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世界はこう変わる

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2010年9月18日

天津での印象10:中国における企業経営

中国が高度成長を続けるなか、僕はそれがどれだけ長続きするのか、どれだけ真正の成長力を備えたものなのか、まだ半信半疑でいる。特に中国の製造業が自力で輸出能力を高めていけるかどうか、関心を持っている。それは、①中国では地方(省)ごとに自動車などの製造業が林立していて(党・地方政府幹部がそう望む)、全国市場というものがなかなか成立しにくいがゆえに、技術開発をしていくだけの資本力を持てないのではないか? ②中国の大規模製造企業は国営の性格が強く、共産党官僚のコントロールも受けるようで、そのために経営が官僚的になるのではないか? という疑問に基づく。
そこで今回、中国企業の中堅幹部数名から話を聞いてみた。明快な結論はもちろん出ないが、真実は右の2つの疑問点ほどひどくはないが、さりとてすべてシロというわけでもないようだ。以下、聞いたところを列挙する。

(1)中国の企業は全国規模でビジネスをできるか?
技術的優位を持つ製品なら、全国ベースでビジネスを展開できる。但し集金体制をしっかりしておかないと大変なことになる。中国の企業や韓国の企業は払いが悪いからである。全国ビジネスを展開するにあたり、制度的な障害はない。たとえば広州産ホンダは、トヨタの本拠地天津で自由に売っている。だが天津市の公用車にはトヨタが優先して購入されるなどのことはある。

(2)国営企業優位
中国では、民営企業は銀行融資を受けにくい。都市銀行の融資を受ける場合でも、人民銀行(中銀)の審査を通っておく必要がある。中国では全銀行金融額に占める民営企業の比重は、一貫して下がってきた。また中国では「カネを貸す馬鹿、返す馬鹿」と言われるが、都市銀行による返済取り立てには厳しいものがある。
(今回聞いたところでは、共産党による企業経営への干渉については、「労働組合をかならず作ること」を求めてくるくらいだそうで、いずれの企業も市場原理に則って厳しいビジネスを展開しているように見えた。それに、企業幹部が共産党幹部を兼ねることも多く、その場合、企業経営を素人党員にかきまわされることもなくなる)

(3)日系企業については、次の点が指摘された。
①電気機器生産においては、品質管理がかなり問題。
②企業間の賃金格差が大きいために、労働者の流動性が高く(賃金が高い方に移ってしまう)、企業への忠誠心醸成とか仕事の動機付けができない。

③IT分野においては、日本語ができる青年が日本のソフト会社の下請けとなって働く例が増えている。そして日本企業のためのコールセンターを代行している企業も増えている。
④日系ゼネコンも進出しているが、受注できるのは日系企業の案件に限られているようだ。

⑤日本の中小企業には、中国人の甘い言葉に乗せられて投資したものの、製品を輸出するためのライセンスを取得するのが非常に大変だったり(賄賂は少なくなっているが)、日本から派遣された支社長が中国に無理解だったりのケースがある。
⑥最近では、中国人元留学生が中国人の家族を日本に残し、中国の日系企業に単身赴任するケースもあるそうだ。

⑦原材料入手で困っている日系企業はなかった。日系企業は支払いが几帳面なので、中国企業は進んで売ってくれるのである。
⑧利益の海外への送金に問題はない。中国側は税金をしっかり取ることで満足している。


コメント

投稿者: 松宮 正浩 | 2010年9月20日 16:48

     中国の失われた35年間

私は過去10年間、中国の家電製品企業に対する技術指導を実施してきましたが、俗に言うところの「日本より30~40年は遅れている」ことを常に実感していました。

中国は戦後の混乱から文化大革命を経て、鄧小平の「改革開放経済」戦略による経済特区(シンセン市等)に外資を導入するまでの35年間(1945~1980)は産業が全く進展しなかったのですが、その間、日本は奇跡の発展を遂げ、1985年のプラザ合意による円高政策の結果、企業は雪崩を打って中国へ進出し、今日の日本と中国の産業構造に至ったことは周知の通りです。

人類は石器の時代から青銅器の時代を経て鉄器の時代に至るのですが、中国が外資を導入した頃の産業はすでに鉄器の時代に突入しており、青銅器の時代が欠落してしまったため今日の「モノづくり(品質)」に対する最大の阻害要因となっているのです。

つまり、中国の電気産業では「電球、ヒーター、モーター」の時代から、いきなり「IC、デジタル、コンピューター」の時代となって、青銅器である「真空管、トランジスター、アナログ」の時代を経験しておらず、全ての物理現象の基礎である「アナログ処理」に対する知識不足の結果、技術の本質が理解されていないため「模倣主義」に陥っています。

これらを背景に、我々のような高齢技術者でも、中国では十分に活躍できる場が存在するのであり、中国の「失われた35年間」を取り戻すために、日本の定年退職技術者を活用する「組織的な取り組み」が必要と思っています。

(河東より:小生もこれまでは、中国人の生活が豊かになって本当に良かったと思っていましたが、日本の技術が流出したあげく、日本の青年が職にありつけなかったり、領土要求を居丈高に暴力で通そうとするようになってしまうのでは、そろそろ考え直して、投資先を別のところに変えていくべき時だと思っています)

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