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世界はこう変わる

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2009年10月30日

「米中協力」で日本はソデに?

最近米国のゲーツ国防長官が中国を訪問し(日本を訪問した後だ)、徐才厚中央軍事委員会副主席との会談で、制服組トップ同士の相互訪問、軍艦同士の不測の事態回避に向けた仕組みを強化する方針などで一致した。

このニュースに色めき立ち、「すわ米中はG2と言っているだけでなく、軍同士の協力まで始める。これで日本は1巻の終わり」と言わんばかりの人たちがいるようだが、ちょっと待ってくれと言いたい。それは、事実誤認に基づいて過度の反応をして自分の立場をかえって悪くし、結局相手が当初考えてもいなかった方向へ相手を追いやってしまう、典型例ではないですか?

同盟国、あるいは友好国でさえなくとも、軍・軍人の間の交流はある。米国は以前からロシア、中国と軍交流・協力をしているし、日本自衛隊もほかならぬ中国軍と交流を始めた。自衛隊は1990年代後半からは、ロシア軍とも活発な交流をしてきた。

だから、軍事交流・協力をすることは即同盟関係、というわけではないのだ。そんな「交流」は偽善だと言うかもしれないが、もっと切実なものだ。それは、(現場の)軍人ほど平和を望む人種はいないということから来ている。戦争になれば真っ先に死ぬかもしれないのが自分かもしれないからだ。余計な紛争はできるだけ避けたい。

で、余計な紛争、つまり政治的必然性がないのに、ある日ふとしたことから始まる偶発的衝突というものは恐怖、相手を知らないことからくる恐怖に発していることが多い。「こいつは何をするかわからない。危ないから殺してしまおう」というところから偶発的衝突は起こる。

交流して相手の気心も知っていれば、恐怖から起こる偶発的衝突は避けることができるだろう。そう思うから、軍事交流・協力をやっている。

そして「米中は『G2』で世界を牛耳るつもりでいる」、などと思わない方がいい。そう思って日本が身を固くすれば、米国は日本を見限って本当にG2になってしまうかもしれない。実際には、米国はこれから中国と丁々発止とやっていくにあたっては、日本に最も支えてほしいところだろう。

今は日本側が「アメリカに捨てられるのではないか」と思い、米国側は「日本は米国をアジアから閉め出すつもりではないか」(そんなことができるはずがないだろう)と怒っている、そんな老年夫婦の危機のような構図になっている。

マスコミの一言で踊り出すのは危険だ。戦前、盧溝橋での銃声に挑発されて、戦争を始めたのに似ている。今、危ないんだヨ。

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