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2020年3月 3日

2月随想 ダイヤモンドプリンセスなど

(2月26日発行したメルマガ「文明の万華鏡」第94号の冒頭です)
コロナ・ヴィールス、あるいは新型肺炎、そしてそれが起こしつつある株価暴落で、すっかり文明の終末気分、あるいは、「発展」、「進歩」、「文明」というものの儚さ、脆さをまたしみじみと感じています。

コロナ・ヴィールスは今のところ、西欧中世のペストのような威力は持っていないでしょうが、いつ変異するかもしれず、そうなるとかつてローマ帝国で起きたことが繰り返されるかもしれません。ローマ帝国はゲルマン民族の侵入で滅びたことになっていますが、これを防ぎきれないほどローマ帝国の軍事力、経済力が低下していたことこそが主因で、その背景の一つとしてこれも中国方面からやってきた天然痘やハシカにローマ人は免疫を持っていなかったため、人口が激減したことが最近指摘されるようになっています(Ian Morrisの"Why the West Rules")。当時ローマ帝国の崩壊は、「サプライ・チェーンの崩壊」を招き、現在発掘される当時の消費財は、文明の断絶とも言うべき退歩を示しています。

そして今回の事件の規模と突発性(特にクルーズ船への対応)に日本政府が対応しきれないでいることは福島原発の時と同じで、役人出身の私としても身につまされるものがあります。武漢の邦人を特別機で引き上げ、帰国後一時隔離する等の手配には水際立ったものがありました。しかしダイヤモンド・プリンセス号の方は、打つ手なしという状況で、浮かぶ隔離収容所のようになってしまいました(発病者は陸上の病院に収容されていますが)。

いくつかの疑問点があります。一つは空調システムについて。船内の空調は、横浜接岸中は外への排気を止めているはず。つまり同じ空気が常に船内を循環しているはずで、その中にはヴィールスも混ざっているのでしょう。空気感染はしないということになってはいますが、感染者はなぜかどんどん増えています。3500名以上が発病した場合、対処できる体制は日本にあるのでしょうか。

船内の体制が「なっていない」ことがネット上等で指摘されています。要するに、症状の出た船客が一般客も通る廊下を通って診察室に行く、というようなことです。しかしどこまで同一船内で隔離ができるのか。例えば一等船室の区域を隔離区域にするようなことができるのかどうか。そのためには一等船客に二等以下の船室に移ってもらわなければなりませんが、それに従わない人も多いでしょう。そもそもこの船は米国企業が所有し、船長は「外人」。船客も国籍がまちまち。米国本社の代表はダンマリを決め込んだまま、処理は日本政府に丸投げのかっこう。

日本の役人にとっては、そもそも外国船内で自分達にどのくらいの権限と義務があるのかもわからないから、対策を講じようとしても船内の状況把握ができないし、船長や乗客と十分語り合うこともできない、こちらの言うことを聞いてくれないかもしれない。それでも特攻隊のようにして船に赴いた政府職員には、発病する人も出ています。そのうち犠牲者も出ることでしょう。

その中で、東京都が「3月15日までの3週間、都が主催する500人以上の大規模な屋内イベントは、原則延期か中止にする。食事を提供する催しは屋外でも延期か中止にする。」という決断をしたことは、オリンピックとの関連で興味を引きます。今回小池都知事が中止を決めた催しは、東京都の権限の範囲内にあるものですが、同知事の判断は他のあらゆる行事の開催可否を決める上で、一種の判例のように機能するでしょう。そしてその中には東京オリンピックも入ってくる。いろいろな活動が停止されるにつれ、「では、オリンピックはどうするんだ?」という疑問が当然起きてきますし、競技施設整備の追い込み作業にも支障が出てくるでしょう。つまり小池都知事は、東京オリンピック開催の生殺与奪権を握りつつあるのです。と同時に、この問題でうまく立ち回れるかどうかが、オリンピック直前に行われる東京都知事選での小池再選の可否を決めることになるでしょう。

もしできることなら、東京オリンピックは台風も来なくなる11月に延期するのが一番だと思います。それは、総選挙等、日本の内政上の日程を狂わせることになるのでしょうが。

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