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世界はこう変わる

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2011年5月26日

プーチン大統領再登場?

予告したとおりにメドベージェフ大統領は5月18日、800人以上の内外記者団を集めて2時間以上に及ぶ会見を実行したけれど、大統領選出馬を表明することはなかった。で、結局、ものごとはプーチン大統領再登場に向けて次第に渦を巻き始めている感じ。このままメドベージェフ大統領がレームダック化すると、アメリカならまだしも、ロシアのように国の諸方に不安定要因を抱えた国ではタガが外れた状態になりかねない。そうなるのを防ぐためには、大統領選を前倒しするのが一番いいのだろうが。

まあ、でも考えてみると、今のロシアはブレジネフ時代のソ連、石油危機で油価があがってほくほくしていた頃、しかし党幹部の道徳は地に落ちていた頃のソ連に酷似している。エリツィン時代あれだけの混乱を味わいながら自由化への道を試したが、結局企業民営化のための人材も足りず、他方では貧しい大衆を養わっていくために、国家資本主義的な経済運営に戻らざるを得なかったのだ。プーチン氏は大統領になっても、アメリカからは冷たくされるだろうし(これまでプーチン氏自身がアメリカに盾つくことが多かったため)、国内では常にブレジネフに例えられるだろうし、彼が党首を務める与党「統一」の権威も非常に低い。

となると、国をまとめていられるかどうかわからないというリスクを冒してまで、大統領に返り咲きたいと思うのだろうか?

と僕は考えるのだが、ロシアの現実はプーチン氏の手に力が集積されつつあることを示している。いくつか最近の出来事を記しておく。

(1)与党の「統一」はその利権体質が国民に嫌われて、3月の統一地方選で得票率を後退させた。党首であるプーチン首相はこの「統一」にテコ入れをはかるため、5月15日には「統一」を核にしてその周囲に諸政党・団体(労組など)を結集した「ロシア人民戦線」を作り、これら諸政党・団体から「統一」の公認候補を出せるようにすることを提案した。そして5月19日までには、120の団体が人民戦線への加入を表明した。もう、ソ連時代の共産党そのものである。

(2)これに対してメドベージェフ大統領の方は、リベラル諸勢力をかき集めた「右派正義党」の強化をはかっている。つまり16日にはロシア第3番目の富豪とされる、ノリリスク・ニッケル社の社長プロホロフが突如、この右派正義党の党首になる用意があると表明したのだ。
この党が12月の議会選挙で議席を得れば、メドベージェフ大統領にとっても大統領選出馬の際の足場になり得る。

という観測があるかと思えば、プロホロフはプーチン首相とむしろ親しいので、リベラル勢力を挙げて、上記の「ロシア人民戦線」にはせ参じてしまうのだろう、という観測もあるのだが。

(3)5月17日付モスクワ・タイムズで有名なアレクサンドル・ゴルツ記者が書いているのだが、国家安全保障会議(米国ホワイトハウスのNational Security Councilに似ているが、あれほどの権限はない。安全保障関係の大臣達だけの閣議のようなものだ)の書記(実質的な大臣)の権限が引き上げられて、「軍その他の力(警察、検察などの『暴力装置』のことだ)を管理する」こととされたらしい。これまでは諜報機関FSBの議長などは個別に大統領と会えたが、これからは書記がその権利を独占することになる。

ゴルツはこの措置の解釈で迷っている。FSBはこれまでプーチン首相が実質的に抑えているものとされていたが、メドベージェフ大統領はこの措置によって、FSBを 自身のために抑えることのできる強力な人物を国家安保会議の書記に据えようとしているのだという解釈が一つ、あるいはメドベージェフ大統領とプーチン首相が協力して清新な人物をここの書記に据えたあと、大統領候補に据えるのだという解釈がもう一つである。後者は、ロシアにそぐわないような気がする。

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