Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
ChineseEnglishRussian

政治学

Automatic Translation to English
Automatic Translation to English
2020年11月18日

数人の老人の想いが動かす今の日本政治

(これは10月27日発行のメルマガ「文明の万華鏡」第102号の一部です)

 安倍→菅の政権交代は見事だった。手品のごとく、菅総理で落ち着いてしまった。そうなった背景には、まず第一に菅氏自身の野心がある。2012年安倍内閣が発足して間もなく、菅氏の野心を疑う記事がマスコミに相次いだが、それはやはり火のない所に煙は立たぬということだったのだろう。僕は、菅氏は自分の分をわきまえていて、総理の補佐に徹するのだろうと思っていたが、そうではなかったようだ。

 特にこの3~4年は手駒を集める動きがハンパなく、その中には小泉進次郎、河野太郎、河井安里等がいた。安里の夫の河井克行という議員がまた面妖な人物で、「選択」7月号などを見ると、鳩山邦夫の「きさらぎ会」事務局長として多額の資金を管轄、2012年の自民党総裁選挙で安倍晋三の当選を実現した影の立役者。そして、その動きの背後にいたのが菅氏だったそうなのだが、2016年鳩山氏が死去すると、河井氏は菅氏に「きさらぎ会」の顧問就任を要請して受け入れられている。つまり、菅氏には「きさらぎ会」の資金と人がついているのだろう。河井安里になると、その参院選出馬は菅の後押しで、しかもそれが随分強引な後押しで、それまでその選挙区で当選していた自民党議員、溝手顕正は落選してしまう。

 で、菅氏はしばらく前から、安倍のあとは自分しかない、という構図を作っていった。それには、安倍総理が後継に思い描いていた岸田氏の芽をつぶすことがまず第一番。岸田氏は、2012年安倍氏が自民党総裁になって間もなく宏池会会長となり、安倍政権を支えた実績を持つ。他方、菅氏は安倍氏の尻を押して総裁、総理に押し上げた張本人。番頭格=官房長官として安倍政権を支えているのに、「次は岸田」と総理が言うたびに複雑な思いを抱いていたのだろう。

岸田氏は、人が良すぎる。方々に気を配りすぎて、自分の野心を後回しにするから、後れを取る。そして、岸田政権の誕生を嫌う者が党内の枢要な地位にいたことは、彼の致命傷となる。その一人は二階幹事長と目されている。岸田政権誕生のためには、同人がまず幹事長をやっておくことが必要(幹事長は党の人事とカネを握る)と予想されていたので、二階は菅と結んでそれを全力でつぶした。彼は81歳になるが、総選挙までは幹事長でいたいようだ。

 で、安倍は突如辞任。岸田も石破もダメということならば、麻生にとっての選択肢は菅しかいない。そこで麻生派は菅支持に回ったのだろうが――人数が多いのでこれが決定打になった――、麻生は何かふっきれていない。彼は選挙区での宿敵、古賀誠を宏池会から切らない岸田に愛想をつかして、菅支持に転んだことになっている。しかし菅も古賀と近いのだ。そして菅と麻生の関係も、第2次安倍内閣成立の時からずっと、良好なものではない。

 だから、来年9月自民党総裁選での麻生の動きは重要なのだ。菅支持でなければ、どうするか? 政府・党の双方を握る菅・二階連合を向こうに回して、独自候補を押し立てることができるのか? 河野太郎は麻生派ではあるが、菅総理に随分取り込まれてしまっている。気を付けないと、河野をダシに、菅総理に麻生派を乗っ取られてしまうかもしれない。

 いずれにしても今回は、二階、麻生、古賀の老人トリオが菅を担いで、自民党の世代交代をせき止めたのだ。この数人の想いだけで日本全体のことが決められてしまい、またそうしてくれるのが当面いちばんいい、というジレンマ、共犯感覚・・・・・・・・・・・・・・


トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.japan-world-trends.com/cgi-bin/mtja/mt-tb.cgi/4039