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街角での雑想

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2019年3月17日

米中二股貿易は無理なのか?

米国がフアウェイの製品使用を禁止したり、新冷戦と叫んでいる割に、日本の経済界は危機意識が薄いようだ。「米国はあんなことを言っても、いつかはまた中国と手を握って、儲け始める」、或は「現代のグローバル経済はサプライ・チェーンが複雑に絡み合っているので、中国だけを排除することはできない」とかの漠然たる思いが、その妙な安心感の基礎となっている。そして、日本の「対中輸出依存度」が対米に匹敵している(ように見える)ことも、二股指向を強化する。

しかし――詳しいことは2月26日発売の日本版Newsweekに書いておいたが――、実態をもう少し見る必要がある。まず日本の「対中輸出依存度」だが、その多くは部品と機械だ。日本や中国や欧米の企業が中国国内で組立てて、中国国内、あるいは輸出に向ける最終製品を作るのに不可欠なものを日本から輸出している。ということは、最終製品の組み立て工場が中国以外に移れば、日本の対中輸出もかなり減り、その組み立て工場が作られた国への輸出が増える、ということになる。

そして、トランプが今回、中国からの輸入品に法外な関税をかける姿勢を示したことは、「中国の低賃金を使って安く組み立て、欧米に輸出する」やり方が、保証を失ったことを意味する。収益性の見通しが不確かなところに、企業は投資をしない。

米国は、軍需、サイバー技術関連の先端部品、製造機械の対中輸出をこれから更に厳格に規制するだろう。トランプは貿易赤字のことしかやらないが、国防省が中心になって、この面での規制を強めてくるだろう。マティス国防長官のあとの長官がまだ議会の承認を受けておらず、シャナハン長官代行がボーイング出身なので(ボーイングにとって中国は重要な顧客で、組み立て工場を持っている)、ひょっとすると中国からの接待攻勢を受けて規制をうやむやにしてしまう可能性もあるが。

その場合でも、米国は自国の企業には甘く、第三国の企業、特に米国企業のライバルには厳しい対応を見せるだろう。米国の対中禁輸リスト(冷戦時代からのものが改定されつつ、残っている)にあるものを中国に輸出した第三国の企業は、米国法に違反したとして、米国内での事業を禁じられたり、法外な罰金を課せられたり、米国支社の幹部が有罪判決を受けて投獄されたりする事案が続発(殆ど報道されないが、これまでも頻発している)することになるだろう

一方、上記ボーイングの民間旅客機を筆頭に、軍需、安全保障との関連性が薄い分野での対中取引は今後も可能だろう。冷戦時代の1970年代でも、日本、欧米の企業は原油価格高騰景気に沸くソ連に、化学、精油、製鉄、自動車等製造のプラントを競うように輸出していたのである

つまり米中二股はいつでも、どの分野でも可能、というわけではない。よく分野を見極め、関連の米国法制を十分吟味してやれば何とか大丈夫、ということなのだ。

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