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世界はこう変わる

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2007年5月 3日

アメリカの松坂ブーム 日本イメージ暴落前の徒花?

 ボストンでは、報道されている通りの松坂ブームでした。日本の記者も何十人も常駐している由。
球場ばかりか、ハーバード・スクエアの売店でも空港の売店でも松坂グッズを売っており、野球雑誌の表紙は「だいすけ」とひらがな入りで松坂の写真でした。
 
 日本の歴史専門家として高名なアンディ・ゴードン・ハーバード大学教授も、もともと野球が大好きだったこともあって、今は松坂を追いまわし(記者会見では記者の質問が一段落したあと、おずおずと質問している由)この秋には日本で「研究書」を出版するということです。
 
 私は以前、日本では日本人の大リーガーが大変な話題になるが、アメリカでは彼らに「日本」を意識するよりも、むしろアメリカのプレーヤーとして喝采しているのだろう、と思っていました。
ところが、松坂ははっきり「日本」に結び付けられています。ヴェネズエラやキューバから来た選手ではこのようなことはないことに鑑みれば、松坂の場合には何か特殊な要因が働いています。

 おそらくは高額の金が動いた獲得交渉が、アメリカ人の心をすっかりとらえてしまったのでしょう。金は力の証明であり、アメリカ人は実力が大好きな人たちだからです。そして金イコール日本、日本イコール神秘、神秘な「ジャイロボール」と連想が働いて人気が沸騰しているのだと思います。私の友人は苦笑いしながら言っていました。
「ボストンで、日本がこんなに話題になったのは、太平洋戦争以来だぜ」
 
 松坂は、日本の「ソフト・パワー」の頂点と言っていいでしょう。他方、これが日本イメージ下落の前の徒花となる可能性は十分あります。別のコラムで書いたように、東アジアにおける日本の地位は、アメリカ人の目には段々相対的なものになってきたからです。それに、アメリカ人は大きくてダイナミックな(つまりわかりやすい)ものに惹かれます。それが異質なものであってもです。ソフトパワーはあればそれに越したことはありませんが、国を救ってくれるわけではありません。松坂ブームが過ぎてみたら、足元には空洞が黒く口をあけていた、というようにならないことを願っています。

コメント

投稿者: 勝又 俊介 | 2007年5月 5日 02:31

確かに松坂投手は日本のソフトパワーの頂点なのかもしれませんが(シーズンの滑り出しは順調とは言えませんが、これから必ずや巻き返してくれることでしょう)、そこはあくまでスポーツという崇高なる真剣勝負の世界、国のイメージまで背負わせてしまうのは、選手にも失礼なのかもしれません。
世界的規模で見れば、「野球をやっている」まともに言える国はごく限られていますし、いまや主要輩出国となっている中南米以外の国で言えば、アジア諸国はまだまだ選手が「国そのものとイメージを結び付けられてしまう」のでしょう。
ただ、「レッドソックス・松坂」が定着してきたいま、テレビで観る限りでは、本拠地フェンウェイパークにおける「(球場内の看板・電光掲示なども含めた)過剰なほどの迎え方」も薄らいできているようですし、新たな選手の「お客様状態」は、そのうちどんどん消えていくことでしょう。そして、松坂投手が「国を意識させられる」こともなくなっていくのではないかと思います。実力・結果が全ての厳しい世界、松坂選手がどれだけ活躍をしようと、もしくは全然活躍できなかろうと、現地のファンは、国ではなく、純粋に「選手そのもの」を見つめていくものです。
ヤンキースのスターターとして抜群の安定感を見せている台湾出身の王健民投手しかり、メジャー生活10年以上、すでに110以上の勝ち星を積み重ねている韓国出身の朴賛浩投手しかり、それぞれ最初(もしくは活躍しはじめた頃)はものすごく「国」と結び付けられていましたが、そんなのも「喉元過ぎれば」です。だからこそ、メジャーリーグの真剣勝負がますます面白く感じられるわけですが。

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