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北朝鮮

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2018年2月 4日

韓国が離米する時

(これは、1月24日に「まぐまぐ」社から発売したメール・マガジン「文明の万華鏡」第69号の一部です。
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平昌オリンピックを華々しく行うこと――これが今の韓国外交の至上課題。習近平の出席を得るために文在寅大統領は辞を低くして訪中したし(それでも出席するとの言質は取れず)、日本に対しては慰安婦問題に関する2015年の合意を引っ繰り返すのをしばらく我慢している。そしてオリンピックが終わるまでは、米軍との共同演習はしないことを北朝鮮に約束した。

北朝鮮による韓米離間は成功

このくらいならいいのだが、問題は北朝鮮のオリンピック参加を実現する中で、カネが北朝鮮に渡っていないかどうかだ。2000年6月、金大中大統領は北朝鮮の金正日総書記との首脳会談を実現して世界の耳目を引いたが、その後で韓国から北朝鮮に500億円弱が払われていたとの報道があり、随分興醒めになったものだ。今回同じようなことが明らかになれば、これは興醒めでは終わらない。北朝鮮に対する国連制裁に違反したことになる。

更に問題は1月11日、北朝鮮労働新聞が、「(オリンピック後も)外部勢力と共に同族に敵対する全ての軍事行動を中止すべきだ」と韓国に呼びかけ、オリンピック後も米国との共同軍事演習を行わないよう、求めたことだ。オリンピック後、韓国政府はこの件で米国と北朝鮮の間で板挟みとなる。韓国の社会は、反米と親米で割れているからだ。もし、「朝鮮半島安定化の問題について北朝鮮との話し合いを続けている間は、米軍との共同軍事演習を停止する」というような決定を韓国政府がすると、米国は(特にトランプ大統領は)鼻白むだろう。

今の状況は、「北朝鮮が話し合いムードに転じた」ようなアマいものではない。北朝鮮は韓国とだけ話し合うことにして(核問題は話し合いの対象にしない)、韓国を米国との同盟から引きはがし、裸にして自分の方に引き寄せようとしているのだ。そしてこうして米韓離間ということになれば、在韓米軍は撤退する。もともと在韓米軍は、韓国が北朝鮮に征服されて共産圏入りするのを防ぐためのもの。冷戦後はその必要性は大きく落ちているし、韓国が自分の意志で北朝鮮の軍門に下るのなら、韓国に駐留を続ける大義名分もなくなってしまう。

ということで、在韓米軍は撤退し、北朝鮮と韓国は米国なしに平和条約的なもの(朝鮮戦争の当事者だった米国なしに平和条約は結べない。米国なしなら不可侵条約の類を結ぶことになる)を結ぶ。米国内では「そんな韓国を守る必要はない」という世論が勃興し、韓国に有利な米韓自由貿易協定は破棄される。米国は、韓国製品に対して高い貿易障壁を設けるだろう。もともと米国は韓国との関係で経済的利益を得ていないし、サムスンとアップルは競争相手だ。

この中で韓国、北朝鮮は国際場裏での立場を強化するために、提携、統合の方向に進み、最終的には核兵器を持ち、ロシア以上のGDPを持つ大国として、極東に立ち現れるその時1965年の日韓基本条約は無効になり、日本は統一朝鮮との平和条約締結を迫られるだろう。統一朝鮮への「賠償」、慰安婦問題、企業補償問題、竹島の所属問題等々が大々的に持ち出され、日本は大きな負担を迫られる。両国の世論は如何なる譲歩にも反対して交渉は膠着、日韓基本条約締結の前15年にもわたってそうであったように、日本と統一朝鮮の間は何十年も基本的枠組みを定める条約無し、或いは外交関係さえないまま推移することになるだろう。

米国は北朝鮮を攻撃するか?

米国は、このような展開を防ぐことができるだろうか? 事態が朝鮮統合の方向に転がり出したら、米国は止められまい。米国にとっては、これを是非とも止める必要もない。但し、北朝鮮の核保有と核拡散だけは絶対止めたいだろう。しかし、交渉で実現できるのはせいぜい、「双方とも核で先制攻撃はしない(核の第一撃不使用)。北朝鮮は他国に核技術を移転しない。そのための査察に応じる」程度のことだろう。

では、米国は単独で北朝鮮を攻撃するのか? 従来とパラダイムが違うのは、北朝鮮のミサイルは米国に直接脅威となるので、米国としては韓国を見捨てて朝鮮半島から去れば終わり、ということにはならないことだ。米国大統領は脅威を除去しなければ、国民の支持を失うだろう。

では、米国が特殊部隊を派遣して核施設を破壊し、ついでに金正恩を捕獲すればいいだろうと簡単に言う人がいるが、そうはいかないだろう。特殊部隊は落下傘で下りるか、ヘリで来るか、海から上陸するかしかないが、そんな簡単には北朝鮮に入り込めまい。また入っても、北朝鮮軍に取り囲まれ殲滅される前に撤退せねばならず、できることは限られる。核施設を破壊するようなおおごとは、陸上大部隊を長期にわたって展開――つまり戦争――しなければ、実現できないだろう。ミサイルを核施設に打ち込むことはできるだろうが、米軍はそのありかの全てを把握しているわけではないだろうし、地形的にそれができない所に北朝鮮の基地は位置しているかもしれない。日本では戦争末期、長野県の松代に天皇の御座所が作られたが、ここは山に囲まれていて、米軍爆撃機は照準を合わせる前にあっと言う間に通過してしまうようなところだ。

米軍による北朝鮮攻撃は日本の踏み絵

米軍が北朝鮮を攻撃する場合、日本の米軍基地が使われるかどうかが問題になる。2003年、米国がイラクを攻撃した際、トルコは国内のインジルリク基地から米軍が進発することに同意を与えなかった。

北朝鮮のミサイルは日本にとっても脅威であり、米軍がこれを除去するのは日米安保条約にかなったことだ。しかし在日基地から米軍が進発することが明らかになっていれば、北朝鮮は事前にそこを叩こうとするだろう。日米はそれを防ぐことができるだろうか? 
1950年朝鮮戦争の時は、日本が独立を回復する前だったから、米軍は日本の基地を大いに使った。そして北朝鮮は、核ミサイルで在日米軍基地を叩く能力を持っていなかったから、それでも大丈夫だった。今は双方とも条件が異なる。

そういう時日本国内では、「米国だけが突っ張っていて、地域の情勢を不安定化させている。危なくてしょうがない。北朝鮮をかたくなに敵視するからこういうことになる」という世論が起きるだろう。その圧力下、日本政府が米軍の日本からの進発を断れば、日米同盟は危殆に瀕するだろう。在日米軍基地は在韓米軍基地と違って、米軍のアジア・インド洋・中近東方面への展開に不可欠なので、米国も簡単に日米同盟を切るようなことはしないだろうが、あらゆる圧力をかけてくるだろう。円高は放置され、米国内での日本企業への訴訟は急増するだろう。

要するに北朝鮮の核ミサイルは、韓国を米主導の世界体制から引きはがし、中ロを中心とする権威主義・計画経済的システムの中に引き込むという、極東の枠組みを組み換えることを意味しかねない。その時、日本はどうするか? おそらく離米を求める声が国内で強まるだろうし、それは安倍政権が退場した後の不安定な時期と重なるかもしれない。日本は、離米しても、自分の安全、繁栄を守ることができるのかどうか、よく考えておかないといけない。

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