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世界はこう変わる

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2010年9月18日

天津での印象7:中国のガバナンス

鼓腹撃壌か太平天国か――中国のガバナンス
(1)中国に滞在してよく思うのだが、「権力」の存在を感ずるのは北京ぐらいのものなのだ。古来、このように広い国を皇帝と官僚が中央集権で治められるはずもなく、権力の存在ぶりはいつも曖昧なもの(amorphous)だったのでないか? 経済が回っている限り、現場の秩序は現場が差配して維持していく。中国の古典に言う「鼓腹撃壌」の状態だ。「みんな、政治や外交に関心ないのです。共産党幹部の名すら知らない」という状況だ。
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(保育園の帰り。平和そのもの)

(2)中国社会の安定は、経済が成長していることによる。これは、一人の強力な指導者に多くを依存することなく、できるだけ多くの市民をstake-holderにすることによって存続する政権なのだ。共産党独裁と言うよりは、いわば戦後の日本によく似て、「多数による共謀」とでも言おうか。
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(海江にあがる花火)


(3)だが暮らしがきつくなってくると、今の日本と同じくものごとは逆に回りだすだろう。その時人々は政府を非難し始める。だが中国の場合、遠い北京の政府を頼りにするより、自力で苦境を脱しようとする、つまり治安が悪くなったり、地方の権力が強化されたりといった動きになるのでないか?
「共産党一党独裁のままでは駄目だ、経済が悪くなったら政権交代で国民の不満を吸収することができないし、不満が共産党や政府に集中して治安も乱れる。と皆思いながら、(急に民主化すれば、これもまた社会を不安定にするので)どうしようもないのです。歴史には、そうなることが分かっていながら、悪い方向に転がっていってしまうことがあるのです。」――中国の市民はけっこう、危機意識を持っている。

(4)ものごとを見る目のある市民は、今の経済成長がいつまで続くのか、不安をもって見てもいる。「中国は一人っ子政策のために、将来の社会保障負担が大変になるだろうですって? でも私たち中年世代はそれをちゃんと見越して、民間の年金保険、医療保険にはいっているのです。でも本当に、これで大丈夫だろうか?経済がいつまで好いのか不安、と思うときありますよね」ということを言う者もいた。

(5)他方、ものごとを割り切って考える市民も多い。中国史上、外国から被害を受けたことは学校で詳しく習っていても、外国のおかげで何かがうまくいっていることはなぜか不思議に教えられない。新幹線が純国産であると思い込んだり、米国への輸出に経済の多くを依存していることを認識せず、ただ表面上の経済成長を威に借りて米国と張りあおうとしたり、である。中国の経済成長は輸出(そして輸出の半分は外資系企業がしている)と建設に依存するところが大きい。中年以上の知識層はそれを結構知っている。だが、青年層をはじめこれを知らず、経済成長を空気のように当然視する者もまた数多い。経済が不調になると、彼らはその原因を冷静に分析せず、外国を犯人にしたてあげることもあるだろう。

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