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世界はこう変わる

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2009年1月18日

夕暮れのヨーロッパ

(もう1年前になってしまったけれど、ロンドン、パリ、ブラッセル、ボンと回った08年1月末旅行のことについて、随想を書き残しておく。今まで忙しくて、メモが机の上で埃をかぶっていたのだ。
この旅行での表向きのこと、つまりEUは超国家なのかどうかについては、当時の報告書http://www.akiokawato.com/ja/cat3/eu_1.phpを御覧いただきたい)

ヨーロッパの落日
ヨーロッパと言えばもう、第1次大戦のあたりからシュペングラーの「ヨーロッパの没落」など、もっぱら退場ムードなのだが、その割には一向に世界の桧舞台から退かない。

僕がヨーロッパに初めて行ったのは、今からもう35年前。
ああ、あの頃の西欧は輝いて見えた。人は小ざっぱりしていたし、街もきれいだった。植民地を搾り上げて豊かになった国もあったろうが、西欧諸国の国内では格差が小さかったから、アジアやアフリカの貧困、そして当時の日本の猥雑さからは隔絶した、自由と繁栄の花園のように見えたのだ。

今の西欧は、随分格差が広がった。移民が増え、その移民との格差が目立つのだ。
インフラも古くなった。30年前は最新式だったパリの地下鉄(車輪の代わりにタイヤで走る)も、今では戦前のものかと思うほど古くなった(性能はいいけれど)。

地下鉄と言えば、日本と同じく改札口には横棒が出ているのだが、以前はその上を飛び越えて無賃乗車する手合いも多かった。今回見て見ると、なんとその横棒の上は観音開きの自動扉になっていた。飛び越えると扉にぶつかり、あえなくハエのように地面に落ちるしかけだ。もっとも今度は、悪いやつらはプラットホームからの出口で待っていた。出口が向こうから開くと、こちら側からもぐりこんで無賃乗車をするのだ。

ロンドンの新築ビルは、最近安普請が多い。まるで、ソ連崩壊後のモスクワやウズベキスタンのタシケントで建てているような、薄っぺたい悪趣味のビルばかりだ。そして、街路に風が吹けば埃とゴミが舞い上がるような感じとなり、受ける印象は随分がさつなものとなった。

今の西欧は全体に、倹約を通り越してケチケチ路線。僕は日本でホンダのFitに乗っているのだけれど、ロンドンでもFitが沢山走っている。Jazzという名前で。ベンツまでがFitのサイズのものがあり、そんな小さくても後部座席に3人も腰掛けて走っていく。

パリの国際問題研究所長は言っていた。「今はまた、1967年の学生騒動時代のように、社会のすべてに抗議する風潮が高まっている。だが1967年と比べて違うことは、67年は我々は豊かになっていた時代だった、今は我々は貧乏になっているということだ」と。
Copyright ©河東哲夫


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