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街角での雑想

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2009年5月30日

内需拡大と通貨の切り下げ競争ーーそしてインフレ

ドイツが国債六兆円分もの増刷で内需拡大に踏み切る。
中国は数年間で四十兆円分以上の内需拡大を予定して、商業銀行も融資をじゃぶじゃぶ垂れ流しのようだし、日本も選挙をにらんで空前の補正予算を通したばかりだ。そしてアメリカは各国に、財政拡大、内需拡大をせよと旗を振っている。

ちょっと変だな、と思う。
こうしてみんなで財政赤字を増やしてみれば、ドルだけが信用を失って暴落する危険性が大いに薄まるというものだ。逆に「内需拡大」の掛け声に踊ろうとしない国では、その通貨のレートはどんどん高くなり、輸出が難しくなるだろう。つまり、みんなが出来レースで財政赤字を拡大して自国通貨の力を落とし、そうやって米国経済が回復する間ドル暴落が起きないように協力している――極論すればこう見えてくるのだ。戦前の通貨切り下げ競争と、表面的には似ている。

ドル価値の安定は、世界全体にとっていいことだ。だが財政赤字拡大で、各国のインフレは激しくなるだろう。要するに、各国通貨は一様にその価値を下げ、相互のレートは変わらないが購買力は確実に下がる、つまりみんなインフレになるということだ

一般にインフレで得をするのは各国の政府である。税収はどんどん上がる一方で(但しインフレで経済活動が阻害されない限りの話)、約束した支出、あるいは溜まりに溜まった国債の返済額はその実質価値をどんどん下げていくからだ。

インフレでも、市民の所得が増えればなんということはなく、ただモノの値段の数え方が1単位増えたくらいですむが、インフレの場合普通、所得の伸びは価格の伸びに追いつかない。それだけわれわれの暮らしは悪化する。これを、「財政赤字の負担を国民に転嫁する」と言う。政府は国民・企業の税金で成り立っているのだから、政府が大盤振る舞いをすればそれを結局は国民が負担することになる。

国民が生活が苦しくなったといって抗議の声を上げると、政府は賃金を上げるためにはもっと内需を拡大して経済活動を盛んにせねばということで、益々国債を刷る。つまり国債印刷による経済の自転車操業ーーこれが当面予想される最悪のシナリオなのだ。国債を印刷しないとどうなるか、すると経済は1年くらいは悪化を続け、政権は吹っ飛んでしまいかねない。

本当は、アメリカの住宅ローン・バブルが崩壊して下がったあたりが世界経済の実力なのだと思い定め、あまり成長を急がないことが王道なのだ。内需拡大をしなければ、日本でも当面、雇用が悪化し、格差が増大するだろう。だがバブル的な手段=財政赤字で当面の苦境を糊塗しても、後にくるものはもっとひどい危機だろう。

どうも何かそこらへんの議論をまだ見たことがない。オブラートで包んだような、これまでの世界が続くことを当然の前提としたような議論ばかりでは、社会をだましているのと同じだと思う。 河東哲夫


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