Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
ChineseEnglishRussian

世界はこう変わる

Automatic Translation to English
Automatic Translation to English
2009年11月21日

ロシアは土地再開発で中国に負けたーーのではないか?

世はまさに「中国が日本をGDPで抜き」、「米国に代わって世界に覇をとなえる」といった話で持ちきりだが、僕はまだ中国の経済が本当にどんどん伸びていけるのか半信半疑でいる。

中国は1979年頃から農業と、農産品をベースにした軽工業を自由化して、経済改革をスタートさせた。ほぼ同時に大慶油田の石油を輸出しては、プラントなど輸入できるようになったからラッキーでもあった。だがそれでも、当時の我々にとっては、中国製品と言ってもごく安いパジャマぐらいしか記憶にない。

1989年天安門事件で改革は一時挫折したが、鄧小平は外国資本をどんどん入れて経済近代化を速める政策を取り、それは1993年から具体化した。台湾、香港、華僑の資本、次いで日本、西欧、米国の資本がなだれ込んで、上海周辺などはこれら諸国の企業が作った工場で鉄道沿線が埋まる状況を呈した。

部品は日本などから持ってきて、この工場で低賃金で組み立てては西側に輸出し、大量のドルを手に入れた。急速な発展にはいつも資本が必要なのだが、中国はこのいわゆる「原初蓄積」を輸出で成し遂げた(ちなみに言えば、産業革命時の英国も輸出依存度はこの頃の中国なみに高かった。英国も海外の富を国内に持ってきて、発展のための資金とした国なのだ)。

中国人はこのドルを元に替えて、国内で回し、殖やし始める。資金は特に、土地の再開発、そしてインフラ投資に大挙して向かった。こうして、中国のGDP伸び率のうち、不動産・建設部門の伸び率が半分を占めるに至る。中国では土地はすべて国有・集団有の建前だから、開発の初期の利益率はものすごく高いに違いない。つまりそれだけ成長率が高くなる。
08年8月~09年1月 大観 北京 オデンセ 060.jpg
(08年 北京の大通り)

こうした目でロシアを見ると、一つのことに気がつく。ロシアは中国ほどには、土地の再開発に依存した経済成長をしていない。なぜなのだろう? ロシア経済の成長は、工業でも再開発でもなく、原油輸出収入の急騰とその収入を使ってのサービス産業の拡大に依存している。

ロシアで土地再開発の規模とテンポが中国ほどではないのは、土地は国有という建前は残っていても、90年代の大混乱の結果、実際の地権者が二重、三重に存在するに至ったために、再開発が進まないのか(例えばモスクワの国際空港シェレメチェヴォのターミナルはもう20年近くも建て替えができないでいるが、このあたりの地権は国、モスクワ州、モスクワ市、そして民間の間で争っているからだ)?
それとも人口が中国より少なく、需要が足りないために、都市化が進んでいないだけなのか? 

RIMG0084.JPG
(08年 モスクワ郊外建設現場)

ロシアは石油価格の波間に浮き沈みを繰り返す、くらげのような経済のままでいる。膨大な石油輸出収入が、住みやすさの向上につながっていない。もっとも、日本も高度成長のわりには、さして住みやすい街になっていないけれど。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.japan-world-trends.com/cgi-bin/mtja/mt-tb.cgi/918