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北朝鮮

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2017年9月30日

北朝鮮が誘発する日本の核武装 それは必要なのか、そしてどうやって?

(これは、26日発刊のNewsweek日本版に掲載されたものの原稿です。なおこれを一部改変したものの英訳が日本英語交流連盟のサイトhttp://www.esuj.gr.jp/jitow/511_index_detail.php#englishに掲載されています)

 北朝鮮の核ミサイル開発が、「日本核武装」論議に火をつけた。日本の核武装はキッシンジャー元国務長官などがつとに予言していたことだが―日本はいつか米国に見捨てられ、慌てて核武装するという趣旨―、日本でも6日には石破元防衛相が、米国の核の傘をもっと有効なものにするには非核三原則の一部見直しが必要だと述べている。本音ベースの核論議が必要になっている。

 朝鮮半島の情勢は、話し合い解決の方向に流れている。米韓共同軍事演習はひとまず終わったし、米国は北朝鮮への武力行使を韓国に止められている。国連安保理の新しい制裁決議でカードを一応揃えたこともあり、中国、ロシアを引き込んで話し合い解決を模索するだろう。朝鮮戦争の正式な終結、つまり北朝鮮国家承認と外交関係の樹立、国境の確定などを定める平和条約の締結、そして北朝鮮の核の扱いが焦点となる。

ここまでなら、日本は安泰だ。たとえ北朝鮮に核が残っても、「日本を核攻撃すれば米国が大量報復する」という脅しで抑止できる。しかし平和条約が結ばれ、韓国世論が米軍撤退を求め、更に南北統一が起きると、ロシア以上のGDPと核兵器を持つ大国―そして反日的な―が日本のすぐ隣に出現することになる。

その中で、内向きになった米国は中国にアジアを委ね、日本からも手を引いてしまうだろうか? 日本は裸一貫で中国、統一朝鮮、ロシア、そしてもしかすると米国とも渡り合うことになるのだろうか?

そうはなるまい。アジアは米国にとって、EUと並ぶ貿易相手。アジアに足がかり―つまり日本―を持たねば、「中国と手を結ぶ」どころか、中国の言いなりにさせられて、アジアで稼ぎにくくなる。だから、日本との同盟関係は米国にとっても必要で、日本の上には核の傘がさしかけられ続けるだろう。

ただ米国の核の傘も、近年では少し透けてきている。オバマ大統領の時代、太平洋に展開するトマホーク巡航ミサイルから核弾頭を撤去したために、今ではアジアで米国が保有する核抑止力は、米本土配備のICBM(長距離核ミサイル)、長距離核ミサイルを搭載した原潜、そしてグアム島配備の爆撃機に搭載した核爆弾と、機敏には使いにくいものばかりになっているからだ。石破氏が言うように、非核三原則を緩和して、核搭載の米軍艦の日本寄港を可能としても、トマホークに核弾頭を再び装着してもらわないと、「日本に寄港する核搭載の米艦船」は無いのである。長距離核ミサイル搭載の大型原潜は隠密で行動しているから、わざわざ日本に寄港したりしない。

戦後、日本と同じような立場にあるドイツはどうしているかと言うと、被爆国でないために核への反発は日本程でない。この国は西独の時代から、自国領土に米軍の小型核爆弾(戦術核)を何発も持ち込ませており、それは今でも数十発残っている。昔のソ連軍のような大軍が一気呵成に攻め込んできた時は、その鼻先でこの核爆弾を用いて敵の進軍を止めようというもので、使用する際はドイツ、米国双方の同意が必要であることからdual key(二重引き金)方式と呼ばれる。同種の仕組みはベルギー、オランダ、イタリアも持っている。しかし核兵器を自国領土に置けば、それは敵による先制攻撃の標的になりやすい。

日本に最も参考になるのは、英国とフランスの核ミサイル搭載原潜である。双方とも数は少ないが、核抑止力としては十分だ。世界、そして日本の世論が日本の核武装を許すような状況になれば、米国や英仏のいずれかから原潜を核ミサイル付きで購入するのが最も手っ取り早い(だが簡単ではない)。

経済取引では国境の意味がどんどん無くなる今の時代、核抑止とか言って、国家と国家が角突き合わせて争う意味は薄れる一方だ。しかし日本の周辺諸国家は、国家を前面に立てて日本と張り合う、ナショナリズムに燃えている。その中で、日本は自分の名誉と利益を守る方途を冷静に考える。それは軍事大国になることは全く意味していない。人口老齢化が進む今、国防費ばかり無暗に増やすわけにはいかないのである。
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