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論文

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2010年6月27日

この厳しい競争社会をどう生きる?――学生の質問

早稲田の商科大学院(ビジネス・スクール)での学生との問答を記します。学生と言っても、企業の中堅幹部です。

問い
時事問題で気になったこと。昨晩、各局で取り上げられてた「1億円以上の役員報酬開示」についてです。この開示に対する異論・反論は相当あるようです。
開示されるほうは「これこそまさに個人情報に触れる」だろうし、まったく関係ない人々にとっては「あの人いくらもらってんの? うらやましい」とねたむ。

日本企業の役員報酬額は、欧米などに比べ、桁が一桁違うようです。それもなんだか同情します。
日本の社長さんたちは、従業員と目線は同じという概念から、あまり かけ離れた額をもらわなかった。また要求もしてこなかった。
しかし、これだけ外国企業の参入や、合併などで欧米スタイルが少しずつではあるが、要所要所に露出してきて、戸惑っているというのが現状かな?と解釈しています。

これからますます、日本企業は会社内での格差が生じると思います。ヘッドハンティングも日常茶飯事になり、お金で人を買うことは当たり前になるでしょう。
一部分、非常に合理的だし、そういう能力がある人にとっては、とても公平なことに見えるでしょう。

しかし、精神的なストレスは計り知れない。社長になってもいつ引き摺り下ろされるか不安を感じながら仕事をする。気が抜けないです。そんな中ふと、これも近々に起きた悲しい事件。マツダの元非正規社員が早朝、マツダに車で乗り込み、1人死亡、10人をはねた事件。とても他人事ではないと感じます。

みんなとても不安と不満を抱えながら勤務しているのが現状です。今までと同じかそれ以上の仕事量をこなしても、まだ会社からは新規の仕事を獲得するよう言われ、一方で残業はするな、と言われる。

この矛盾だらけの日本企業において、われわれのような、しがない社員はどう生き抜けばよいのでしょうか?

(少々無責任な)答え
――(なぜ無責任かと言うと、社会の現状はなかなか変えにくいからです)
それは、強く義しく美しく、時にははしっこく目先をきかせて生きていくしかありません。官僚は昔からそういう環境で仕事してます。あちらからたたかれ、こちらからこずかれ。育ちのいい猫も、飼い主に捨てられると日増しにすさみ汚れて、疑い深くなっていくのが目に見えるようですが、官僚も今同じ境遇になっています。

とは言え、社長が2億円以上もとると抵抗を感じますね。欧米はローマ法の伝統に支えられた「個人所有権」が強い社会、日本はおそらく稲作文化に支えられた「集団所有」のマインドが強い社会、しかも日本の大企業の社長はオーナーではなくサラリーマンで、まあ昔の財閥で言えば番頭であるにすぎません。当然、報酬も低くて当然、しかも社用車とか交際費とか使えるのだからそれでいいじゃないか、ということになっているからです。
日本の場合、社長・幹部より、持ち家を必要とする40代の社員への配分をもっと増やすべきです。

ただ「1億円以上の役員報酬開示」をマスコミが推進するというのは、偽善でしょう。そんなこと言うなら、テレビ局の幹部の報酬、本給、その他報酬すべて含めて公開しろ、と言いたくなります。電波独占に乗ってeasy moneyを稼ぎ、その上政府上層部からは裏金までもらっていると週刊誌には書いてあります。彼らに他人の報酬を云々する資格はありません。

では、どう生きていくのか?
それは耐えるか、辞めるか、変えるか(変えられればの話)しかないでしょう。例えば無駄な仕事を極力省くことで、負担はずいぶん軽減できます。但し、連絡・調整が重視される日本の社会では、会議とか資料作成とか無駄は省きにくいんですよね。
みんなが、「こんなもの、こんなこと、いらない。なくてもやっていける」という合理的思考をするようにならないと、互いに互いを苦しめる滅私奉公社会はなくなりません。

コメント

投稿者: 大ちゃん雄クン | 2010年7月 1日 22:36

日本の企業と部分的に欧米の石油メジャー及びスイスの食品会社の遣り方は触れることが出来ましたが、河東さんご指摘される通り、本当に日本企業は連絡・調整が重視され過ぎる位であると感じます。
更により合理的に、「こんなことは全く意味がないよね、こんなことは省こう」というような発言を受け入れられる企業のなんと少ないことか。
取締役会でも、既に方向性が決まっていて、その場で喧々諤々の討議が行われない。
どのような環境になったら、あるべき姿に近い状況になれるのでしょうか。
小生も答えを持てません。

投稿者: 河東哲夫 | 2010年7月 1日 22:50

不治の病だということですか。
でも、少しづつ良くなっているし、危機が深ければ深いほど、外国人などが入ってきて、変わっていくのでは? そうでも思わないとやってられません。
結局、滅私奉公で「競争力」とやらを創出してきた面が大きいのでは。

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