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世界はこう変わる

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2009年12月29日

ハイパー・インフレがソ連で囁かれるようになったのは、実際の2年前

(今、年末の大掃除で机の上のメモを整理中。それでアップロードが増えています)
ソ連はすべての価格を国で決めていた。牛乳、肉など手厚い政府補助金で、低めに維持していたのである。それが石油価格の低下で財政が赤字に陥り、価格補助金を維持できなくなった時、先日亡くなったガイダール首相代行が1992年1月に国定価格を一気に廃止したのだ。価格はそれからの2年間で60倍に跳ね上がった。ハイパー・インフレである。

それは本当に見ていられない、可哀そうな光景だった。年とった人たちが、マイナス10度以下の寒天に並んで、靴下などの不用品を手にぶらさげて売っていたのだ。
(熊野洋「遥かなる大地」草思社より http://www.amazon.co.jp/%E9%81%99%E3%81%8B%E3%81%AA%E3%82%8B%E5%A4%A7%E5%9C%B0%E2%80%95%E3%82%A4%E3%83%AA%E3%83%A4%E3%83%BC%E3%81%AE%E7%89%A9%E8%AA%9E%E3%80%88%E7%AC%AC1%E9%83%A8%E3%80%89-%E7%86%8A%E9%87%8E-%E6%B4%8B/dp/4794211481/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1262017349&sr=1-1

だが、「ハイパー・インフレがやってくる。ハイパー・インフレしかない」という言葉は、もうその1年前の学会で囁かれていたのだ。ソ連という計画経済社会は、企業でさえ現金・銀行預金を自由に使えない社会だった。利益はすべて上に吸い上げられて、赤字の企業救済に回されていたのだ。

ところが経済活性化を進めるゴルバチョフは、確か1988年頃だと記憶するが、「協同組合」形式で計画経済に服さない、一種の民営企業を設立することを認めたのだ。これで国営大企業の社長達は、裏金作りにこの「協同組合」を利用し始める。協同組合を夫人に作らせては、ここに大企業の製品を安く卸し、高く売らせて差額を着服したのである。このことと、労働者の賃金が野放図に上げられたこと(他の企業に移るのを防ぐためだった)で、極力市場から遠ざけられていた現金が、市民のタンスにあふれるようになり、これで経済学者達は、「このままではハイパー・インフレがやってくる。ハイパー・インフレになるしかない」と囁くにいたったのである。

国債が積み上がる日本の現状は、当時のソ連とはまた一味違うが、かなりのインフレへの危険は秘めている。僕はまだ大丈夫だと思っているが、津波と同じでどうなるかわかったものでない。

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