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政治学

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2014年7月14日

集団的自衛権と日本の社会

昨日駅前で右翼が演説をしていた。いつもの絶叫調は影をひそめ、どこか説得調。貧困家庭の救済のようなことを言っているので、最初は共産党かと思ったほど。
話しは次第に防衛問題に移って行って、「だから皆さん、集団的自衛権は必要なんですねえ。南シナ海で中国はかくかくしかじかなことをやっているじゃありませんか。だから・・・」という調子。どこか集団的自衛権をめぐって言い訳がましい。

これまでは日本政府の対応は生ぬるいと言っていることができたが、彼らの主張の方向でものごとが動き出し、それに対して多くの国民が反感を示すとなると、右翼も困惑してしまう。これまではロシアや韓国や中国に対する反感をあおっていれば良かったのだが、今や国民の反感は自分達に向けられかねない。

なぜそうなるか? それは、日本で下積みの生活を送っている人々は、不満のはけ口を対中・対韓批判に求めていたのが、今度は中国が本当に脅威になり、ひょっとすると自分達も戦争に狩り出されるのではないか――そう思い始めたからだろう。ナショナリズムは自分達を危ない目に会わせかねない、というわけである。

1991年、ソ連国民は生活の改善を求めてエリツィンの「経済改革」を支持したが、それが年間3000%のハイパー・インフレとなって自分達自身にふりかかってきた途端、「改革反対」へと180度転換した。不満の捌け口ならいいが、それが自分達の負担になるなら御免蒙る、というのである。

その心理をうまくついて、今回、一部のマスコミが「集団自衛権=徴兵制」という宣伝で、多くの国民を引き付けている。残念なことだ。尖閣を取られれば、次は南西諸島、沖縄に中国の関心が及ぶ。そして、自衛隊単独でこれら領土を守ることは難しい。脅威は既にリアルなものになっており、集団的自衛権をどう解釈するかの問題はもう待ったなしだからである。

「集団自衛権=徴兵制」というのは、極端な言い方だ。戦争ばかりしている米国でも、徴兵制は敷いていない。日米安保のカバーする地理的範囲(かなり曖昧だが)において、日本を守る米軍と共同行動をするための集団的自衛権は必要だと思う(内閣法制局の解釈では、これは個別自衛権の範囲でかなりのことができるようだが)。

他方、遠方、例えば中東などになると、自衛の範囲がほぼ無制限に広がってしまう。遠方地域への自衛隊派遣は補給上も困難であるので、例えば沿岸国に掃海艇を貸与、あるいは寄贈する等の措置ですませるべきである。

このあたりは早急に考えを整理しないと、滋賀県知事選敗北のようなことがこれからも続きかねない。

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