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街角での雑想

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2021年8月 1日

消えたニュースの背後にあるもの

よく言われることだが、ニュースでは、報道されることよりも、報道されないことの方が真実を語っている。

たとえば昨年11月、東京の調布市で起きた大深度地下トンネル掘削に絡む、住宅地の陥没事件。これも、テレビのニュース解説ではきちんとやっただろうが、新聞では表面的。この掘削していた外環状道路の建設をこれからどうするのか、大深度地下トンネルの掘削をこれからも認めるのか(これまで地下鉄・高速道路とも、問題は起きていない)、調布市事件の責任は誰がどう取るのか、住宅を失った人たちへの補償はどうするのか等、いっこうにわからないうちにニュースは消えてしまった。

大深度地下トンネル工事の是非は、これからリニア新幹線の品川駅近辺で深さ40米以上の大規模トンネルを掘っている問題に直結する。このあたり、調布市の地下と同じく、もとの谷間が泥で埋まったものだからだ。もっとも、湿原や粘土の中にトンネルを通す技術は日本で確立している。上越線の六日町駅と信越線の犀潟駅を結ぶ「ほくほく線」は、北陸新幹線ができるまでは、東京から北陸地方への最短経路だったのだが、この鉄道は途中で鍋立山という粘土質の山をトンネルで通り過ぎる。掘ればつぶれてくるので大変だったのだが、20年以上かけて何とかやり遂げてしまったのだ。地元が南北に対立してすったもんだのあげく、ほぼ直線に近い路線を決めたら、そこにこういう山があったという次第。60%以上はトンネルの路線を猛スピードで突っ走っていくのだが、コシヒカリで有名な魚沼市を通っていくので、トンネルの間に見える景色はものすごくいい。

もう一つ、報道に不審な点があるのは、7月に熱海で起きた盛り土の崩落事件。谷間に何と50米もの盛り土をして「造成地だ」と称していたというからハンパない。これは開発企業の刑事責任だろう。そして、この工事を許可する時、危険性を想像しなかった静岡県当局の監督責任。なのに、開発企業の責任者は記者会見することもなく(した?)、静岡県知事も副知事を表に立てるだけ。川勝知事はせめて現場に出てきて、救出作業を励ますことはしたのだろうか?

この件は、彼にとってはまずいタイミングで起きた。と言うのは、リニア新幹線が県下の南アルプスにトンネルを掘ることは、水脈を断つので許可できないと長年抵抗し、それを6月の知事選挙で売り物にもしていたからだ。熱海の件で、静岡県は監督能力、地盤評価能力の鼎を問われることになる。そして盛り土をした企業については、特定の政治家に近く、その庇護を受けている可能性もあるだろう。

もう一つ、首都圏の住人として忘れてならないことがある。6 月20日夕、JR東日本の変電所が停電、山手線などが4時間にわたって停止した。原因はなんと、渋谷区の変電所のケーブル1本に数センチの傷がついていて、ここから漏電したためとか。高さ数米のフェンスで囲まれている敷地内でのことで、これは事故で傷がついたものとは思えない。誰かが、「こうすればこうなる」ことを十分心得て、故意にやった――つまりサボタージュ行為だろう。大勢の人に迷惑をかけて怒らせるのを避けるためか、傷は日曜日の夕につけられている(感電しなかったのだろうか?)。

山手線はJR東日本のドル箱。JR東日本と言えば、2006年、労組に革マル系の活動家が浸透しているとして、国会でも質疑が行われたことがある。その後、関連幹部は辞任したし、若手が組合活動への関心を失ってきたことで、JR東日本での労組問題も聞かなくなっていたのだが、最近また頭をもたげているらしい。

と言うのは、JR東日本は労組弱体化に乗じて昨年2月、2000名を脱退させて新たな団体を作ったのだが、折あしくコロナ禍で収入が激減。8年ぶりに、社員の給料ベアを見送った。そこで社員の労組活動への関心が蘇ったというのである。そして労組には、中核系が浸透してきたという。JR東日本と山手線もまた、コロナの犠牲者となったのだ。

それはそれとして、「電線に傷がついていた」件の捜査はどうなっているのだろう?2015年4月には、架線を支える柱が倒れて、京浜東北線と山手線が9時間以上停止している。2017年12月には工事でのトラブルで架線が切断されて、京浜東北線が7時間停止している。 この2つの事件も、捜査は行われているのだろうか? 

外国でも、消えたニュースはいくつもある。例えば6月末、米国フロリダのマイアミ近郊で、12階建てのマンションが鉄筋の腐食で突然崩壊。100名近くも亡くなる事件があった。

これも、救助作業の方は連日報道されたが、崩壊の責任、監査の責任がどこにあるのか、米国のマスコミは一向に報道しない。多分、これも熱海と同様、責任の所在がぼやけていて、特定の個人・企業に責を負わせることが難しいからではないか。

日本では、マンションのメンテナンスは住民たち等の作る管理組合が責任を負うことになっているが、実際には建設者が用意した管理会社が代行していることも多いようで、要するにマンションというのは責任者不在のおそろしい代物なのだ。米国でも、同じような状況にあるのだろう。

あるいは、管理責任者が知事への政治献金をしていて庇護されていたのかもしれない。Ron DeSantisフロリダ州知事がこの件でテレビに登場したのは、僕の見ていた限りで1度だけ。この件のからみでテレビに登場することを、極力回避しているように見える。彼は2024年の大統領選挙に出馬することを考えているので、このマンションの件とは無縁であることを装っておきたいのかもしれない。

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