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街角での雑想

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2008年5月29日

原油価格上昇で日本のものづくり経済は駄目になる?

「ものづくり文明」の終焉?
――― 一次産品価格の上昇に寄せて

                                         Japan and World Trends
08,5.29
河東哲夫

原油、穀物、どれを取っても一次産品の価格はこの一年で大きく上昇した。また元のレベルに戻ることはないだろう。何故なら新たに工業生産を伸ばしている中国やインドなどの国々が一次産品の価格を押し上げる一方で、工業製品の価格は低めに引っ張り続けるだろうからだ。このようにして世界は、胡椒や茶の方が工業製品よりはるかに貴重とされていた18世紀以前に戻っていくのだろうか?

産業革命後の200年間にわたって、工業国は非工業国の富を自分の側に移転してきた。最初は、大量生産した安価な繊維製品を売りつけ、次には手の込んだ高価な家電製品や自動車を輸出することで、それを実現したのである。交易条件は、工業国の側に有利だった。非工業国の農民は懸命に働いているのに、工業国の労働者より所得がはるかに低かったのだ。

だがこの構図は、一次産品価格上昇で変わりつつある。否定的な現象としては、原油生産国で少数の寄生的なエリートが生まれているということ、そして開発途上国では大衆がガソリンや食品の値上げに抗議してデモを始めているということがある。前向きの現象としては、農民や鉱山労働者の所得が上がったということ、そして先進国の政府は農業産品への価格補助金を減らすことができ、それは農産品の扱いが大きな障害となっているWTOのドーハ新ラウンド交渉の進展を促すかもしれないということがある。

状況は、資源・穀物生産国に有利であり続けるのだろうか? 日本のようなモノづくりに偏重した国の先行きは暗いのだろうか? 
感じで言えば、日本はあまり心配することはないだろう。何故かと言えば一つには、中国やインドでインフレ率が高くなっているということがある。これに加えてこれら諸国の通貨はこれから更に切りあがっていくので、輸出品の価格もこれから上がっていくだろう。だから日本も韓国も米国もEUも、その商品の輸出価格を安心して上げることができるのだ。

原油・ガス輸出国は収入急増に浮かれているが、本当は火口の上に座っているようなものだ。これら諸国ではインフレが昂進しているし、奇妙なことにインフレの中で通貨のレートが上がっている。つまり彼らは資源輸出収入が国内の通貨流通量を急増させてインフレになると同時に、莫大な貿易黒字がもたらす信用がその通貨のレートを持ち上げるという、典型的な「オランダ病」に罹っている。ロシアなどは、原発や旅客機の輸出を振興するなどと言っているが、実は原油やガスさえ輸出していれば、その他すべてのもの、ガソリンさえも輸入した方が効率的だと言える状況にさしかかっているのだ。そして資源輸出の収入は、一部エリートに独占されて社会全体には行き渡らない。

一次産品価格の上昇は、先進工業諸国の経済成長を当面阻害するかもしれない。生活費の上昇で、工業製品の消費が減少する可能性があるからだ。だがこれら諸国は、一次産品価格の上昇を乗り越えることができるだろう。一次産品の価格は、いくら投機資金が流れ込んだとしても、需要と供給のバランス以上に伸び続けることはできない。また一次産品価格の上昇も既に述べたように工業製品価格に転嫁され、最後は世界の価格体系全体が底上げされて終わるだろう。鉄鋼各社は既に、高くなった鉄鉱石価格を鋼板価格に転嫁することで、自動車各社と合意に達しつつある。

日本のモノづくり経済は、技術的優位を維持する限り、おそらく大丈夫だ。一次産品は、工業製品に対してこれまでよりはやや割高になるだろうが、それはそれで農業や省エネ技術への新たな投資を呼ぶだろう。キャベツ一個が100円のままでは、農業もやっていられまい。


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