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世界はこう変わる

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2014年2月 1日

また世界大戦? 百年前とのアナロジー

今年は2014年、第一次世界大戦が勃発した1914年からちょうど百年、というわけで、歴史談義が盛んになっている。つまり英国の覇権が衰え、ドイツが台頭した1914年当時は、米国の覇権が後退して中国が自己主張を強めている現在に酷似している、第1次大戦の時と同じように、偶発的な事件が異なる同盟システム間の戦争を次から次へと誘発、世界大戦に至る可能性あり、というわけである。

しかしこれは、危機感を煽るための為にする議論の感があって、実際には米国は国内の格差をかかえつつも経済は復活の方向を示しているし、EUでもアイルランドの経済は回復、PIGS諸国と揶揄されたポルトガル、スペインでも最近は国債が好条件で完売し、金融面での信用回復を如実に示している。ロシア、中国、インド、ブラジルなどBRICS諸国の経済が軒並み、構造的要因から中だるみ傾向を示している今年は、先進国経済復活の年と定義することができるだろう。

1914年とのアナロジーということであれば、日本は第1次世界大戦後に起きたことを思い出す必要がある。戦争で英国が弱化した1921年には日英同盟が自然死(失効)している。これは、満州の利権をめぐって日本と競合関係にあった米国が、英国に働きかけた結果でもある。米国は代わって「ワシントン条約体制」と呼ばれる米、英、仏、日による集団安全保障体制、国際金融体制を打ち出し、日本はその中で艦隊を削減し、中国、満州への融資も「四国借款団」の調整に従うこととした。しかし集団安保体制というものは、強い中核がないと拘束性のないものになるし、満州への融資も日本での窓口役、調整役を務めていた井上準之助が1932年暗殺され、同年に満州国が成立すると、米国も日本との協力に見切りをつけ、反日を表に出す(このあたりは「ウォールストリートと極東」 三谷太一郎に詳しい)。1931年の満州事変から1941年の日米開戦までは、僅か10年しか経っていない。今に引きかえて言えば、これから2024年の戦争に向けて急速に国内の締め付けが強化されていくようなものだ。

当時の状況を現在の国際状況に置き換えてみると、新興大国の中国が、国力の低下した米国に働きかけて日米同盟をやめさせ、代わって自国主導の「アジア集団安保」体制、アジア国際基金を立ち上げ、日本を封じ込める、という構図になるだろう。

更に百年前とのアナロジーということであれば、世界の論壇は百年前のドイツの台頭と現在の中国の台頭を比べるよりも、清朝末期と現在の中国情勢を並べてみるべきではないか。

つまり清朝は満州民族という少数者による支配体制であったので、体制護持に非常に神経質であった。19世紀末期、欧米に国費留学生を出しても、彼らがリベラリズムを身に着けて帰国したのを見るや、これを停止している。そして西太后は光緒帝による西欧化改革への抵抗が政府部内で高まるのを見るや、これをクーデターでつぶしているのである。

昨年11月の中国共産党三中全会では国営企業の保持、思想的締め付け強化など、保守化傾向が目立った。これに薄熙来事件の余波として公安機関幹部の粛清が重なっており、中国は今不確定の要因を増している。

つまり百年前とのアナロジーということでは、ドイツの興隆ばかりでなく、清朝の崩壊、ロシア帝政の崩壊(都市の表面的な繁栄の蔭では、保守的な政治へのインテリの不満の鬱積、そしてテロの続発等)も思い浮かべる必要があるということである。

(以上は1月22日発行のメルマガ「文明の万華鏡」21号から、一部短縮したものです。全文はメルマガをご覧ください)

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