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世界はこう変わる

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2007年5月 3日

東アジアのヤジロベエの中での日米(旅行の印象)

 4月21日から1週間ほど、シカゴ、オタワ、ワシントン、ボストンを回ってきました。ワシントン、ボストンではシンクタンクや大学の人たち多数と懇談してきました。その結果、現在の日米関係について得た印象は次の通りです。小泉・ブッシュの蜜月関係が終わって、日米関係が実は転換期にあることが明らかになりつつあります。
 米国の力はBRICsなどとは比較にならないしっかりしたもので、これからも人口が増えますので経済も伸びるであろうこと、そして戦後60年続いてきた自由貿易体制には今や日本を含めた全てのアジア諸国がその繁栄を依存していること、米国を孤立化させた場合、世界は政治的安定を保証してくれる存在を失い、モノ、カネの取り引き、移動、外国への直接投資は大きく限定されて、世界は大混乱するであろうこと、などを念頭に置いた上で、日米関係のあるべき姿を考えていくことが必要だと思っています。

感想
1.冷戦も終わり、中国市場での方が利益の伸びが高くなってくると、日本の地位は相対化します。
在日米軍基地や日米間の人脈の緊密な網の目に見られるように、同盟関係に揺らぎはないにしても、日米双方の世論において同盟関係を再び見直そうとする気運は見られます。

2.日本の世論においては、北朝鮮の核への対応などをめぐって日米安保への疑念が表明されるようになっています。他方米国では面白い(と言ったら傍観者的ですが)ことに、最近の日中、日韓関係などを見ていて、「戦後初めて米国側の方に、『日米安保のせいで米国が無用な紛争に巻き込まれるのでないか』という恐れが生じ」(ある米国人専門家の言)ている由。まるで、戦後の日本世論が日米安保に対して感じてきた懸念を引っ繰り返したようなものです。

3.これが意味するところは、日本が一方的に攻撃でもされない限り、東アジアにおける米軍は日本を守るというよりは、東アジアにおける安定を守る重し、バランサーとして観念されるようになってくるだろう、ということです。

4.これにより、アメリカとの関係さえ良ければ中韓との関係はうまく行く、というものでもなくなってきたということができます。今回の安倍総理訪米ではうまくすり抜けましたが、慰安婦の問題がその象徴です。
(ところで、米国下院で慰安婦についての決議案を提案しているホンダ議員は地元の中国系団体の支援を受けているという報道が一部に見られますが、米国のアジア系団体に詳しい友人の話では、今回中国人系団体はそのようには動いていない由。
もともと米国における中国人の団体は、台湾系とか反中国政府系が多いのです。)

5・日本では現在、米国が北朝鮮の核、拉致問題などで日本の望むようには動いてくれていないことで、自主防衛、核武装を呼びかける声も上がっています。
しかし米軍が日本から去った場合、上記に書いた事情を考えると、アジアにおける局面の展開次第では米国が日本に軍事的圧力をかけてくる場合さえ想定されます。

6・前文で書いたこととあわせ、米国との関係を感情で処理してはいけないと思います。サンフランシスコ講和条約以来、日本が日米安保条約を維持してきたのは、それが日本の繁栄に資していることを認める、国民の暗黙の支持があったからではないでしょうか? でなければ、自民党政権はあんな長期は続かなかったでしょう。
現在も、日米安保がなければ、日本は東アジアで「裸」となり、周辺諸国から数々の無理無体な要求に直面することになるでしょう。

7.それが対米従属でいやだ、と言うなら、「キレル」以外の方法で自分の立場を良くするよう、努力すればいいのです。ある程度は可能です。それ以上は、基本的な国力の差、日本が置かれている地政学的な位置などに鑑みて、無理な背伸びをするべきではありません。他の大国と比べてみると、米国は今でもパートナーとするには最良の国、人々です。

コメント

投稿者: 木下俊彦 | 2007年5月 3日 22:59

河東さん
 いつも貴重な見解を教えていただきありがとうございます。ただ、本件については、ちょっと河東さんと私の考えは違うように思います。私は、米国官民は東京や沖縄が近隣国からミサイル攻撃されたときに、自国も応戦することにはやびさかでないが、尖閣列島など人もいない島などで、ふとしたいずれかの挑発や誤認で戦闘が起こり、それに自国がまきこまれるのは真っ平と考えているのではないでしょうか。米国が有効に介入しておかないと、北朝鮮や中国(の過激派)と日本の過激派がこぜりあいを起こす可能性なしとせず、と見ているのではないでしょうか。そういう可能性をなくすため、米国は、日中関係の改善を強く期待した、しかし、日本が米国をさておいて中国との政治関係を緊密化することは望まない(=東アジア共同体には反対する)。
 また、北東アジアの危機を口実とした日本の核武装にも絶対反対、しかし、中長期的に中国解放軍の過激派が力を持ってくることも懸念、これに対しては、日、豪、印と連携を深めるなど先手を打っておくというという戦略を展開している(民主党の大統領がでれば、多少仕組みは変わるかもしれませんが、大きな図式は変わらない)。
 現時点では、米国は(核実験で失敗した)北朝鮮を、核実験に「成功した」ことにして、中国と一緒に一挙に押さえ込んでしまう。この北朝鮮問題とイランの核武装問題の解決のため、米国は中国との関係を悪くできない。しかし、中国は、米国の中国重視の期間はそう長くないと見ている。そこからの帰結は、(靖国問題で自らが国内で厳しい状況に追い込まれない限り)日本と仲良くする、ということでないでしょうか。
 そう理解すると、米中日の全体の流れが整合的に説明できると思うのですが。
 米国人も、自分の「深層心理」まで日本人に明らかにしない方が得だと思っているのでしょうが、彼らの本心をわれわれはきちんと知っておく必要がありましょう。
 「慰安婦問題」はそういう観点から、米国として、日本けん制にぴたりの材料でしょう。米国による日本の戦後体制づくり(=民主化)の正当性だけは譲れない。それに挑戦する日本国内の動きはたたいておく。そのためには、米国にとって不利な形での日本の歴史の「改竄」は許さぬとなる。米国と中国、韓国はイデオロギーは別にして、ここでは一線になる。
 日本の「超保守派」にとっては、これは耐えられないことでしょう。しかし、米国との関係を切って、歴史を都合よく解釈することには、国民も反対でしょう。国民は最大の犠牲者だったのですから。
    木下俊彦(早稲田)

(河東より:
コメント、有難うございます。おっしゃられていることと、小生が書いたことはそれほど変わらないと思います。
米国は、日中、日韓の「過激派」同士の争いに巻き込まれるのを嫌っている、ということです。その場合、米国はバランサー化するでしょう。アジアでメジャーな武力紛争が起こらない限り。
米国の中国重視は、長期にわたる可能性が排除できないと思います。米ソ対立と比べ、双方が経済的に依存関係を強めていることが一因です。戦前の米国にとり中国は、ほぼ一貫してアジアにおける主要関心対象でした。
問題は中国軍の増強ですが、これはまだコントロール下にあると思います。) 
 

投稿者: 簡憲幸 | 2007年5月30日 17:24

 河東先生、先日は有難うございました。また木下先生、大変にご無沙汰をしております。
 さて、賢人お二方のお話は大変に参考になりました。私は台湾系の華僑であることから、日米、日中のことになると、いつも感じることがあります。それは韓国と台湾のことです、
 今回の話題では、とくに有事のことを考えるのであれば、日韓、日台の関係を戦略的に考える必要があると思います。実際、近年になって日本の自衛隊は台湾の軍部との関係強化を図っています。しかし、政治的な環境下でひそかに進めているといった感じです。その理由はご存知のように中国のにらみが効いているからです。これはおかしなことで、日本は北朝鮮と中国を危険視している中で、同盟を強めなくてはならない台湾との関係が進まず、日本は中国の動向に振り回されているという矛盾です。もし台湾との関係を深めないまま、台湾の国民党が2008年総統選挙で政権をとるようなことになれば、台湾と中国との軍事面でも強調が進むことも想定しなくてはなりません。これは経済的な中国・台湾の結びつき以上に、日本にとってはヤバイことだと思われます。
 また日本と韓国との軍事関係もアメリカを抜きにしては成り立たない状況のようです。アメリカを介しての軍事面での協調は効率的なのかもしれませんが、北朝鮮が発端で有事がおきた場合には、韓国さらに日本本土にまで直接的な被害が及ぶ可能性があります。こうした現実的な危機に対して、日本はアメリカを介してしか対応できない、という矛盾もあります。
 私としては、日本の外交はアメリカ頼みという本道と共に、対韓国、対台湾、という側道を整備しなくてはならないと思っています。

(河東より: 本格的なコメント、有難うございます。
日本は台湾とは「同盟」関係にはありませんが、台湾をめぐり武力紛争が起こり、それが日本の安全保障に否定的な影響を及ぼす際には対応するという立場です。
自衛隊が台湾軍部とコンタクトしているのかどうかは知りませんが、していたとしても、上記の立場から逸脱していることはないでしょう。
日本は、台湾をめぐるStatus quoが維持されることを支持するべきだと思っています。Status quoの維持は中国政府、米国も、それを欲しているものです。そして台湾指導部もそのことを知っており、台湾市民の多数もStatus quoが現在の情勢では最も現実的なやり方であることを理解しているのだと思います。
韓国については、日本、米国、中国の狭間にあって、難しい立場にあるのでしょう。)

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