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街角での雑想

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2018年3月25日

ロシア大統領選後の日ロ関係

(これは、選挙直後の20日、日本版Newsweekに掲載された記事の原稿です。選挙前日の17日に、プーチン勝利確実と見て校了しました)

 ロシア大統領選が終わった。それにしても、ドラマのない選挙だった。2014年クリミア併合直後のプーチン大統領への熱狂的支持はすっかり醒めて、その支持率は選挙の前、1月の69.7%から2月の57.1%へと顕著な下落を見せた 。2014年原油価格の急落と西側制裁に見舞われて、2012年以来のプーチン第3期、ロシア人の実質所得は10%強下がった。医療や教育への予算支出は増えているように見えて、インフレ(累計57.5% )を勘案すれば実質では大幅に減少している 。増えたのは軍事費ばかり。

青年達は「何とかしろ」と声を上げるが、その不満を吸い上げる核となる運動家ナワルヌイ等は当局につぶされる。3月1日、プーチンは恒例の年次教書を発表したが、国民の生活向上への空疎な約束や、「AI経済に乗り遅れるな」という彼の呼びかけに、満場の議員達は無表情。後半、新種ミサイルが米国へと飛ぶ、子供だましのビデオを背にプーチンが、「ロシアの攻撃を逃れることは不可能だ。米国よ、今こそロシアの声を聞け」と述べた時は大喝采。経済の空洞化と核ミサイルでの脅かし――これではまるで、北朝鮮だ

 これからどうなるだろう。ロシアの識者達は指摘する。「プーチンもそろそろ老齢(任期末の2024年には71才。ロシア男性の平均寿命は66.5才 )。憲法は三選を禁じているので、彼の任期はこれで終わり。ロシアの権力層は『プーチン後』をめがけ、有望候補を囲んで陣取りゲームを始めるだろう。プーチンはそれを抑えることができまい。その乱れにつけこんで、様々な勢力がテロもしかけるだろう。国が乱れるのを防ぐため、プーチンはもしかするとエリツィンのように、任期半ばで次の者に権力を禅譲するかもしれない。その場合でも『院政』は維持しようとするだろうが 」と。

 今のところ、プーチンの後釜に坐れるような有能、かつカリスマ性のある政治家・官僚は見当たらない。但し、プーチンもエリツィンの後釜に坐った時は、そのカリスマ性の無さを散々揶揄されたものだ。位は人を作るのである。

プーチン4.0のトリセツ

 米国では、ロシアが大統領選に介入したことが明らかになった後、ロシアの脅威を過大評価するのが政界、そして言論界の定番になった。民主党は、「トランプは敵国ロシアの操り人形だ」と言えるし、国防省はオバマの時代削減された国防費をまた増やせるからである。しかしロシアは自分の周縁地域――かなり広いが――に少々の影響を及ぼせる程度で、力の源泉である軍事力も限られている。

特に経済、あるいは企業経営の在り方は、中国と比べても周回、二周回遅れのものとなった。1991年のソ連崩壊が生んだ遠心力はまだ続いていて、今のロシアに「影響圏」を取り返す力はない。加えてシリアでは米軍が居残り、ロシアに出血を強いているし、ウクライナは1年後に大統領選を控え、東ウクライナ奪回を狙っている。西側で思っているほど、プーチンは順風満帆ではない。

 次期大統領の就任式は5月初めになるだろう。5月24日にはサンクト・ペテルブルクで恒例の国際経済フォーラムが開かれ、安倍総理はそこでプーチン大統領と久しぶりの会談をすることになるだろう 。6月14日から1ヶ月、ロシアはサッカーのワールド・カップのニュースで染まるが(少なくともロシア・チームが負けるまでは)、安倍政権にとっては対ロ関係の正念場。9月の自民党総裁選までに北方領土問題での進展、つまり共同経済開発の具体的案件で合意ができなければ、対ロ関係の熱は冷めるだろう。

しかし、何がどうあろうとも――たとえプーチンや安倍政権が早期に交代することになっても――、日本はロシアへの態度をくるくると変えるべきではない。外交を国内での点数稼ぎに利用する政府は、世界で(そしてロシアにも)馬鹿にされ、まともな話し相手になってもらえない。筆者は、共同経済開発に軸足を置くやり方には批判的だが、転身はじわじわとやるものだ。
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