Japan and World Trends [日本語] 日本では自分だけの殻にこもっているのが、一番心地いい。これが個人主義だと、我々は思っています。でも、日本には皆で議論するべきことがまだ沢山あります。そして日本、アジアの将来を、世界中の人々と話し合っていかなければなりません。このブログは、日本語、英語、中国語、ロシア語でディベートができる、世界で唯一のサイトです。世界中のオピニオン・メーカー達との議論をお楽しみください。
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世界はこう変わる

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2009年5月 8日

09年ソウルの感想ーー先進国の定着

連休の時、ソウルで「アジアにおけるポップ・カルチャー」というテーマのシンポジウムに出てきた。
ソウルには25年前初めて来て以来、節目毎に数回来ている。
25年前は韓国が高度成長を始めた頃。ソウルの街には今の北京の胡同のような裏町がたくさん残っており、ちょっと入り込むと納豆売りの声が聞こえてきそうな懐かしさが感じられた。でも、経済担当の役人達の鼻息と使命感は非常に高く、街の大通りの渋滞はどうしようもないほどのひどさで、成長の活気がひしひしと感じられたものだ。
(もっとも今でも、高級ホテルなどが立ち並ぶ大通りのすぐ裏は普通の住宅街で、東京で言えば王子・大塚あたりの生活感覚が漂い、通行人にも子供、家族連れが多くなる)

「先進国」として定着
その成長を確認するかのように1988年、ソウル・オリンピックが開かれてから、もう20年も経ったのだ(「そしてこの僕自身も、その間に老いたのだ」---プーシキン)。
その間に韓国は民主政治を定着させ、世界的大企業をいくつか作り上げ、その進んだ社会の有様を「韓流」と呼ばれる文化の輸出で世界にも刷り込んだ。
今では渋滞ははるかに緩和され、大通りは片側だけで4車線も5車線もある。地下鉄網は発達しており、広軌の利点を活用してその車両は幅が広い。対面する座席の間に3列、ゆったりと並ぶことができる。日本の電車はなぜか昔より狭くなり、つり革にぶらさがる人達の背後にもぐりこむのはもうきついのだが。

1年前の反米(牛肉)デモも、今回話しを聞いてみると、北朝鮮からのスパイや野党がしかけたものと言うよりも、「そんな連中でもどうしようもないほど強い力で」下から自発的に盛り上がったものだという。
それをそのまま信ずるわけでもないが、市民の権利意識、政治意識が高度なものになっていることは確かで、これはいわゆる「市民社会」がもう韓国に定着していることを示すのだ。
つい数年前までは、政府とか大国とか、いわゆる「お上」に類するものには過度の過敏さを見せる人達が多かったが、今の社会はもっと自由な(その代わり、自分の面倒は自分で見なければならない)ものになったようだ。

そして「国民国家」も確立
ノムヒョン政権の頃の要人には、(米国の軍事力・経済力に庇護されてできた)韓国の国家としての正当性を疑問視し、北朝鮮への接近に自分達のアイデンティティーを見出そうとする者も見られた。
現在の李明博大統領は、北朝鮮にすり寄りもせず、敵視もせず、韓国経済と外交の建て直しに専念する姿勢を示している。これは、韓国を当面、完結した国民国家・主権国家としてとらえる立場である。

「北朝鮮は何もできませんよ。我々の方が強いのです。北朝鮮はいろいろ仕掛けてきますが、本当に危ないことはしかけてきません」ということを言う学者がいた。僕も、これに賛成だ。
そうした中で、米国に対するものの見方も当然、相対的になっている。ある韓国人は、米軍はまだソウル市内に駐留しているんだっけ、という僕の質問に対して、今まであまり考えていなかったかのように、「そういえば、米軍はまだソウルにいるのかな?」と眉をひそめた。

そして気がついてみれば、韓国は世界でも大きな存在感を持った国となっていたのだ。それは①国連事務総長に韓国人がなっていること、②韓流文化が世界的に高い評価を得ていること、③国際シンポジウムや国際テレビなどにおいて韓国知識人が積極的に発言をしていること、④その発言がこれまでのように自国のみについてのものからアジア全体、世界全体についてのものになってきたこと、そしてもちろん⑤リスクをいとわず果敢な投資・販売攻勢を続けたあげく、半導体・自動車・家電などで日本企業を時にしのぐ世界的企業をいくつか作り上げたこと、などによっている。
脱帽だ(日本がだらしなさすぎたのダヨ。役人はたたかれて縮こまり、政治家はアバウトに過ぎ、ビジネスマンは企業内役人のようになってしまって)。

それでも残る事大主義
横から見ていると、韓国の青年は女性も含めて随分「個」主体になってきた感じがする。日本と同じ、あるいは日本以上と言おうか。
だが話を聞いてみると、一概にそうとも言えないようなのだ。例えば就職においては公務員、国営企業指向が強く、それは不況のせいばかりではなく「周囲の評価を気にしている」からなのだそうだ。ああ、安心した。

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(これまでとは違う場所に新築された国立中央博物館の威容)

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(その内部。これからはソウル見学で欠かせない場所。因みに日本文化の大源流である百済や、伽耶の遺品や、日本人の美意識にも強く訴えかけてくる韓国白磁を、ここで見ることができる)

その他、今回気がついたことをアット・ランダムに並べておこう。

★月曜の朝、ラッシュの後の地下鉄では、乗客の半分が眠っていた。ソウルでは地下鉄が走っていても携帯が通ずるのだが、携帯に見入っている者もほとんどいない。
電車で乗客が派手に居眠りするのは、知っている限り日本と韓国くらいのもので、白人はスタミナがあるのか、泥棒が怖いのか、あるいはプライバシーである寝顔を他人に見られたくないのか、公共の場で居眠りをあまりしない。
ああ、ところで駅のトイレでは「個室」のほうに行列があったのだが、これはどういうことなのか?

★世界の国の電車で、つり革があるのは日本、中国くらいで、結構少数派なのだが、ソウルの地下鉄もつり革がある(東アジアを「つり革文明圏」とでも名づけようか?)。そして日本の地下鉄に比べると広告が少ない。何と言っても、吊るしの広告がないことが日本の電車とまったく違うところで、そのために雰囲気がゆったりする。週刊誌のおどろおどろしい見出しが見えないだけでも、心が休まる。

★ソウルのアパート、ないしマンションは、日本のものより大体広いはずだ。そしてバルコニーにも窓がついているので、干してある洗濯物が見えない。それはマンションの高級感を高めるのですね。

★Korea Houseと言って、伝統的家屋で昔の宮廷料理(これは焼肉とか一般の韓国料理についてのイメージとは違って、高級・洗練の極をいくものだ。日本食以上のところがある)を供したあと、伝統芸能を見せてくれるところがある。
まあ、舞も音楽もすばらしいものがある。舞は日本のように摺り足でなく、むしろペルシャあたりの舞を思わせるところが面白い。
楽器は中央アジア・ペルシャの方から来たものが多いが、日本の琴と同じ形の楽器を、弓でのこぎりを引くようにして弦を弾き、チェロのような音を立てるやり方は初めて見た。         河東哲夫 (了)

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