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世界はこう変わる

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2008年11月 3日

ロシア経済もサブプライム危機に巻き込まれるのか?

産油国ロシアで金づまり? 
                                              2008年11月3日
                                                   河東哲夫

世界中から搾りたてたオイルマネーがあふれているはずのロシアで、深刻な問題が起きている。
一言で言えば、こういうことだ。

つまり、これまでロシアはオイルマネーの大半を税金で取り立て(一部は予算に使い、残りは積み立てて外貨準備とする)、国内の企業活動はM&Aであれ、建設投資であれ、消費者ローンであれ、欧州の資本市場から短期資本を安く借りて賄っていたのだ。
ロシア人の貯蓄率が低く銀行に資金が集まらないことも、欧州の資本市場への依存性を高めた。

欧州で借りた金は返さなければならないが、期限が来ると同額をまた借りては、それで前の借金を返済する方式でうまくやっていたのだ。ところがサブプライム問題で猜疑心を募らせた欧州の銀行達は、ロシアにも殆ど貸さなくなった。

8月のグルジア戦争も外国投資家のマインドをすっかり冷やし、ロシアの株式市場から短期の外資が大量に引き上げた。ロシアの企業は株式発行で資金を集めることはあまりしないので、株価の下落もその点では響かない。だが銀行からの融資は自社株を担保として行われることが多いので、銀行は企業に金を貸さなくなった。
また大銀行も、不良債権化を恐れて中小銀行に金を回さず、こうしてロシア経済は金づまりとなった。オイルマネーはもっぱら政府、中銀、そして大銀行で停滞している。

こうして、ロシア経済の急成長を演出してきた建設、消費者ローンは大幅に縮小し、生産企業も次々に生産縮小の連鎖反応を起こしつつある。これまでコネに負けて余剰人員を雇用してきた企業は、むしろチャンスとばかりにリストラを始め、失業率を高めている。

これまで原油価格高騰を背景に高めにはりついていたルーブルは、8月以降、中銀がドルを大量に売却してもなお、15%強下落(対ドル)した。

ロシアの銀行・企業等は年末までに400億ドルを西側金融機関に返済しなければならないが、ルーブル下落はその負担をどんどん膨らませている。
現在、ロシアの民間対外債務は約5000億ドルで、外貨準備額にほぼ等しく、GDPの50パーセント相当だ。来年はさらに800億ドルの返済が必要である。
またロシア人の個人預金は5兆ルーブル強あり(1850億ドル相当)、ルーブルからドルへの転換が進められると、外貨準備も随分苦しくなってくるだろう。

ただ個人預金の全てがドルに転換されるわけでもない。
またロシアは、3000~7000億ドルの在外資産を持っていると推定されている。
外貨準備は約5000億ドルあって、輸入の20ヶ月分ほどに相当する。
だから、当面の返済能力は十分だ。対外債務滞納(デフォールト)に陥り、ルーブルが3分の1、4分の1にも暴落し、株価は半年で8分の1に暴落した1998年8月のような破局にはなかなかなるまい

あとは、原油価格低落がどのくらいの期間続くか、そして政府による救済支出がどこまで狙った効果をあげるかが(つまり横領とか官僚的な非効率とかが救済措置の効果を減殺する可能性があるのだ)、当面のロシア経済の運命を決める。

政府は数兆円相当規模(発表が相次いでおり、厳密な集計は不可能)の資金を貯蓄銀行(ズベルバンク)、対外経済銀行、そしてガスプロム銀行に融通し、中小の銀行にそれが回ることを期待している。
だが10月末現在、これら3行はこの資金を自ら運用してしまい、中小の銀行に回そうとはしていない。貸せばそのまま焦げ付くことを恐れているのだ。

ルーブルが下がったため、外国からの直接投資にとっては現地コストは下落した。しかし部品・設備を移入してロシアで製品を組み立てるやり方は不利となる。
また消費者ローン供与が減少すること、輸入インフレで生活コストが上昇することから、消費は当面不活発に推移するだろう。

これからはロシアのオリガークの間で、資産の大幅なリシャッフルが行われる情勢にある。ロシアの企業からは資本参加、融資の要請が相次ぐだろうが、日本人がロシアでの荒っぽいビジネスに対応できるわけもないので、新規の直接投資を含めてしばらく様子を見ているのが適当である。

以下、今年の5月以降の経緯を詳しく記しておく(出所の殆どはロシア、第三国のマスコミ記事)。

「サブプライム問題が及ばないロシア経済」――7月までの錯覚○7月後半、モスクワ株式市場が急落するまでは、ロシアはあたかもサブプライム問題とは無関係であるかのような自己陶酔に耽っていた。
外銀でさえ5月には、「ロシア中銀はインフレ抑制のため利子率を上げようとしている」として、ルーブル購入を顧客に勧めていたのである。
○実際、イグナチェフ中銀総裁は、ルーブルを数ヶ月以内に切り上げる可能性を示唆していた。
6月にはロシアの製鉄最大手セヴェルスターリが、米国の鉄鋼メーカーEsmarkを12.5億ドルで買収し、2.5億ドル投資して北米一の圧延工場にするつもりであると言明した。

錯覚の蔭で実体経済の変調(6,7月)
○だが自己陶酔の蔭で、実体経済にはオランダ病(資源国特有の症状。自国通貨のレートが上がりすぎ、国内での生産活動の多くが競争力を失う)の症状進行が見て取れた。
 7月のGDP成長率(対前年同期比)は、予想の4.9%(年率換算)より低い3.2%のみに終わった。
 工業生産は、軽工業、素材、機械、建材を中心に不振である。輸入品に価格でも負けるようになったのだ。

○外国からの資金流入も減少気味となっていた。1~6月、外国からの直接投資は111億ドルで、昨年同期比30%減。間接投資を合わせると465億ドルで、昨年同期比23%減となっていたのである。

新規経済政策(6,7月)
6~7月にはいくつか新たな経済政策が開始された。ただ、これらが現在の困難な局面を経ても維持されるかどうかはわからない。

○一つは、中小企業振興政策。
企業設立許可取得に要する時期を短くしたり、申請窓口を統合したり、検査機関による衛生検査等の類を年70時間に限ったり、という政策が取られた。
ロシアでも中小企業は沢山あるが、サービス業が殆どで、もっと工業で中小企業が増えないと、経済に活力がつかないだろう。

○二つ目は、新規油田開発投資振興のための減税措置
7月、プーチン首相は石油・ガス各社長を集めた会議で次の言明を行った。
①石油生産低下を回復するため、減税する。
業界に毎年50~60億ドル残るようにする。
②本年、原油生産量低下しているが、年末までにカバーせよ。
   ③油田・ガス田開発ライセンス受領後の土地取得等手続が、これまでのように何年もかからないようにする。地下資源管理庁がちゃんと監督すれば十分だ。
④原油輸出代金はルーブルで受けて欲しい。

ばらまき政策への傾斜(5,6月)
議会選挙、大統領選挙を前にした昨年は、多くの「ばらまき政策」が行われた。
それらは選挙目当てであると思われていたが、5月にメドベジェフ大統領が就任した後も、大統領から首相になったプーチンは多くの気前良い支出を発表し続けた。
メドベジェフ大統領がインフレ退治の重要性を強調し、予算教書で2011年までに6%にインフレ率を下げると言明しているにもかかわらず。

○5月にプーチン首相は、2010~2013年の運輸システム整備計画を承認した。
総額13兆ルーブル以上で、うち4.7兆(約20兆円)を予算から支出する。
これにより1.7万kmの道路建設・改修。100の滑走路。海港能力を4億トン/年に。そして、3000kmの鉄道を新たに建設する。

○6月にプーチン首相は、国家予算で給料をもらっている要員(まあ、公務員)の給料を12月から30%上げる旨表明した。本年2月彼がある場で述べたところでは、ロシアの労働人口の3人に1人は国家予算から給料を得ているそうなので、大変な出費になる。
プーチン首相はインフレ退治の重要性を認めつつも、「ロシアにはロシアの事情がある。何とかやり方があるはずだ。このくらいならインフレにはならないと中銀が言った」と述べた由。

○来年は年金が37.1%引き上げられる。現在の年金平均額は4,188ルーブル(2万円弱)。

金融面での最初の変調(6月~)○ロシアの外貨準備には07年末、約1000億ドル相当のファニーメイ、フレディマック関係債券があったが、ステパーシン会計検査院長によれば08年6月には300億ドル以下だった。うまく売り抜けたのか、損失を蒙ったのかはわからない。

○6月には、(サブプライムのあおりで)資金調達価格が上昇したために社債償還ができず、デフォルトになる二流企業が増えた。しかし、連鎖倒産はなかった。

○2001年ロシアに債券市場が開設されて以来、期限不払いはなかったが、8月には10件、9月には17億ルーブル相当の28件が不払いになった。

MECHEL社、グルジア戦争、欧米金融恐慌のトリプル・パンチ(7月下旬~)
○MECHELというのは、ロシアの原料炭大手。
7月の下旬プーチン首相は、同社の輸出価格が国内での販売価格よりはるかに低いことを問題視し、公開の場で批判を加えた。
折りしもBP-Shellのロシアでの活動をめぐって大きな係争が生じていた時だけに、この発言はロシア政府が私企業の活動に干渉する傾向を強めたものと解釈された。
短期外資が株式市場から引き上げ、株価は1日だけで5.6%下落したのである。

○これにグルジア戦争が追い討ちをかけ、短期外資はロシアから大量に引き上げた。
 9月初旬株価は、5月のピーク時の半分に落ちた(その後30%以下になった)。
外資(その中には実は、海外に逃避しているロシア資本もある)はおそらく、欧米諸国がグルジア戦争への制裁措置としてロシアの在外資産を凍結し、ロシア政府がそれに対抗して国内の外資資産を凍結することを恐れたのだろう。
メドベジェフ大統領に近いと言われるユルゲンス現代開発研究所長は当時、グルジア戦争がロシアにもたらす最大のリスクは、西側資金、マネジャーの引き上げ、そして先端技術の禁輸だとした他、ロシアの在外資産が凍結される可能性にも言及し、西側との話し合いを呼びかけたのである。

○9月になると、「全ての銀行が流動性不足という問題を抱えている。株式を担保に低い金利で短期の資金を調達していたが、株価下落で資金調達が難しくなった。」という状況となった。
先進国のコール・手形市場のほとんどが無担保であるのに比べ、ロシアはレポ取引(株券を担保に資金調達)が中心なのである。
こうして、銀行間短期資本市場が目詰まりを起こした。

○これに加えて、西欧の資本市場での起債、ローンにあたって、高いロシア・プレミアムが課されるようになり、この方面からの資金入手がほぼ不可能になった。
 ロシアの企業、銀行は、年末までに400億ドルの外債を返済しなければならないが、西欧資本市場での借り換えも、ロシア国内資本市場での借り入れも、双方とも道が閉ざされたのである。
 外債返済を控えるロシアの企業・銀行は、外国の資産を売却するか政府資金に頼るしか手がなくなった。

○つい最近までロシアの企業は投資の4分の3を自己留保でまかなってきたらしいが、近年銀行融資への依存度を高めていたようで、金融の目詰まりは実体経済を押し下げている。
まず、建設を中心とした基本投資額の伸び率が下がった。
消費も同じ理由で下がるだろう。1~8月、消費の伸び率のうち41%分は消費者ローンのおかげだったのだ。

○資本の純流出が増えたため(第3四半期、167億ドルの純流出。ただし第2四半期は407億ドルの純流入だった)、中銀が外貨準備を使ってルーブルを買い支えるも、ルーブルは7月の1ドル23ルーブルから10月20日には27.35ルーブルに大幅に下落した。

○そして外貨準備額は8月ピークの5,740億ドルから、10月24日には4847億ドルに急低下した。
因みにクドリン財務相は7月末議会で、外貨資産の45%ずつをドル、ユーロで保有する方針は変えないと、言明している。
 「アメリカ一極支配の時代は終わった。ルーブルを国際通貨にするのだ」という首脳陣の勇ましい発言とは裏腹に、ドルへの執着は続いている。
 
政府による対策
○政府は8月上旬から、市場での流動性不足を補う措置を開始した。
第一弾は、「まだ支出していない予算を銀行に競売する」、つまり高い利子率をオファーする銀行に予算を最大3ヶ月預金することだった。
ロシアでは出回る国債の額が小さいために、西側でのように買いオペを金融手段として使うことができないようだ。
この予算の競売で、8月は1660億ルーブル、9月は7630億ルーブルが銀行に一時供給された。8月上旬の利子率は8.17%。

(この「予算運用の競売」は、政府が求める利子率が高すぎるため、買い手がつかない場合も多い。10月1日財務省は、3000億ルーブルの予算競売を「買い手がない」として中止している。財務省が求めた金利は1週間8%だった由)

○9月16日、メドベジェフ大統領は大資本家達と会合を行った。
 この場で大資本家達には、「皆、それぞれの本分を尽くすように」との圧力がかけられ、その結果、彼らは自分の富の10~30%を吐き出して自社株を買い上げる例が相次いだ。
大資本家達(「オリガーク」)は、総計1884億ドルを吐き出したのである。

9月18日、政府はまとまった経済刺激策(下記①~⑤)を発表した。
これは、投資銀行のKIT Finance社が破綻して株式市場を2日間の閉鎖に追い込んだ直後のタイミングである。なおKIT社は、ガスプロム系のLider Asset Managementが買収した。

①柱は、5000億ルーブルの株価対策。
クドリン財務相は「第1段階として2500億ルーブルを市場に投入し(状況を見ながら)さらに2500億ルーブルを追加する。利益が出ると判断した場合は売却する」との考えを示した。
  (しかし10月14日にこれが法案として議会を通過した時には、その姿は若干変わっていた。5000億ルーブルのうち、2000億が預金保険庁にいき、1750億が金融市場安定化のため、750億のみが株買い支えのため対外経済銀行に供与される由。なお同じ頃、議会下院の財務委員パーヴェル・メドベジェフは、「中央銀行はこの1年、金融危機の到来を予想して、商業銀行に融資するためのメカニズムを完成させている」旨述べた。)
②貯蓄銀行(ズベルバンク)、対外経済銀行、ガスプロム銀行の主要3銀行へのロシア中央銀行の貸出枠を1兆1260億ルーブルに引き上げる。
③商業銀行の預金準備率を4%下げ、それによって3000億ルーブル分の流動性を増加。
④10月1日に1トン485ドルとなる予定だった石油輸出税を同372ドルとする。
これにより、石油会社は55億ドルの負担減となる。
⑤住宅ローン貸付機関へ600億ルーブルを予算から割りあてる。

○9月24日には、プーチン首相が会長を兼任する開発銀行(実質的には国営)が、資金難に陥っていたスヴャス銀行(資産額で20位)の株98%を買い取った。
企業再国有化だ、あるいはプーチン首相に近いレイマン元通信相系の銀行だから救済されるのだと非難する声も上がったが、政府はこれは郵便局系の銀行で年金送金のために重要だとして、買収を断行した。
リベラル系論者によれば、上記KIT社の場合も合わせてオフショア会社から株を買い取っており、買収資金は結局海外に流れる由。

○9月29日、プーチン首相は「対外経済銀行は、商業銀行、企業に外債支払いのための500億ドルのローンを供与する。抵当不要。」と述べる。クレパチ経済発展省次官は、これは外貨準備から貸し出される由発言。
この発言にもかかわらず、モスクワの株価RTSは7.5%下がる。

○9月末、財務省が28の銀行へ600億ドルのローンを供与、との報道があった。
うち410億は貯蓄銀行(ズベルバンク)と対外経済銀行へ向けられた由。

○10月1日、ウリュカエフ中銀第一副総裁は「流動性の問題は15ヶ月は続く」と述べ、次の措置を明らかにした。

①年末までには中銀が500億ドルを対外経済銀行に貸せるだろう。
②中銀が6ヶ月までの融資を商業銀に供与できるよう、法案を準備中。
財務省による、予算余剰分の一時的運用入札を補うもの。
③3つの国営銀行がインターバンク市場で損失を受けた場合、これを中銀が補償する法案を準備中。
④これらの措置により、インフレ率が1~2%上るだろう。

○10月6日、大統領府と内閣共同で秘密の危機対策タスクフォースが作られる。
クドリン財務相、ナビウリナ経済産業相、大銀行頭取がメンバーの由。

○10月7日、シュヴァーロフ第一副首相を頭に、「証券市場発展評議会」が発足。
他に中銀頭取、財務相、及び諜報機関のFSB長官がメンバー。
6月初め、閣議の場でプーチン首相に公に批判されて以来、その動静があまり報道されなかったシュヴァーロフ第一副首相がこの頃からまた前面に出てくる。
 プーチン首相は郊外ノヴォ・オガリョヴォにある公邸で勤務することが多くなったとの報道も見られる。

○10月7日、中銀は50億ドルを売却してルーブル買い支え。
国民が、預金をルーブルからドルへ転換し始めたためだろう。

○10月19日、シュヴァーロフ第一副首相はテレビで、「国民の銀行預金は、法律では70万ルーブルまでしか保証されないが、全額保証する。銀行には現金を供給してある」と言明。
 (注:ソ連、ロシアにおいては、国民の銀行預金が凍結され、その間に大きく切り下げられて価値を失ったことが何度も起きている。右発言は、国民の不安を鎮め、ドルへの換金を控えさせるためのもの)

○10月21日にドヴォルコーヴィチ大統領補佐官がロシア・テレビのインタビューを受け、新たな救済策を説明した。それは、
①軍需企業に政府発注代金を前払いする。
②機械部門に利子補給を行う。
③マンションの空室を政府が買い上げる(そのため2012年のウラジオストクでのA PEC首脳会議、2014年ソチでの冬季オリンピックの準備予算から320億ルーブルを流用する)。
④農業への融資を強化する。

○10月17日クドリン財務相は、「国民福祉基金(2月設立時で250億ドル)のうち1750億ルーブル分を国内株・債券の買い上げに使う。次週から開始する」と言明。
買い付け銘柄は公表せず、長期保有するつもりの由。

政府による対策の効果
○8月以降、政府・中銀が様々な方法で流動性を供給しようとしたにもかかわらず、市場では金詰りが続いている。10月中旬になってもプーチン首相は閣議で、「資金がリアル・セクターに届いていない」と言っている。
これは、政府・中銀から資金を受けた大銀行が、中小銀行に貸さないためである。
大銀行は、中小銀行に貸せば不良債権化するのを恐れ、受けた資金を外貨に投資するなどして自ら運用している。政府が、中小銀行の債務に保証をつけることが求められている。

○10月9日、ロシア産業家企業家同盟のショーヒン議長は「政府指導部へのアピール」なる文書を発表し、危機対策が一部の企業に限られていて透明性を欠いていること、経済困難の時に増税が行われようとしていることを批判するとともに、近年急増した国営公社を民営化するためのタイムテーブルを明確化するよう求めた。
産業家企業家同盟は、メドベジェフ大統領に近いユルゲンス現代開発研究所長がこれまで事務局長として勤務していたところであり、この声明がメドベジェフの意を体していれば面白いところだが、他方、今回の救済措置にあずかれなかった企業家達の声を代弁しているだけの可能性もある。
右声明は非常に明確に政府を批判しているが、これはプーチン首相に向けられたものではなく、むしろクドリン財務相の追い落としを狙ったものであろう。

政策保守化・再国有化?
○プーチン大統領の2期目以後、経済政策にも保守化、ソ連回帰の傾向が見える。
これを西側ではプーチンの独裁傾向として批判するが、実はこの「保守バネ」はロシア社会に深く根ざすものである。
世論調査機関VTsIOM(政府寄り)の10月中旬調査によれば、国民の79%は価格統制を、58%は銀行国有化を支持している。何をか言わんやなのだ。

○9月上旬、プーチン首相は閣議の場で、経済発展省が作成した2020年に向けての発展計画案(非常に野心的なもの)を強く批判した。
「これでは成長率目標が低過ぎる。だが、インフレは1ケタにしろ。平均賃金は毎年10%以上伸ばせ。失業は今の6.3%から4.5%に減らせ」という、マクロ経済学的には実現不可能なことが、彼の口から発せられた。
ここには、指令すれば実現するという、ソ連時代のメンタリティーがうかがわれる。

○企業に対する中央集権的支配が復活しつつあるように見える。
プーチン首相の友人であるチェメゾフが会長を務める持ち株会社Russian Technology社が、そのような動きの核になっている。
メドベジェフ大統領は7月15日、426の私企業に政府が有する資産をRussian Technology社に譲渡する措置に署名した。この中には、航空大手Air Union、チタン大手Avisma、自動車大手AutoVAZも含まれる。
また8月には、穀物輸出でも国策会社を作る方針が固められている。
ソ連の時代、企業の利益はほぼ全額、所属省庁に吸い上げられ、投資や赤字企業救済に回されていたが、これは各企業のやる気を萎えさせるものだった。また同じことを繰り返すつもりなのだろうか。

○大資本家にとっては政府・中銀しか資本の出し手がないという状況になっている。
 その中で、1996年の大統領選挙で資金に欠乏したエリツィンが、大資本家達に国営企業の株を渡す代わりに選挙資金を得たのと逆のことが起こりつつある。
つまり、大資本家は政府から資金を得る代わりに自分達の企業の株を渡しつつあるのだ。
 これが企業の再国有化につながるという非難が多いため、10月にもシュヴァーロフ第一副首相は、「民間企業の株が抵当として政府の手に入ったとしても、市場が回復すればこの株は売却する。企業を国有化するつもりはない」と述べている。

○インフレ率が上昇するにつれ、政府による価格統制が目立ち始めている。
石炭企業は原料炭価格を来年1月まで凍結するよう命令されたようだし、化学肥料、航空燃料にも統制が及んだようだ。ロシアの航空燃料価格は西側の水準を上回るに至っているようで、8月にはその料金が払えずに欠航となる国内航空便が相次いだ。
その他にも多くの物資が長期契約制に移行し、その中で値上げのテンポが決められている。このため利益率が下がり、生産量を減らす企業も出てきた。

オリガークの勢力地図組み替え?
金づまりで資金が政府にしかない状況では、アルファ・グループのフリードマン会長など政府に近い大資本家(オリガーク)が有利な立場に立つだろう。
また、これまで借金経営をしてきた資本家と、自己留保を豊富に持つ資本家の間では差がつくかもしれない。
そして、プーチン首相に頼んで助けてもらえなかった企業家はメドベジェフ大統領のところへ、大統領府に頼んで相手にしてもらえなかった企業家は首相府へ、というような場面が増えると、大統領・首相間の齟齬が拡大するだろう。

市民の行動
○欧米の金融危機は8月末には明らかであったにもかかわらず、ロシア当局は「ロシアだけは安全の島」であるかのような発言を繰り返した。
彼らは危険を認識していたが、「危機」という言葉がロシア市民の間にパニックを引き起しかねないことを周知していたからである。
90年代の大混乱のトラウマを残すロシア市民は、近年の経済繁栄を持続的なものとは考えておらず、「金があるうちに使ってしまえ」という気持ちで消費ブームを演出してきたのだ。
だがいくら国営テレビで「危機」報道を抑えても、民放は欧米テレビ局のニュース番組を24時間、ロシア語吹き替えつきで流している(この点、ロシア人の方が日本人より国際情報通なのだ)。
9月末までにはロシア経済が直面する危険は市民の周知するところとなり、彼らはルーブル預金をドル預金に替えるべく、両替所に並ぶようになった。

○10月中旬レヴァダ研究所の世論調査では、モスクワ市民の57%はこの情勢は一時的なものととらえて落ち着いている由。今回の情勢について政府に大きな責任があるとする者は全国回答者の23%で、政府は無関係とするのが19%だったそうだ。ただモスクワでは31%が政府は無関係と考えている由。
 つまり、預金凍結とかインフレとかが起こらなければ、危機は一般市民の目に見えるものにならないのだろう。

○10月初めVCIOMの調査では、国民の51%は最良の財産保全法は土地だと考えており、銀行に預金している者は全体の32%のみ。しかも預金している者の40.6%は、銀行を信用していない。

「米国崩壊」への喜びと世界体制改造欲求
○僕は10月中旬、ロシアの団体が主宰するシンポジウムに出席したが、その場でロシア人識者が「アメリカ経済の崩壊」を喜んでいたことは異常なほどだった。
彼らは90年代、自由・民主主義を奉じてアメリカに接近したにもかかわらず、NATOを拡大されるなどの仕打ちを受け、アメリカに対して恨み骨髄なのだ。
「アメリカ人は収入以上の生活をしようとして失敗した」とか、「アメリカ一極支配の終わり」とか、「ドルに代わる国際機軸通貨」だとか、勇ましい言葉が飛び交った。
だが彼らがこう言うそばで、ロシア市民はルーブルをドルに換金するために両替所で長蛇の列を作っていたのだ。

○そして「戦後の世界経済体制はアメリカ中心で不公平だから作り直せ。ロシアにしかるべき発言力を認めろ」ということは、1年前から大統領プーチンが言い出して、ロシア自身が金づまりになった現在、まだその言い分を繰り返している。
10月9日、フランスのエヴィアンでのWorld Policy Conferenceによばれたメドベジェフ大統領は、「ロシアにもっと国際金融上の役割を与える」よう求めたが、その日ロシアの株式市場は2日間にわたって閉鎖されていたのである。
 またプーチン首相は10月下旬に来訪した温家宝首相に、中ロ間の貿易をできるだけルーブル・元で決済するよう提案したが、温家宝側は沈黙していたようだ。

○国際基軸通貨というのは、皆が使う気にならなければ成立しない。
大幅に下落する可能性のあるルーブルを誰が受け取りたがるか、これから大幅に切りあがる可能性のある元で借金したがる者がどこにいるか、という問題なのだ。
それにルーブルをもらっても、それで買えるものはロシアの天然資源だけくらいのものだ。ドルやユーロだったら、ロシア以外の国からも何でも買える。
どうもロシアが言っていることは、ソ連時代の貿易体制に戻ろう、つまり二国間で貿易額をバランスさせることを基本としようということらしい。
貿易を二国間のバランス中心で運営したら、全体の額は限られたものとなる。貿易は多国間でバランスすればいいのであり、その方が全体の貿易額ははるかに大きなものとなる。
ロシアがルーブルでものを買いたがるのはわかるが、ゼロサムの経済体制を他国に押し付けないでもらいたい。

当面の見通し
○アメリカのロシア経済専門家Anders Aslundなどは、09年のロシア経済はゼロ成長だとするが、多くの専門家は3~5%近辺の成長率を予想している。

外貨準備
10月末、ロシアの外貨準備はピークから800億ドル程度減少し、5000億ドルを割るに至った。それでも同23日、ロシア中銀幹部はこう述べた。
「08年末の外貨準備は年初より709億ドルは増えているだろう。ロシア原油の輸出価平均は1バレル101.5ドルだったから。
09年の外貨準備は589~1206億ドル増加する見通しだったが、今回の事態を受け40億ドル減少するとの見通しに修正した」
 
08年上半期、貿易黒字は前年同期比75%増で1048億ドルに達した。上半期の原油価格急上昇で輸出が前年同期の1554億ドルから2400億ドルに跳ね上がったことが原因。
09年は、輸入の伸びが続いて貿易黒字額を大きく下げるだろう。
ルーブルのレートが下がれば輸入が減るだろうから、貿易収支が直ちに赤字になるかどうかはまだわからない。ただルーブル安だと輸入価格が急上昇して、生活費が上がる。ロシアは牛乳や牛肉でさえ、輸入に大きく依存していることを忘れてはならない。

デフォルト(債務不支払い)?
まだ記憶に新しい98年8月のも含め、ソ連崩壊後ロシアは何回か債務繰り延べ、そして不支払いを繰り返した。
また今回それが繰り返されるのかと言えば、今回は以前の100倍もの外貨準備を抱えているので、せいぜいルーブル切り下げ、それに伴う国内のインフレ悪化くらいが当面予想されるところだ。
いくつかの報道を紹介する。まず当面必要な外貨支払いについて

①ロシアは外貨準備とほぼ同じ規模の対外債務(Stratforは6月現在で5271億ドル、うち銀行分が2289億ドルとしている。他にガスプロムが550億、ロスネフチが230億、RusAlが112億、TNK-BPが75億などだそうだ)を抱える。
②ロシアの銀行・企業は年末までに400億ドル、09年に800億ドルを外国に返済せねばならない(10月1日 ウリュカエフ中銀第一副総裁)。
③ロシア人の個人預金は5兆ルーブル強あり(約1850億ドル)、ルーブルからドルへの転換が進められると、外貨準備も随分減るだろう。

これに対して、ロシアはどのくらいの外貨資産を持っているか?
①Stratforは、ロシアが使える資金として外貨準備、安定化基金、そして07年には500億ドルに上った財政黒字を上げているが、この3者の殆どは重なっているはずで、実質的には外貨準備額を目安としていればいいのだと思う。
②これに加えてロシアは3000~7000億ドルの在外資産を持っていると推定されている。①と②を合わせれば、返済能力は理論的には十分だろう。
 またルーブルが下がれば、それは外国資本にとっては対ロ投資の機会を意味しているのである。

予算
08年度予算は、石油輸出税下げで1360億、株式市場救済で2500億ルーブルの臨時歳出を行うが、2012年ウラジオストックでのAPEC首脳会議、2014年ソチでの冬季オリンピックの準備予算などを削って、年間6%の黒字を実現できるだろう。
しかし予算残留分のうち、1.5兆ルーブルまでを銀行に使わせるのは響くかもしれない。これは融資なのだが、期限に返されないかもしれないからだ。

9月、クドリン財務相は来年度の予算を上程した。
彼によれば、原油価格は1バレル78ドルで計算してあり(他方8月に採択された向こう3ヵ年の財政見通しでは、09年原油価格を95ドル、10年に90ドル、11年に88ドルと予測していたとの報道がある)、これが70ドル以下になると財政赤字になるという。11月初旬既に60ドル周辺だから、1985年に同じく原油価格が暴落してソ連に財政赤字をもたらしたのと同じようなことになるかもしれない(1985年の場合は、これがゴルバチョフによるペレストロイカ政策につながり、その失敗からソ連が崩壊するのである)。
但し、おそらくルーブルのレートがかなり下がってロシア国内はインフレ傾向になるだろうから、案外政府歳入は増加するかもしれない。

インフレ
6月までは年率換算15.1%増の勢いを見せていた消費者物価も、10月初めまでの総計では10.8%の水準に落ち着くに至っている。
昨年秋から急騰を見せた世界食料品価格が下落したことが一要因だろう。
しかし、所得の伸びが鈍る中で、インフレ率が所得の伸びに追いつきつつある。

2020年見通し
○6月初旬、サンクト・ペテルブルクでの国際会議でゴールドマン・サックスは、ロシア経済が2010~15年には3.3%、2015~20年には2.9%の成長率に下がるが、それでも2020年のGDPは3兆ドルを超え(現在1兆ドル強)、世界8位になるとの見通しを発表した。

○10月1日、プーチン大統領の肝いりで経済発展省が着手していた「2020年に向けての長期発展計画」が、閣議で採択された。
これは、2月にマスコミにリークされたところでは、①2015~2020年にGDPで世界5位以内、②一人当たりGDPを2020年には3万ドル、2030年には5万ドル(06年には13,700ドルだった)、③住宅面積一人当たり、平均30~35平米、④中産階級は2020年までに人口の50%以上、⑤原材料輸出国から民需用の先端技術への依存に移行、⑥労働生産性は2020年までに140~160%向上(10月1日の閣議でプーチン首相はこれを3~4倍にせよ、と言っている)、等々という大変けっこうなものである。

○原油価格暴落が長期化しなければ、2020年ロシアの名目GDPはドル・ベースで世界の5位程度にはつけているはずである。
ただその多くはルーブルの対ドル・レートの上昇と、国内のインフレによって達成されることになろう。現在モスクワではホテル一泊600ドルは普通だが、2020年には1500ドル以上になっている可能性がある。つまり世界5位でも、経済力の「真水」部分はそれほどでもなかろう。

グルジア戦争の影響
○グルジア戦争にもかかわらず、米国・EUはロシアにさしたる経済制裁を課さず、「エンゲージメント」の政策を続けている。
10月末、ラヴロフ外相とEU議長国フランスのクシュネル外相はサンクト・ペテルブルクで会談し、EU・ロシア協力協定改訂交渉については、11月13日ニースでEU・ロシア首脳会談を行ってタイムテーブルを設定することで同意した。
この協力協定交渉は、グルジア戦争に対する制裁としてEU側が凍結していたものだ。
議長国フランスによる越権行為だとして、EU内で異論が巻き起こる可能性がある。
なお、グルジアでの緊張は来年春には再燃する可能性が指摘されている。

11月15日ワシントンで国際金融問題についての緊急首脳会談が行われるが、メドベジェフ大統領かプーチン首相のどちらかは出席するのだろう。
これまでは、アメリカとロシアの間にはさしたる経済関係もなく、そのことが両国関係が一度悪化すると歯止めがききにくい状況を作っていた。
だが、これからは一味違ってくるかもしれない。財政赤字が一層拡大するアメリカは、ロシアが豊富に保有するドルで米国債を買い続けてもらいたいだろうし、ロシアはアメリカに世界の景気と原油価格を何とか維持してもらいたいのだ。      (了)

コメント

投稿者: 月出皎司 | 2008年11月 3日 23:17

ひさしぶりに、感想を申し上げます。
ロシア金融危機の当面の見通しに関するお説に同感です。
同感の文脈の続きで申し上げれば、


・ロシアの金融危機はいつなんどき経済危機に発展してもおかしくないと思います。
 とりわけ、大都市部における不動産バブルははじけるを待つばかりの状態でしたので、すでに金融危機のあおりを受けて破綻の様相を見せ始めています。完工済みマンションの政府買い上げでは不十分でしょうが、といって業界を財政で丸抱えは無理、また需要側を財政支援することも到底無理(資金的にも)でしょう。

・原油価格の動向は分かりませんが、ここ数年の暴騰を招いた投資(投機)資金の大半が世界的なマネー縮小で消えるのに伴って、現時点の60ドルそこそこの水準が維持できるかどうか。

ロシアの財政、およびその恩恵を受ける公務員給与、年金など個人の実質所得を引き上げて来た財源はすくなくとも2年前のレベルに戻ることになりそうです。社会不安が起るレベルなのかどうか、確とは言えませんが、ロシア政府にとってはかなりつらい水準でしょう。とくに年金問題。

・現在の財政規模をもし仮に維持する(あり得ない計算上の仮定ですが)としますと、60ドルでも年間400億ドル程度の財政赤字、55ドルなら500億ドルの赤字。
財政予備会計残高が1400億ドル、プラス福祉(年金)特別予備金会計残高が500億ドルですから(10月初め現在)、60ドルなら4年強、55ドルなら3年少々で消えるでしょう。
両会計の残高は10月17日決定の支援策を実施すると数百億ドル単位で消えるはずですから、見通しはもっと厳しい。(その上、ここで依っている数字には、米国住宅抵当公社債購入で蒙った大損はまだ反映していません)。結局、財政を大幅に縮小せざるを得ず、これはクドリン蔵相が強調するところです。

・外貨準備が10月半ば時点で5160億ドルほどありましたが、4900億ドルほどの民間対外債務の肩代わりを始める時点以前に4850億ドルに減っているようです。さらに、ロシアの金融専門家の解説を信じるなら、このうち1500億ドルは実は会計処理上は外貨準備ではあるが、実質的には民間金融機関にドルを貸してしまっており、実質的な対外準備は約3500億ドルと見るのが正しいといいます。

対外債務のすべてを政府が肩代わりする必要はないでしょうが(それ以前に国際金融システムが安定を取り戻すとみて)、それでも来年半ばまでに外貨準備額は3500-1500=2000億ドル程度の水準になりそうな計算です。

・ルーブル安定のためのドル売りルーブル買い操作も含めて、多ければ月間300億ドル程度の外貨準備縮小が見られるかも知れません(たまたま10月20-24の週には300億ドルの減少)。

この場合、ロシア大資本、グレー資本の対外逃避が加速する危険もあります。在外資産は、このフェーズではもちろん還流しないでしょう。
 上記のエネルギー輸出収入の減少は当面経常収支の赤字を招くまでには至らないと思われます。

・それでも98年の危機にはならないでしょう。危機の構造がまったく異なりますし。
 その代わり、ここ数年の消費ブームのかなり激しい後退、不動産バブル崩壊によるモスクワ等の市民の資産目減り、鉄道建設2万キロに代表されるような政府の大規模インフラ・産業投資の大幅削減の可能性大と思われます。

極東開発計画も同じです。産業政策も後退不可避で、ロステクノロギー社も先行き暗雲です。

・経済後退に入って行く場合でも、98年の危機後に見られたような民族系製造業の急速な復活は見られないでしょう。この数年でロシアの機械製造業はさらに一段と、回復不能に近いほど弱体化したためです。例のスホイスーパージェットのような目玉プロジェクトにしてからが、政府が金を出してもまともな製品が作れないといった状態です(下請け企業の崩壊)。


ロシア経済のことは以上のようにみておりますが、余談として、

・金融危機なので極東プロジェクトでロシア政府が以前にも増して(以前とは異なって?)日本に接近してくるのかどうかについて一言。

 接近してきても、ロシアによい結果は何も出ないでしょう。先々月まで、ロシアにまだ金があった時には、ロシア政府は自分の金でやるつもりであり、日本政府の金は不要でした。
欲しかったとすれば民間の長期、あるいは超長期出資ですが、日本企業は応じませんでした(当然の経営判断です)。

 いまロシア政府は金が厳しくなったので、民間資金だけではなく、日本政府の金も欲しいでしょう。だがわが国には金はありません。まあ、国内景気対策を狙ったニューディールのつもりで極東シベリア産業大開発(数兆円以上の規模、政府資金が8割くらい民間はついて行くにしても2割くらい)にでも取り組むというのなら、話はおのずと別ですが・・・。事業採算は赤字覚悟となります。


もうひとつ、
・この経済状況下でロシアエネルギー産業が、将来安定的に需要拡大が見込める地域への関心を強めることが、論理的には、予想されます。具体的には中国となります。先日の中ロ会議について日経が、これとは逆の見方を書いていましたが、誤判断のように思います。


投稿者: 杉本丈児 | 2008年11月 4日 17:06

 現在、関心のあること。

1 新アメリカ大統領の誕生は、ロシアにどのよ うな影響を与えるか。

2 特に、オバマ新大統領の対ロシア戦略はいか なるものに。

3 結局、グルジア戦争は、アメリカ、EU、グ ルジア、ロシアにそれぞれどのような傷痕を残 したのか。

  以上

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