補償金給付の約束を財務省からもぎ取らないと、とても通るものではない。官僚が抵抗しているから通らない、と言うよりも、社会に抵抗する者が多いから通らないのである。

そしてどの国でもそうだが、「この世の中は優れた政治家が一人出てくれば全て改革されてうまくいく」という神話。これが「政治家主導」を歪んだものにしている。この複雑を極める現代社会を一人の政治家が把握し、全ての人脈を把握して、全員を説得できるはずがないではないか。その作業は政党と政治家と官僚たちがチーム・ワークで全力をふるって、やっと少し前進するのだ。

こういうことを学校の先生たち自身が大学で習っていない。彼らは社会に出たことなしに、教師になっている。だから社会について、政治についてナイーブな理解しか持たない日本人が後から後から際限なく出てくるのだ。国民が政治に参加する意欲を高めている現代、このままでは政治が目詰まりで動かなくなる。

品川区でやっているように、社会科の授業には社会人も出てきて銀行ゲームをするとか、政治家ゲームをするとかすれば、事態はもう少し良くなるのでないか?

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