Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
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世界はこう変わる

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2012年1月 8日

中国経済の現状 2011年11月中国東北の旅から

昨年11月東北地方を旅行した時のメモはまだ沢山ある。以下は、経済についてのメモをまとめたもの。(7日アップし、8日大幅に補記)


2011年11月中国東北地方で見聞した結果は、このブログに掲載した「中国――異次元の超大国――中国がGDPで世界一になる日に備えて――」でまとめたが、経済面についていくつか補っておきたい。

概観

今回の旅行で、当面の中国経済について持つに至った自分なりの印象は次のとおりである。

(1)中国はあと数年で米国のGDPを抜く可能性がある
中国の名目GDPは2010年約6兆ドル相当で、米国の約14.5兆ドルのはるかに下だ。だがIndexMundi(http://www.indexmundi.com/china/gdp_(purchasing_power_parity).html)の購買力平価計算によると、中国のGDPは2010年で約10.09兆ドル、しかも毎年0.8兆ドルくらい増えているので、米国にあと数年で追い付くことになる。但し、中国経済もその人口構成に照らしてみると、今が成長のピークであり、これからは成長率を低下させると予想されている。また世界に投影できる経済力、世論形成力、軍事力等の面では、米国の支配的地位は揺らいでいない。米国では南部を中心に製造業復活の兆しもあり、大統領選を前にこれから景気も上向いてくるだろう。

(2)太平天国の乱--経済の大崩れは起こらない
 中国の経済発展は、高速度の都市化とインフラの建設に大きく支えられている。百万都市は無数にあるだけでなく、人口20万余の地方都市にも高層ビルが並び立っている。インターネットで「中華人民共和国城市列表」を見ると、殆どの都市が名刺代わりのように「高層ビル林立」ぶりを写真として出している。大規模ショッピングセンターが方々にあって、満員の盛況を呈している。路地の露店にはネギや果物が山のように積まれ、食堂に入れば3人前とみまがうような料理を1人前で出してくる。そして食品はまだ相変わらず安い。中国は過剰供給(abundance)の国だ。

中国では都市人口が6億6500万人いることになっている(2010年11月時点。2011年4月28日新華社報道)。その半分の3億人がまあまあの生活をしていると想定すると(それは米国の総人口3億人強に匹敵する。なお米国では約5000万人が貧困層に分類されている)、その食費、光熱費などをアメリカ並みの価格で計算し、さらに世界の工場として組み立てている耐久消費財、そして筍のように増える高層ビル、マンション、そして毎年数千キロものテンポで伸びてきた高速道路、高速鉄道を加えると、それはもう米国のGDPを超えているかもしれない。
このように生産と消費が高水準にある経済は、なかなか大崩れはしないだろう。現在起きている不動産バブルの収縮も、政府によって救済措置が講じられるだろうから(数年前したように、外貨準備を大手国有銀行の資本として注入してもいいのだ)、不良債権増加→銀行の貸し渋り→景気低下、というお決まりコースをたどってスパイラルな経済収縮が起きる可能性は小さい。

今回話し相手の中国人は一様に、「中国は今不景気なのだ」ということを言った。だが1990年代日本にやってきたロシア人が「こんな結構な経済不振なら我が国にも是非欲しい」と冗談を言うほどだったのに似て、現在の中国には外面上、停滞感はない。中国人も、「散財を少し控えている」くらいのものらしい。
われわれ日本人は、「中国経済が荒れる」という言葉を聞くとすぐ、太平天国の乱とか清王朝崩壊後の軍閥乱立の状況を想定してしまうのだが、それは「日本経済が荒れる」と聞いて、応仁の乱を外国人が思い浮かべるのと同じ時代錯誤ではないだろうか。「米国経済が変調」と日本のマスコミが書き立てても、アメリカに旅行してみると、街の表情は以前と変わっていない。つまり、食品や消費財を自分で大量に作り出している経済が、そんな簡単に崩れることはないのだ。都市での建設が不調になれば、農民工は農村に帰るだけ、都市住民もそれほど職を失わないかもしれず、たとえ暫時失ったとしても貯蓄・相互支援にも依存してやっていくだろう。

但し札を刷りすぎてインフレが亢進すると、確かに危険な状況が起こるかもしれない。1991年のソ連では、政府が小麦や牛乳などへの価格助成金を削減する動きを表面化させるや、商店からは商品が消えた(本当に文字通り、ほとんどすべて消えた)。値上がりを期待して、関係者たちが退蔵を始めたのである。1991年12月ソ連が崩壊し、1992年1月新しいロシア政府が「価格の自由化」(要するに価格助成金全廃)を発表すると、2年間で6000%に達するハイパー・インフレが始まった。
適度のインフレは経済活動を活発化させる。これから製品の価格が上がると思うと、企業は設備投資をして生産を拡大しようとするからだ。ところがインフレが過度になると、それは投資を阻害する。なぜなら工事の費用、機械設備の価格等がうなぎのぼりになるために、予定した資金では到底足りなくなるからだ。

中国の歴史にもハイパー・インフレの例はある。それは元の時代、交鈔と呼ばれる政府紙幣を印刷しすぎた時等である。だが今の中国では、食品でも消費財でも不動産でも供給が非常に大きいために、少々通貨供給量が増えてもハイパー・インフレには中々ならないようだ。とにかく中国というと、高級デパートであれ、場末の青空市場であれ、その徹底的なモノの豊かさに圧倒されてしまう。そこでは、Ipadも廉価版となって野菜のように露店で埃を浴びている。

(3)「輸出基地」としての中国はもう終わり、これからは内需向け生産の時代
 中国では賃金が上昇中である。工場労働者の賃金が日本と同等になるまで、あと10年もかからないだろう。従って、中国の低賃金労働を利用して第三国に輸出するための製品を組み立てる――そのような「輸出基地」としての意義を中国は急速に失いつつある。その点は、長春でも大連でも、僕が話を聞いた日本の企業関係者が異口同音に言っていた。現在、日本から中国への直接投資は第3波とも言うべきブームを示しているが、これは円高対策と言うよりも、巨大になることがほぼ確実な中国市場でのシェアを確保するためのものなのだ。

(4)日系ものづくり企業と本社の関係
中国にものづくり日本企業が進出することがどのくらい日本経済の「空洞化」につながるかについては、定説はない。海外からの利益送金で、日本本社での雇用も増えるという見方もある。今回の旅行で確認できたことは、①中国であげる利益は配当の形で本社が吸い上げていて、中国での追加投資が必要な場合には増資する、という例があったこと(人民幣は交換可能通貨ではないので、日本への送金については香港をからませたり、各社それぞれのノウハウがあるらしい)、②自動車など組み立て産業が中国に進出する場合、日本の部品会社も引き連れてくるので、部品の現地調達率は金額ベースで85%程度に達することも珍しくない。但し高度の金型は日本から取り寄せる等、技術の完全流出は防止しようとする意識もある、ということである。

(5)「合弁も、いつかは中国企業に」の意識
 今のように日本の対中直接投資が盛んになると、一抹の懸念が生ずる。それは、日中関係が悪化した場合、あるいは中国大衆が外資に大きな反感を持つに至った場合、日本企業の工場が中国側に没収されてしまうことが起きるのではないか、ということだ。
 だがそのようなことは、産業革命が起きてこのかた、戦争の時以外には起きていない(中近東諸国が原油利権を接収した例はある)。日系企業もそこまでは心配しておらず、但し合弁契約の期限が切れる10年先とか15年先が一つの境目で、その時は合弁の中国側パートナーに自分の持ち分を売却するようオファーされる可能性があることは重々承知し、それまでに十分償却をしておく心構えでいた。

(6)激しい競争と低収益体質
日本は自動車、家電など同業種にいくつもの企業がひしめいて競争をするので利幅が薄くなることで知られている。しかし、中国での競争はその比ではなく、利幅は薄い。しかも全国を市場として生産している中国企業はそれほど多くないから、中国の人口から連想されるお化けのような巨大企業は生まれにくいということだ。利幅が薄ければ、外国で勝負に出るための資金力も限られているだろう。

(7)日本に残るは部品産業だけ?
それでも、中国は国内市場がこれからますます巨大になっていくし、自動車が電気自動車に完全移行すると、技術的には簡単なので、その生産は中国でやることがますます有利になっていくだろう。その場合、トヨタなどは中国企業に次第に圧倒され(その頃には日本企業との合弁の契約期限がちょうど切れる)、日本に残るのは電池など部品産業だけになっていくかもしれない。

(8)全国規模で活動する中国企業も
一般に、中国では一つの省(県)が人口面などで普通の一つの国家に相当するし、各省の共産党幹部などは地元企業の成績を上げることで昇進を目指すので、他省の企業が進出してくることを喜ばない、従って全国規模で活動する企業は少ない、と言われている。確かに、自動車などではそうした面がある。
だが、例外もある。例えば東北地方で売られている乾電池は、あのパナソニックの電池と同じデザインなのだが、福建省の工場で作られている。

(9)民間は過当競争・国営部門はちぐはぐ
中国人は日々がすごい競争と努力を重ねている。ところが国営部門、役人がかかわる部門はどこかがちぐはぐで、合理性・採算性の観点からものごとをうまく調整するべき何かが抜けている。各分野が相互の連携・連絡なしに、それぞれの上からの指令で動いているからこうなる。それは新幹線はできても、市中心と駅が1時間以上も離れていたり、プラットホームの工事が仕上がっていなかったり、切符を買うのに行列したり、乗降のための改札口が一つか二つしかないことなどに表れている。役人が差配するところでは、市場原理が足りず、供給が少なくなる。断水、停電も起こりがちだそうだ。社会主義の不足経済のままなのだ。

(10)共産党は外資の経営を阻害するか?
中国の国営企業では、経営陣が生え抜きより党官僚によって「経営」されていることが少なくない。彼らは短期に企業の業績をあげて次のポストに昇進していくのを選好しがちなので、彼らが手掛けるプロジェクトは時として収益性に乏しく、企業の長期的な発展を阻害する――これが、中国の企業経営における党の関与がもたらす弊害と言われる。
しかし大型外資企業については、共産党の関与も限られるのが通常のようだ。「党の代表はいます。でも党費を集めることぐらいしかしていません」というのが、一つの外資社員から聞いた言葉だ。

(11)かすかに残るソ連的メンタリティー――問題解決より言い訳
 今回視察した日系企業での労働者の定着率は、非常に高い。95%は仕事に満足しており、勤労意欲も十分で、まるで昔の日本を見る思いだと、担当者は話していた。これは、社内研修を受けて資質が高くなると、少しでも高い賃金を狙って競争相手の企業に移転して恥じないロシアの労働者に比べると、やりやすい。ただし中国人労働者も、問題が生ずると言い訳が前に出て、自分で解決する意欲に欠け工夫しないのだそうだ。このあたりは、「仕事とはボスのためのもので自分のためのものではない」、というソ連的メンタリティーが根深く残っている。

(12)まだまだ大きな余力
中国は過密で、そのうち食糧も不足してくるだろうと思われているが、余力はまだまだ大きなものがある。例えば大連から旅順へ行く途中でも、大きく空き地が広がっている。中国はまだいくらでも食料を増産し、住宅を建設できる。現に、丘を崩して住宅を造っていた。

中国東北地方の底力

中国の東北地方については、「満州時代から受けついだ国営重化学企業が多いために改革開放の波に乗り遅れ、やっと最近になって建設ブームが始まった」くらいの断片的知識しかなかった。この日本の4倍の面積を持つ大きな地域を今回回り切れたわけでは到底ないが、行って見てこの地方の持つ途方もない底力が少しは体系的に認識できた。
(それでも、重慶・成都のあたりの新開発地域には及ばないというから、中国の勢いのすさまじさには底がない)

この東北地方、冬には気温が零下20度にもなって当たり前の極寒の地なのだが、その中でも最北の黒龍江省は実は中国随一の穀倉(大豆、小麦)なのだ。そして東北南部、鞍山周辺の石炭と鉄鉱石をベースとした重工業、さらに1970年代になると黒竜江省の大慶油田をベースとした石油化学の一大中心地となる。

地図を見ると、アムール河沿いの黒河は言うに及ばず、ハルビンなども最果ての地に見え、今はさぞ寂れているだろうくらいに思っていたのが、黒河市でさえ人口170万を超え(郊外を含めてだろう)、ハルビンに至っては人口270万でその勢いは遼寧省首都の瀋陽(人口510万)をさえ凌ぐらしい。黒龍江省にはさらにチチハル(人口110万)があり、南に下っていくと長春(人口360万)、吉林(人口120万)、瀋陽、鞍山(人口340万)、海城(人口110万)、大石橋(人口70万)、蓋州(人口70万)等の大都市、中都市が並んでいる。総人口は1億3千万人だから、そのうち東北地方だけでもロシア(人口1億4千万人)は言うに及ばず、日本(人口1億2千万人)のGDPも抜いてしまうだろう。

価格表

中国のインフレがまだ大したことになっていないことを示すには、実際の価格を列挙するのが一番効果的だろう。以下は2011年11月初旬、中国東北地方における物価の一例である。1元は約12円。だいたい日本の物価の5分の1から10分の1の範囲にある。
確かにまだ日本に比べて安い。但し列車の切符を買うときの手間などを考えると、かかる費用は日本とそれほど変わらないのかもしれない。
ホテルでテレビを見ていたら、1994年のころの小学校を見せていた。これがきちんと整備されていて、日本の水準とそれほど違わないのだ。ということは、94年以後の20年で何が起こったかというと、給料が上がったが物価も跳ね上がったこと、車、住宅が買えるようになったが、ローン返済が大変なこと、くらいなのだろうか。

○学生食堂の食事は1人10元。飲料3元。
○旅順での大衆食堂。3人分の昼食が66元。つまり一人300円。
○この2ー3年で豚肉価格は2ー3倍になった。100g、90円ほど。
(食品価格が消費者物価指数に占める比重は34%とされ、このうち豚肉が22%と言われる。豚肉価格の高騰が近年の物価上昇の主な要因で、CPIを1.4ポイント押し上げた由)
○即席ラーメン 5袋 7、5~9、4元
○米 10キロ 42元
○牛乳 1L 9元
○ビール1びん、2~3元。

○ジャンパー 1400元~135元
○マフラー(露店) 15元
○靴(露店) 60元

○フライパン 169元 
○単4電池、6つで14元。
○炊飯器 329元
○電気ポット 79元
○コンピューター VAIO、約4500元。

○ガソリン1L 7、1元(2年前5、5元)。
○タクシー、日本なら1500円の距離が15元。
  タクシー運転手の稼ぎ、月6000~1万元。

○ウィークリー・マンション、35平米で一泊200元。
○教授の給料は月4千元くらいか。
 年金は月2万5千円程度。
 ○大連の旅行社社員の給料は3万円。郊外に並ぶ「別荘」はその給料では100年くらいたたないと買えない。「別荘」は買っても住まずに値上がりを待つだけの者も多いが、最近の不動産市況では半値くらいに落ちるかもしれず、そうなったら戻るまで10年はかかるだろうと大衆は見ている。

長春のトヨタ

長春のトヨタを見学し、詳しい話も聞かせていただいた。主なことは、

○地元の第一汽車と50:50の合弁。長春では、ドイツのフォルクスワーゲンも第一汽車と合弁工場を持っている。
○第一汽車との契約は30年。
○総投資額:15億元。
○年13万のエンジン生産能力を持っており、製品はトラックで、天津のトヨタ工場へ出荷される。その物流に問題が起きたことはない。広州のトヨタ工場は、広州汽車と合弁でやっており、長春工場のエンジンは使っていない。

○人員は約800名。うち技能職は81%。そのうち60%ほどが本雇い。社員出身地は地元の吉林省が80%。残りは全国に分散。
○操業計画は第一汽車がとりまとめるので、トヨタが党、政府から何か干渉されることはない。第一汽車は国営なので、そのものが政府のようなものだ。
○総経理として日本人がいるが、副総経理の中国人が董事会理事長を兼ねる。董事会構成は4:4で日本人、中国人同数。
○副総経理とほぼ同等の地位に工会主席・党委として中国人がいるが、これはラインに入っていない。
○部長クラスも日中同数。総務部長が中国人。

○製品の不良率は、非常に低い。新米の時は部品を落とす等、意識が低いが、訓練する。成績がよくなると、奨励金をチーム全体に出す。
○組長レベルくらいまですべて中国人であり、日本人との関係は非常にいい。
○そろそろ中国人を管理職に昇進させたい。
○現場の細かい問題は、組長レベルで中国人の間だけで解決している。出身地ごとに派閥ができるとか、仲間割れするなどの問題はない。

○今は組長の賃金は日本の10分の1程度だが、賃金がすごい速度であがっており、10年もたてば日本と同じになるだろう。フォルクスワーゲンの工場はそれを見越したかのように、自動化率が高い。


コメント

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