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街角での雑想

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2011年10月14日

米国在日兵力削減へ クリントン長官論文の意味

クリントン国務長官が10月11日の"Foreign Policy"誌に「これからの世界政治はアジアで決まる。アフガニスタン、イラクでではない。米国はこれからもアクションの中心にい続けるだろう」と題する長大な論文を発表している。僕は今日偶然読んで、この論文が日本にとって意味するものの大きさに衝撃を受けたが、日本のマスコミはそうではないようだ。新味はないと思っているのか、それとも読んでいないのか。

つまりクリントン長官は実質的に在日米軍削減を提唱しているので、どの基地から何がどのくらい撤退するかということが、日本国内で大きな議論を呼んで行く。それだけではなく、米軍が削減される分をどう日本側で埋め合わせるか、あるいはその必要があるのか、といったことについて今すぐ検討が必要になっているのである

この論文の詳しい翻訳はhttp://blog.livedoor.jp/nonreal-pompandcircumstance/archives/50632573.htmlに載っているのでこちらをご覧いただくこととして、ここではほんとうのサワリと、僕の感想を書いておく。

(論文の主要ポイント)
(1)アフガニスタン、イラクへの関与が撤収に向かおうとしている今、米国が世界への関与をやめるよう主張する者が米国内にもいる。ベトナム戦争直後もそうだった。しかし市場経済を守り、核不拡散を実現し、通商路の自由を確保しておくことは、米国の繁栄と安全保障にとって緊要なことである。
経済力が一時減退しているなかで米国の力をどの方面に最も振り向けるか。それは中国が伸長し、米国の経済的利益も大きいアジア太平洋に他ならない。

(2)私がアジアを訪問するとよく、「米国はこの地域に残るつもりか?」と聞かれる。私はこう答える。We can, and we will. アジアでも、米国のリーダーシップが求められている。We are prepared to lead.

(3)米国は幅広い外交手段を使用して、"forward deployed" diplomacy (問題を事前に発見し処理していく外交)、つまり前向きに問題を処理していく。その手段とは要人交流、関係諸省庁の代表が一度にオール米国ミッションとして各国を訪問し懸案を素早く片付けること、経済援助などである。
それによって狙うことは①安全保障同盟関係の強化(日本、韓国、豪州、フィリピン、タイの順に列挙)、②中国を含む新興諸国との対話、③ASEAN等多国間組織との協力、④貿易投資の促進、⑤軍事プレゼンスのベース拡大(broad-based)、⑥民主主義と人権の確保である。

(4)日本と韓国における5万人強の米軍が、アジア太平洋地域の安全保障と安定を保証してきた。これからは米軍配置を地理的にもっと広げ(distributed)、抗堪性があり、政治的にも問題性の少ない(sustainable)ものとする
特に南アジア、インド洋での米軍プレゼンスを強化する。シンガポールには既に沿岸防衛用艦艇を配備したし、これからは共同作戦も検討する。豪州でも米軍のプレゼンスを強化し、共同訓練、共同演習を増やす。

(5)昨今は太平洋とインド洋が軍事的にも一つながりになってきた。これに、米軍の行動をどう合わせていくか。いずれにしても米軍のプレゼンスをもっと広く分布させる必要があり、そのために同盟国、パートナー国を増やしていく。

(6)世界への関与をやめるべきであるという議論はベトナム敗戦の時にもあった。だが米国はいつも、もっと強くなって立ち現れる。それは民主主義と自由経済のおかげである。

(7)(ちなみにTPPについても言及がある。本年11月ハワイでのAPEC首脳会議についても言及があるが、派手なことは言っていない)

(感想)
(1)この論文は、米国が世界の安定と繁栄確保への関与を続ける意図を確認し、その中でもアジア太平洋を重視していくことを明らかにしている。これだけならば、これほど歓迎できる論文はない。しかし在日米軍削減となると、話は俄かに日本にも直接かかってくる。
クリントン長官は東南アジア沖合方面、そしてインド洋へと、米軍配置の比重を少しずらそうとしているのである。また「アジア太平洋地域の三つの巨人」である米国、中国、インド間の連絡と協力を進展させたいとも言っている。これらはすべて、日本の比重低下につながり得る話である。日本のマスコミは、日本が米国に捨てられるとか、裏切られたとか書きたてるだろう。

(2)だが、そんな主体性のない、アメリカに依存するだけのいじけた考えはもう卒業し、日本はいったい何を守りたいのか、どんな国の姿をめざすのかをベースに、もっと冷静に独立国としての日本がやるべきこと、できることを考えるべきだろう。

(3)クリントン長官は、米国がブッシュの時代のように一方的に軍事力を行使できる状況にはもはやないことを何度もほのめかし、そこを外交によって補強する姿勢を明確にしている。そしてそれは従来のように、米国がその圧倒的な力を背景に問題をその問題国と直接取引して処理していく二国間のアプローチよりも、米国と立場を共にする関係国ともタイアップ、それを力にしてその問題国に対処していくというマルチの、識者がこれまで言ってきたconcert of powers的な外交になっている。

(4)それは例えば、メコン河流域のカンボジア、ラオス、タイ、ベトナムと米国が一堂に会してみたり、本年7月には関係省庁の次官級以下が共に出席して「南太平洋諸島フォーラム」を開いてみたり、クリントン長官がこの論文で言っているように「現在モンゴル、インドネシア、日本、カザフスタン、韓国と一堂に何かできないか検討中」であったりする。クリントン長官はこれをminilateralな外交と呼んでいる。

(5)日本もこのような地道で実効性のある外交を展開していくべきだろう。そのためには、国会での審議に縛られず、十分外回りに出かけられるほどの人員の余裕を確保しておくべきである。

コメント

投稿者: 一本松 | 2011年10月15日 07:17

独立主権国家として主体的な防衛体制が必要です。60年にわたり、マッカーサーの占領政策に翻弄されながら、自主性を失ってきた大きなツケがのしかかっています。
もう目を覚まさないと日本が沈没します。
                一本松拝

投稿者: 高月 瞭 | 2011年10月15日 11:12

日本以外のアジアの国は中国の軍事力就中海軍力の増強には心底怯えていると思います。日本には憲法九条を守る会などお花畑の人たちが多く、また親米派の人たちもアメリカ依存症に陥った方々も多いはずです。日米安保条約にしろ、自国を自力で守る気が無い日本は存在感があろうはずがありません。
いい加減、戦後史観で眠っている日本人は目を覚まし、日本にとっての国益の最大化を目指しながらも友好国との連携を深め中国に対峙できる実力を備えるべきです。

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