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街角での雑想

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2010年8月29日

日本経済自縄自縛からの脱出 Ⅹ デンマークに学べること

デンマーク・モデルは盤石ではなく、究極唯一絶対のものではない。しかし日本が採用できる要素があるかもしれない。以下の諸制度が日本でも有用かどうかをチェックしてみよう。

①企業の自己留保率を高めて、投資を促すこと
②企業が雇用者に割高な賃金を払い、雇用者はそれから高度の累進課税で個人所得税を払うこと(この税は社会保障費もまかなう)
③家計の貯蓄率を低める政策により、消費を促進すること
 
(チェックの結果)
①について:
法人税切り下げなどをして企業の内部留保率を高めてみても、日本の企業はその資金を外国人株主に対する配当、あるいは外国での投資に充当し、日本国内経済の成長、雇用創出に向けないかもしれない。それに、企業の現金・預金残高は3月末で、過去最高の202兆円に達している(7月6日付け日経)。
しかし大企業の本社が日本に残ってくれることは、それなりの税収、雇用、関連産業の維持を意味するので、法人税切り下げも意味がないわけではない。

②について:
企業の社会保障負担を止め、社会保障の財源のすべてを個人所得税、付加価値税等、租税に求めることはどうか?
おそらくそのような制度の大改変は不可能だろうし、敢えてやるだけの意味もないだろう。

③について:
家計の貯蓄率を低める政策を取ることによって消費を無理に促進することは、日本では無理だろう。社会保障、住宅政策が充実してはじめて、日本人は安心して消費を始める。だからと言って、「増税によって社会保障を充実させ、日本人を安心させて消費を促す」のだと言われても、信用する気にはなれない。
但し今の時点でも相続税強化(但し住宅の相続が不可能になるほどの水準まで強化するのは、生活水準を下げることであり、やり過ぎとなる)、高額所得者への累進税強化などは検討する価値がある。
  
④外資の導入はどうか? これも日本の場合、難しい。いくら法人税を下げたり、企業の社会保障負担を減らしたりしてみても、同じ分野で同業者がひしめく日本の厳しい競争市場では高い利益率は生み出せないからだ。日本企業が投資を控えているのに、外国企業がどうして投資をしてくれると思うのだろう。

以上が意味することは、デンマークの例は福祉の面では大いに参考になっても、経済成長をどうやって実現するか、雇用をどうやって増やすかという面では、置かれた状況がかなり違うので、あまり参考にはならないということだ。

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