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世界はこう変わる

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2010年4月22日

コンプライアンスとはそもそも・・・

先に、外国で商売するためにはもっと「ワル」にならないと駄目だと書いた。「コンプライアンス」も、日本ではある日突然「天の声」であるかのように遵守されるようになった感があるが(「検定」までできている)、天の声にもいろいろあるので、どこらへんまで守れば大丈夫なのか、少し歩留まりを調べてみようではないか。国内諸組織作成の資料を参照している。

●そもそものきっかけは1972年、米国でニクソン大統領を辞任させることとなった不正事件、「ウォーターゲート事件」にさかのぼる。この時、米証券取引委員会の調査で、米国企業の海外での大規模な賄賂行為が発覚したが、当時国内の政治家・公務員に対する企業賄賂を取り締まる法律はあっても、海外賄賂を直接規制する法律がなかったことから新法を求める声が高まったらしい。

●その時1976年に起きたのがロッキード事件。民間旅客機製造で出遅れたロッキード社が新鋭機トライスターを、賄賂つきで諸外国に売り込んだのだ。日本ではこれのあおりで、田中角栄前首相が逮捕されている。
このような行為は外交問題を引き起こしかねないという正論と、そしておそらくロッキードの競争相手の圧力もあったろう、1977年には米議会で「海外腐敗行為防止法(FCPA:Foreign Corrupt Practices Act)」が成立し、米国人は外国で贈賄することを明文で禁じられてしまった。

この法律は厳しいもので、違反が認められた場合、当該法人に巨額の罰金が科せられるだけでなく、役員や従業員など、関係した個人も罰金または懲役刑、もしくは両刑に処されるのだそうだ。(その後の改正で、日本を含めた外国の企業・個人によるアメリカ国内での贈賄行為にもこの法律は適用され得ることになった)

●米国企業はいわば自分で自分の手を縛ってしまったわけで、そうなると欧州や日本の企業の手も縛っておかないと、とても商売にならない。そこで米国は国連やOECDを動かし、1997年には33カ国が加わる外国公務員贈賄防止条約を制定させるに至った。

日本はこれを受けて1998年、公正競争防止法を改正、外国公務員贈賄罪を導入して、条約に国内法上の効力を持たせた。外国公務員に不正の利益を供与した場合は、企業に最高3億円、個人に300万円以下の罰金または3年以下の懲役が科されることになっているのだそうで。

●そして2000年には贈賄も含めてマネロンなどまで広く国際組織犯罪を取り締まる、国連腐敗防止条約が制定される。日本はこれに国内法上の効力を持たせるために2001年、「不正競争防止法」の一部を改正、外国でその国の公務員に贈賄をした日本国民は、帰国後日本国内で処罰されるようになってしまった。

●そしてこれにまた輪をかけたのが、2001年のエンロン不正事件。これで「コーポレートガバナンス」がやかましく言われるようになり、米議会はPublic Company Accounting Reform Protection Act of 2002、通称サーベンス・オクスリー(SOX)法(日本では普通、企業改革法と呼ばれている由)を採択した。

――ーまあそういうわけで、「コンプライアンス」とか「企業ガバナンス」とか、日本の企業が江戸時代から家訓として伝えてきたことを横文字にして、金科玉条のごとく守っているわけだが、最近ダイムラーやHPの海外不正事件が報じられているように、欧米の企業の中には守らないものもあるようだ。

そして開発途上国の大臣たちには、「日本企業は二言目にはすぐ『コンプライアンス』、『コンプライアンス』でうるさくてかなわない。そんなことは言わない中国の企業の方がよっぽど話がしやすい」と言って、これ見よがしに中国に入り浸っている者もいる。

こう書くと、僕がいかにも「コンプライアンス」破りを奨励しているように見えるかもしれないが、そこまでは言っていない。特に現在のようにオバマ政権が5年で輸出倍増を標榜して頑張っている時には、外国企業の抜け駆けに特にきびしい目を光らせていることだろう。

僕が言いたいのは、いろいろな世界のルールでも、日本だけが割を食うようなやり方はやめ、改善に向けて音頭をとっていこうよ、ということなのである。商売の枠組み、勝負の土俵は、できるだけ自分の事情に合ったものであるべきなのだ。

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