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インド

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2019年8月19日

インドは「世界最大の民主主義」なのか「世界最大の混沌」なのか?

(これは7月24日に発行したメルマガ「文明の万華鏡」の一部分です。インド政府はカシミールで力の政策を展開しつつあり、以下で予見した傾向が現実のものとなりつつあります)

独立後のインドの政治を長らく牛耳っていた国民会議派は、今回総選挙での大敗(542議席中52議席のみ)が示すように、存続の危機に瀕している。モディ首相のインド人民党BJPが、今回選挙で542議席中303議席を取って大勝したように、国民会議派に代わってインドの「The 与党」として長く君臨していくかもしれない。それは、インドの内外政を大きく変えていくだろう。

国民会議派では、2度の総選挙における敗北の責任を取り、ラフール・ガンジーが党首から辞任した。だが、彼に代わり得る党首候補は見当たらず(と言うか、ラフールの母ソーニャ・ガンジーを頭とするガンジー家の圧力で党外に押し出されて)、ソーニャ、そしてラフールの妹のPriyankaも党の支配権を譲る気配は見せていない。国民会議派は、社会からの遊離を強めていくかもしれない。

他方インド人民党は、本年初頭までは、総選挙で不利と見られていた。上院を野党に握られたままであることもあって、必要な経済改革法案を通すこともできず、「農民の収入を2倍にする」という当初の公約も実現できない状況下、18年12月、5州における地方議会選では軒並み敗北していたからである。

それが俄かに盛り返したのは、会議派の選挙戦が盛り上がらない中で、本年2月カシミールでのテロを受けてパキスタンへの越境爆撃を約50年ぶりに断行。危機感と国家意識を盛り上げ、かつモディの右腕アミット・シャー党総裁の指揮下、贈賄、刃傷沙汰と何でもありの選挙テクニックを駆使したからである。2016年11月政府が抜き打ち的に行った旧高額紙幣の無効化で、野党が選挙資金の多くを失っていたことも、今回の選挙で作用したと言われる。インドはアングロ・サクソン系国家にほぼ共通する全小選挙区制で、地滑り的勝利が起きやすい面もある。

これで、人民党支配が決定的となった。内相になった上記アミット・シャーは、剛腕をふるって、支配を強化していくだろう。インドは長年、「世界一大きな民主主義国」と言われてきたが――国民会議派自身の内部は上記のように非民主的であったが――、人民党は民主主義よりは開発独裁、ヒンズー民族主義を奉ずる強権主義に訴えていく可能性がある。それにより、国内のイスラム人口は不満を強め、一部ではそこにISISの残党が浸透していくであろう。

インド、中国、ロシアは6月、大阪G20の場で三国首脳会議を開いている。これは右3国が米国から圧力を食らった時の保険として、これまで時々開いては火を絶やさないようにしてきたFormatだ。自分はこれまでこの集まりを御都合主義的で内容に乏しいものとして軽視してきたが、インドの政権が強権主義に傾いてくると、この集まりは同質性の高いものとなって、力を得てくるかもしれない。

インドは、国境問題やインド洋での制海権をめぐっては中国と対立するも、経済関係には緊密なものがあり、ロシアとも最新防空ミサイル・システムS-400の輸入の是非をめぐって米国と摩擦を起こしている等、日米が中心になって進める「自由で開かれたインド太平洋戦略(FOIP)」だけにコミットしているわけではない。宗教性が強く(インド人民党は、ヒンズー・ナショナリズムの面を持つ)、強権主義で、ロシア、米国、中国の間を自在に泳ぎ回る点では、トルコに似た――トルコの約16倍弱の人口を持つが――国であると言えよう。

またトランプ大統領が、インド人の米国流入を制限し始めていることは、中国の代わりにインドを対米輸出生産の拠点にすることにも、一定の限度があることを示している。

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