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世界はこう変わる

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2022年5月 4日

第三次世界大戦はどういうメカニズムで起きるか、極東には波及するか

この前ウクライナについて講演したら、質疑応答の時間、第三次世界大戦が起きそうだという予感を語る人がいた。第二次大戦勃発前と情勢が酷似しているというのである。バブル崩壊とか、復讐意識に燃えるプーチン・ロシアの攻勢とか。
本当にそうだろうか? 少し検証してみる。

第1次世界大戦は、ボスニアのサラエヴォで、オーストリア皇太子夫妻がセルビアのナショナリストに殺されたことをきっかけに、同盟関係の連鎖反応が起きて爆発したものだ。セルビアは19世紀末にはオスマン・トルコ帝国から独立してバルカン内での勢力伸長をはかっていたのが、北からバルカンに手を伸ばしてきたオーストリア・ハンガリー帝国と衝突したのである。

オーストリア・ハンガリー帝国はセルビア王国に宣戦布告し、これに対してロシアは同じスラブ民族のセルビアを守るべく総動員。これに対抗してドイツが総動員をして、フランスには中立を呼び掛けるも果たさず、ベルギーを攻略してフランスへの侵入を策し、これに対して英国がドイツに宣戦を布告する。結局のところ、英仏露とドイツの間の対決となった。

この背景には、ドイツのウィルヘルム二世が、宰相ビスマルクの展開する穏健なバランス外交を放棄して、夜郎自大の帝国主義政策に移行していたことがある。セルビアとオーストリア・ハンガリーの衝突が、このドイツをめぐる大きな対立構造を顕在化させたのだ。

第2次世界大戦が起きた経緯は、第1次の時よりは直截だ。第1次大戦後、苛酷な賠償義務を押し付けられたドイツで、ヒットラーがそれへの恨みをかきたてて権力奪取の糧とし、オーストリア、チェコと次々に勢力を拡大。ついにポーランドに武力侵入したところで、英国、フランスが次々に戦火を開く。アジアでは日本軍が石油を確保するために南進して英国、フランスを敵に回し、世界戦争を太平洋に飛び火させる。

今回のウクライナ戦争は、この第一次、第二次世界大戦両方の要素を持つ。ソ連崩壊とその後のNATO拡大に恨みを持つロシアが決起したという点では、第一次大戦後の処理で苛酷な扱いを受けたドイツが、その恨みを晴らすために決起したという点で、第二次大戦に類似している。他方、大国とは言えないウクライナが、ロシアという大きな存在との戦いに米国・NATOを何とか引き込もうとしている点では、昔セルビアがロシアやフランスを引き込んでオーストリア・ハンガリー帝国という大きな存在に立ち向かった時に類似している。

今回のウクライナ戦争は、欧州大戦には容易になり得る。ウクライナの極右勢力はそれを望んでいる。そしてそれは、米ロ間の戦争にもなるかもしれない。それがアジアを巻き込んだ本当の世界大戦になるかどうかは、中国の行動にかかっている。特に中国が台湾を武力で制圧する動きに出てくるかどうかが焦点になる。

しかし、現在のところ、その可能性はむしろ薄くなっている。習近平は自分の任期を実質的に終生のものとするため、今年秋に開く共産党大会で任期規定のない共産党中央委員会主席(毛沢東死後、廃止されたポスト)に就任することを狙っている。少なくともこの時までは、台湾侵攻などというギャンブル的行為には出ないだろう。

ウクライナ戦争でのロシア軍の苦戦を見て、習近平は侵攻作戦の難しさとリスクを痛感したことだろう。またロシアが制裁でされたように、海外の外貨資産を凍結され、ドル決済から除外されたら、経済が崩壊することも、認識したはずだ。そして今は、コロナ対策でほかのことは目に入るまい。

だから、ウクライナ戦争はアジアには飛び火しにくい。ただ、ロシアが我を忘れて、米国との核戦争に訴えた場合、あるいは極東の米軍基地をミサイルで叩こうとする場合、戦争がアジアに飛び火することはあり得る。こうなれば打つ手はない。ただプーチンは自暴自棄の行動に出る前に、突然「病死させられ」ることになるかもしれない。

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