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北朝鮮

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2018年6月17日

アジア版NATOのススメ

最近、米国論壇で、CSISの若手専門家Eric Sayers(これまで議会、米太平洋軍司令官付き等を歴任。日米安保関係にも詳しい)が、太平洋、インド洋での航行の自由を保証するための常設多国籍(英仏等も含めて)艦隊の設立を提唱している。日本の若手専門家とのcollaborationの由。
彼は、次の点を述べている。

1)米国は南シナ海で航行自由確保のための作戦(中国が係争地を埋め立てて造った人工島の「領海」を、米艦船が公海と見なして航行すること)を強化している。しかし中国は、南シナ海での一方的行動をむしろ強化している。

2)従って、新たなやり方が必要である。1968年から1980年代にかけて、NATOにStanding Naval Forces Atlantic(大西洋常設艦隊)が存在していた。これは巡洋艦、駆逐艦等6-10隻の海上艦から成り、6カ月ほど行動を共にした。常任メンバーはカナダ、西独、オランダ、英国、米国で、他のNATO加盟国も折に触れて艦船を送った。この艦隊の司令は、参加国の間で持ち回りで、NATO最高司令官に服属していた。散発的な共同演習ではなく、長期間行動を共にすることで連帯意識が醸成されたし、通信方式等の間の連携 (interoperability) も向上した。

3)冷戦時のNATOの経験が、現在のアジアにそのままあてはまるわけではない。しかし太平洋、インド洋での航行の自由を守るために、関係諸国の海上兵力が恒常的な共同行動を始めることを提言したい。自分はそれをCombined Maritime Task Force Pacific(太平洋混合海上タスクフォース)と名付けたい。米国は日本、豪州との2+2会合で、このタスクフォースの核となるメンバーを議論するべきである。インド、英国、フランスの他、マレーシア、ベトナム、インドネシア、フィリピン、シンガポール等の東南アジア諸国も招請されるべきである(注:韓国、台湾、タイへの言及がない)。

4)このタスクフォースは一定期間行動を共にし、例えば1カ月間は(西)太平洋南部諸国の港を親善訪問、次の1カ月間でインド洋での共同演習、さらに災害救助、RIMPAC2020への参加等を行う。

5)現在米海軍の機材は不足しているが、例えば米国がシンガポールに増派しようとしている沿岸防衛用艦艇(littoral combat ships )をタスクフォースの核とし、第7艦隊の艦船が折に触れて参加すればよかろう。

6)中国が関係各国に圧力をかけてこの案をつぶしてしまうことがないように、この案はじっくり準備せねばならない。例えば日本、あるいは豪州がこの案を最初に提唱すれば、米国が提案するよりは、地域諸国にとって受け入れやすいものになるだろう。更に、このタスクフォースの目的が正当なものであること、つまり航行の自由確保、海中生物の保護等を掲げるとともに、全ての係争は平和的手段で解決されるべきことを宣明するのである。

7)特に最初は、目的を限定し(北朝鮮制裁遵守の確保等)、次第に拡大していくべきである。またこのタスクフォースが戦闘艦隊ではないということを示すために、指揮はシンガポールの米海軍西太平洋兵站司令官によって行われるのが良い(注:右は、Logistics Center West Pacific。基地ではないので、このような名称になっている。上記のように、NATOの場合は、司令は参加国の間で持ち回りであったのが、アジアでは米軍が指揮を執るとなっている)。

これについては、以下の感想を持つ。

・賛成できる方向のアイデアである。中国と殊更に敵対する必要はないが、中国の一方的行動を抑えるためのしかけは必要だからである。西太平洋の安全保障は、日本、韓国、豪州などが個別に米国と同盟関係を結ぶことで保持されているが(Hub & Spoke方式と言われる)、NATOのような集団安全保障の要素を持ち込むことで対米依存の色彩は薄まり、各国民の理解も得やすくなるだろう。

・しかし日中関係が緩和の方向に向かっている今、これをすぐ実行するのは難しい。本件論説の筆者が言うように、日本、米国、豪州を中心に直接の担当部署を定め、彼らが交流を深めるとともに、地域親善寄港の時期を一致させるとか、洋上での共同演習を行うとか、中国が文句をつけにくいものから始めていくのがいいと思う。

・なお北朝鮮の「瀬取り」監視については既に英国の艦艇、豪州、カナダの哨戒機が東シナ海で日本とも連携しつつ動いている。右は、朝鮮戦争の際の国連軍が日本の基地数か所を利用できるとする、「日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定」を援用している 。この地位協定を朝鮮半島有事以外の目的にも援用できるものにすることが理想的だが、本件論説の筆者が言う「タスクフォース」が日本の港を親善訪問して補給を行うようなことは、地位協定なしにできることだろう。また「タスクフォース」に海上自衛隊の艦船が参加することが集団自衛権の行使に当たるかどうか等の法律論争が起きる可能性もあるが、RIMPAC等集団演習には参加してきたのだし、武力を行使しなければ共同行動は可能である。

台湾については参加を招請するかどうか、親善寄港するかどうか、台湾海峡を示威通航するかどうか等、議論するべき点がある。
ロシアの太平洋艦隊は弱体で、遠洋で運用できる海上艦を5隻強しか有していないが、西太平洋ではベトナムのカムラン湾施設を軍艦、軍用機がかなり頻繁に利用して、プレゼンスを示しているし、ベトナム沖合の中国との係争海域ではロスネフチ等が石油・ガス開発を行って中国から注意喚起を受けている。他方ロシア太平洋艦隊は日本海等で中国海軍との共同演習を繰り返しているかと思えば、海上自衛隊とも海難救助等の共同訓練を実施したりしている。
このトリックスターのようなロシア海軍をどう位置づけるかも、検討しておかなければならないだろう。

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