輸出増やすのだったら、もっと「ワル」にならないと・・・
今日、経済産業省官僚の講演を聞いた。微に入り細に入り、本当に素晴らしい講演。
でも聞いていて二つのことが気になった。
1つは、経済産業省の人たちは生産面、つまり供給面から日本経済を活性化させることは一生懸命考えているが、作られたものを消費する方、つまり需要をどう掻き立てるかについては、「日本は結局輸出なしではやっていけないのです」というお決まりの文句ですませてしまうきらいがある。
日本では、需要面から経済をどう活性化させるかについて、きちんと見ている部署がないのではないか? 国民の税負担率が他国より低く、その割には消費をせず貯蓄に回してしまうのだから、その貯蓄を国債で吸い上げて投資と消費に回して何が悪い、とまでは言わないにしても、財政赤字をゼロにしないと気が済まないというのでは、経済を縮小均衡の方向に持っていってしまうだろう。
もう1つは、輸出を増やそうという場合、日本人が優等生になり過ぎていて、世界の荒くれ商売人たちの間に伍していけなくなっているということ。例えばあの舌をかみそうな「コンプライアンス」という言葉。これはもともと外国で賄賂を使って商売した米国企業が外交問題を起こし、それ以後政府から規制を受けるようになったことに端を発していると記憶する。米国政府は、米国企業だけ行いを正しくしていると海外での商売に負けてしまうため、他国の企業にも「コンプライアンス」をやかましく言うようになった。これを破った外国企業には、米国内での商売に様々の制限を課すのだ。
だからこそ日本の経済産業省が旗を振って、「コンプライアンス」、「コンプライアンス」とキャンペーンを張り、企業に浸透させたのはいいが、今度は企業がこれを厳しく実行し過ぎて、何もできなくしてしまったのだ。世界の大半の国では、賄賂や情実なしにはビジネスなどできはしない。特に発展途上国やBRICsでのビジネスは、「何でもあり」の世界ではないのか? ロシアがベトナムに兵器と原子炉を抱き合わせ販売したように。
そして中国は余剰外貨にモノを言わせて、長期低利の借款つきで輸出を振興しているが、日本その他先進国はOECDでの紳士協定を相変わらず守って、中国に商談を奪われている。日本が米国やEUとの貿易摩擦を避けるために品行方正にしていなければならない時代はもう終わったのに、みんな性根を抜かれてしまっている。また「ワル」に戻ろうじゃないか。
いや、まあ周りも見ずに日本だけが「ワル」になるとまた袋叩きにあうから、もっと公明正大にやろう。つまり過去の時代の取り決めや枠組みは、日本からもどんどん提案して現代のニーズに合ったものに変えていこうではないか。もう優等生や心情役人(役人でもないのに、決まりだけ守ってリスクを取ろうとしない人のこと)的な行動はやめよう。学校でも先生たちは、自分たちの周囲をどんどん変えようとする気概を持った生徒を育ててほしい。今日の日経を見ると、今年の新入社員の大半は年功序列、終身雇用を望んでいるのだそうだ。気持ちが悪い。息がつまる。
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コメント
GDPに占める財貨・サービスの輸出総額を2008年度では15.8%です。イギリスは日本より多く17.5%、この比率が最大の国を並べますと、一位韓国45.4%、二位ドイツ39.8%、三位中国33%です。
どうも、日本は輸出依存国と言うのは恥ずかしくなります。それに、輸出から輸入を差し引いた純輸出のGDP対比を見ると0.8%です。それよりも、対外債権から得られる所得収支が15兆円にもなり、そのGDP比率は3%にもなりますから、金貸し業の方が大きいのです。
どんなことでも、他国との比較で考えないと間違えることに気をつけないといけません。
経済はモノを核として膨らみますし、輸出するモノがないと貿易赤字になって円が下がり、国内はインフレになります。ですから、輸出はそれなりに大事ですし、日本の製造大手の輸出依存度も大きいものがあります。
海外の債権から得ている所得収支は、その多くがおそらく製造・サービス業の海外子会社からの配当収入ではないでしょうか? 日本の銀行は、海外で大きく稼げるだけの人材を持っていないでしょう。