ニヒルな時代 9月のロシア 拡大する格差
ロシアでは、人口の95%以上が農奴だった当時から、大衆とエリートはまるで違うメンタリティーと行動様式を持っていた。農奴制が表向きだけでも廃止されたのは僅か150年前、1861年で、その後スターリンの農業集団化で再び多くの権利を奪われていたから、その爪あとは当然今も残る。
華やかな生活がモスクワで今ひろがる中で、大衆はソ連崩壊直後よりははるかにましな生活になったとしても、相変わらず疲れきって不機嫌で、「知」というものの権威はまったく認めず(つまり自分達の生活がすべてに優先する。当然のことだが)、新しいもの、知らないものを頭から拒絶する。
モスクワの郊外では、金持ちの住む豪邸が並ぶ地区がいくつもある。ここからは、ヘリコプターでモスクワ市の環状線までやってきて、そこからサイレン付きの車列に乗り換え都心のオフィスまで出勤する金持ちも多数いる由。
(郊外のヘリポート。壮大な国民軽視)
そして彼らの子弟は都心の学校まで行かなくてすむように、私立の学校が付近に増えているそうだ。中には全寮制のものもある。こういった特権的な雰囲気で育つこれからのロシアのエリートが、どんな人格を持つことになるのか、想像するだけでもおぞましい。英国のパブリック・スクールのような質実剛健、リベラリズムを根底に置く教育ではないだろうから。
モスクワ音楽院の近くに、エリートの子弟が通うことで有名な公立校がある。ソ連崩壊後は下校時になると周囲にベンツやBMWがずらっと並び、大統領府長官や副首相など有力者の子弟を迎えに来ている。こういったところに子供を入れると、付き合いが大変なのだそうだ。自分の子の「誕生会」というのをレストランでやったりして、それに皆が200ドルくらいもするプレゼントを持ってくるのが普通なのだそうだ。誕生会を主催するのも大変、よばれるのも大変ということらしい。
住宅ローンの金利は11%くらい。これは今のロシアでは低金利である。ただ保証人は月収10万ルーブル(約30万円)以上はないと駄目だというから、大衆に手が届くものでは到底ない。大衆はソ連時代と同じく、ほとんど無料の公営アパートが当たるまで待っている。公営アパートはソ連時代に比べるとほとんど建設されていないので、住宅問題はこれから社会問題化していくだろう。
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.japan-world-trends.com/cgi-bin/mtja/mt-tb.cgi/1279