日本経済をめぐる誤った思いこみの数々
(これは5月22日に発行したメルマガ「文明の万華鏡」第85号の一部です)
経済や社会の実態、トレンドについては、どこの国でも誤った思いこみが大手を振って、過度の悲観論や楽観論を引き起こす。日本でも、そうした思いこみはいくつかある
。
1)例えば労働人口。藻谷浩介の「デフレの正体」以来、「日本では生産年齢人口が減少するので経済も停滞する」と刷り込まれてきたわけだが、実際の統計を見ると、生産年齢人口、つまり15歳以上65歳未満の人口は確かに低下しているものの、実際に働いている者、つまり労働人口は2012年を底に増え続け、2018年には過去最高の6600万人程度になるものと見られている(18年1月17日付日経)のである。
2)そしてシニア人口が過度に増えるから日本はおしまいだ、シニアはカネは持っていてもあまり使わないからということで、シニアであるところの筆者も申し訳ないと思っていたのだが、税金も健康保険も払っているのだし、介護施設に入れば、そこで消費するカネはハンパでない。シニア年齢層はその保有資産で国債の消化を助けていること、大口の消費者として経済を支えていること等、もっと胸を張って生きていいのではあるまいか。
3)「日本人は生産性が低い」と内外で言われてきたが、それは過剰サービスで人員が余計に要ること、地代が高くて利益率が低いから生産性が低いように見えること等々のためなので、別に日本人が怠惰、あるいは無能だということではない。もちろん、日本でのようにスーパーでのレジ係が商品をバスケットに丁寧に詰め直すような余計なことをしなければ、サービス面での生産性はもっと上がるのだが。
4)そして、「医療費の野放図な増大が日本経済の重石だ」という議論も、本当に正しいのかどうか。今みたいに消費がさえないようなら、医療費で大いに消費してもらえば、社会にカネがそれだけ回るのであるまいか?
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