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街角での雑想

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2010年8月29日

日本経済自縄自縛からの脱出 Ⅸ デンマークの高福祉・高成長を支えたもの

では、デンマークで高福祉、高成長が可能になった要因をまとめてみる。

(1)成長のための諸要因
①企業の低負担:企業は若干高めの賃金を払うが、法人税は日本より低く、さらに年金・医療など社会保障の一部を負担することもない。

②国民が貯蓄より消費に向かうよう、諸制度が作られている。
例えば住宅ローンの条件が緩いため、その08年累積額はGDPの89.8%に及ぶ(CIA, "The World Factbook" EU平均を上回る。米国でも74.6%)ほどなので、日本のように住宅購入のために一生懸命貯蓄する必要がない。
また年金受給年齢に達すると、貯蓄がある者は介護が高料金になるなど、社会福祉が貯蓄額に反比例するようになっているので、公的介護施設に依存する者は貯蓄を吐き出そうとする、などである。

③企業が低負担であることから外国の直接投資が入ってくる。また通貨のクローネがユーロにペッグしていることも外資を入りやすくしている。従ってデンマークには大量の間接投資が流入し、おそらく住宅ローンなどにまわって建設(=投資)・消費を刺激しているのであろう。

④産油国であり、石油・天然ガス輸出国であることは、日本と大きく異なる。
 この要因がなかった1970年代、デンマークは対外公的借り入れでその高福祉を賄っていた(当時国債累積額はGDPの約70%に達していた)ことを忘れてはならない
また世界金融不況までデンマークは、EUの好景気に乗って輸出を増大させることができた。
 
(2)高福祉のための諸要因
①個人所得税率(平均約50%)がもともと高いうえに、累進課税であること(最高税率は70%を超える)。付加価値税は25%にもなること。

②人口規模が適正な地方自治体単位で社会保障を担当しているため、小回りがきくこ
と。

③社会福祉支出の中で現役層向けのものが金額ベースで半分以上に及ぶため、「高福祉・高負担」への不満が出にくいこと。

④住居環境への要求水準がもともと高いため、介護施設などについてもその水準はごく自然に高いもの(贅沢という意味ではない。プライバシーと集団性の双方が確保され、一人に十分の居住空間が確保されること)になること。

(3)世界金融危機後の不調
上記モデルは盤石ではない。リーマン・ブラザーズ金融不況でデンマークはその輸出を大きく失い、かつ外資の流入も激減した。GDPは2009年第一4半期実質5.3%下落し、政府は2010年5月大幅な緊縮政策を提議するに至った

コメント

投稿者: Anonymous | 2010年10月26日 13:02

 アジアと欧米の違いは平地割合と人口密度です。狭い平地に多い人口のアジアは立退き・土地買収費、高架化等があり、多い山ではトンネル、渓谷の橋、山を削った道路や鉄道があります。欧米は空き地に作る割合が高いです。
 日本は世界最大の地震国で家を何百年も住める場所とは建て替えの負担が全く違いますし、高架や橋もそうです。社会負担の余裕と種類が違わざるをえないのではないでしょうか。

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