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政治学

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2017年9月30日

ポピュリズムで人をだますのはもういいから、もっと根底の問題を直してほしい

(以下は、27日にまぐまぐ社から発行したメルマガ「文明の万華鏡」第25号の冒頭です。続きを御所望の方は、まぐまぐ社のサイトから購読手続きをお願いします)

今日本にとって一番大きな意味を持っているのは、日本自身の総選挙です。私自身も9月初旬、森友、加計問題をきっかけとした、安倍総理の人格に対する疑念がだんだん薄れていることを直感で感じていました。総理が畏まった感じを醸しだしていたこと、新内閣布陣が悪くなかったこと、そして北朝鮮ミサイル騒ぎがあったこと、そして経済が悪くないこと(民進党政権になれば、また配分重視で、景気にはネガティブな要素になります)がその背景にあるでしょう。

それでも私は、その頃発表された安倍総理支持率回復という報道に半信半疑だったのですが、本当だったのでしょう。それに民進党の前原新総裁のスタートが山尾問題等ですっかりダメなものとなり、民進党は離党が止まらない中で、前原総裁はまるで徳川慶喜のような存在であることが如実になったそのタイミングを捉え、総理とその周辺はすかさず絶妙のタイミングで総選挙をしかけてきたわけです。大義名分は「危機」とか「人づくり」とかいうことですが、いい加減なもので、要するに「安倍でいい。他にいない」というムードに乗って、政権の長期化を確実なものにしようというわけです。

しかし、25日総理が記者会見をして、「国会を解散します」と明言したのは正直でいいとしても、憲法上は権限を逸脱しています。憲法第7条は「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ」として、衆議院を解散することを掲げているからで、総理が自身で「解散します」と言うのは謙虚さに欠けています。また国会を上から目線で見て、三権分立など顧慮していないことを如実に示しています。

これでまた安倍総理への支持率は下がるでしょうし、小池百合子が遂に(また)「崖から飛び降りて」全国政党の党首に収まり、乾坤一擲の大勝負に出てきたことも、自民党の票を減らすでしょう。皆、まさかと思っていますが、この前の都議会選挙を見ていたら、わずか1週間程の間に、市議会の自民党議員、無所属議員が小池新党の候補としてしゃしゃり出て、そのまま当選してしまいましたので、衆院選でも同じようなことは起きるでしょう。それになんと言っても、小池氏には中年以上の女性の多くが理屈抜きの支持を寄せています。私が時々参考にしているメルマガ「マンさんの経済あらかると」は、自民党敗北、安倍政権早期退陣の予想を早々と掲げています。

しかしこの北朝鮮危機の時(私は収める方法はあると思っていますし、日本がむしろ収拾工作に乗り出すべきだと思っています。その点は10月3日発売のNewsweekに書くつもりです)、政権交代では本当に困ります。
そして誰が政権を取るにせよ、次の課題に取り組んでほしいものです。ポピュリズム的な目くらまし政策はもういらないので

1)黒田日銀総裁の任期が来年4月に切れることを機に、「インフレをかきたてることで投資・消費増につなげる」という奇妙な政策を切りかえてほしいものです。但し、その政策変更が過度な円高を生むと、この2年の経済回復を支えてきた輸出増に水を差すことになるでしょうが。

2)外交、安全保障政策では、日米同盟は堅持しながらも、日本自前の防衛能力の向上を更にはかって米国との同等性を少しでも高めてほしいし、他方この4年間、ほとんど進展していない中国、韓国との外交も何とかしてほしいものです。中韓との関係が進まないために、この4年の安倍外交は何をやっても「片肺飛行」で、本当の安心感が生まれないのです。ロシアとの北方領土問題では、平和条約締結を焦らず、ロシアとは協力もするが、領土問題は未解決であることできっちりと了解をとって欲しいものです。

3)日本のガバナンスについても、大きな問題が生じています。2014年、内閣に人事局が設けられ、各省の局長級以上を中心に、直接人事を決める権限を持つようになっています。総理の権限強化は、危機とも言える現在の世界に敏感に反応するためには必要なことですが、権限は良識をもって使ってもらわないといけません。加計学園問題でも萩生田内閣官房副長官兼人事局長が人事権を振りかざして文科省に譲歩を迫ったように報じられていますし、北方領土問題でも外務省が人事の脅しに屈して共同経済開発方式を飲まされたように報道されています。

4)もう一つ最近目立つのは、政策面ではこれまで補助的な役割しか果たしてこなかった総理の秘書官達が政策形成、関係諸方面の調整に直接乗り出していることです。本来そうした業務を司る内閣官房長官との権限を明確に区切っておかないと、混乱が生じるでしょう。以上偉そうなことを言いましたが、これは一人の有権者、納税者として当然の権利を行使しているだけの話しです。

5)話しを続けると、総理がどうこうできるわけではありませんが、国会議員の在り方も改革を必要としています。小選挙区制になって以来、議員というものの存在が軽い感じになっている――つまりムードに乗ってある日新人が登場し、人気取りになるようなことを無責任にしゃべり、次の選挙では消えていく、というようなことが増えています。そして、議員という職は殆ど「就活」の対象になっていて、橋下とか小池のような人気者に群がっては、その名にぶら下がって立候補して議員としての給与を貪る、都議会では都知事をことさらに誉めそやし、殆どファシズム、あるいは北朝鮮的な現象を呈しているわけです。
これでは、ちゃんとした人が選挙に出る気がしない。今の定職をなげうって議員になっても、数年後には落選、元の職に戻ることもできず路頭に迷う、家族は離散する、こういうことにならないようにするにはどうしたらいいのでしょう。
それだったら、国会議員というものを公務員試験で採用し、身分を長年にわたって保証、彼らは担当の地区の住民の声を議会・政府に伝え、自分でも法案を作るし、政府の提出した法案を審査もする。新しい法案・政策はそれぞれの議員が自分のサイトでSNSに提示し、住民はそれに「いいネ!」を押したりコメントを書く――これに限るわけではありませんが、例えばそんな、要するに独裁防止、市民と政府の間の連絡、法案作成・審査、政策・決定の結果に対して責任を取る、等を兼ね備えた、良い制度はできないものかと思うわけです。ないものねだりですが。


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