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世界はこう変わる

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2021年9月29日

反米! をもう使えなくなった中ロの狼狽

(これは9月22日発行のメルマガ「文明の万華鏡」の一部です)

この頃の米国を見ていると、目を覆いたくなる。アフガニスタンでは撤退間際の混乱の中、ISISと誤認して米国への協力者を家族ごとドローンで誤爆したことが判明したし、英国・豪州とはアングロ・サクソンの安保枠組みAUKUSを立ち上げたのはいいけれど、原子力潜水艦の製造技術供与を豪州に約束したことで、フランスが豪州と進めてきたディーゼル潜水艦建造の商談をつぶしてしまった。フランスは烈火のごとく怒って、在米、在豪の大使を本国召還する始末。NATOという米国外交・安全保障の柱にまでうっかり傷をつけるようでは、国際舞台からの米国の退場もいよいよ間近か、と身構えてしまう。

もっとも、ことがそこまで至ったとは思わない。米国の後退で勝ち誇ってしかるべき中国、ロシアは、米国という悪役レスラーがリングから突然降りてしまって、途方に暮れているのでないか? 両国は、「反米!」を国内を固める手段として使ってきた。ところが今では、「反米!」と叫んでも、「そこら中に介入しようとする邪悪な米国」がもういないのだ。本国で傷をなめている、そしてもしかすると米国発の金融大恐慌が近くやってくる。その時はFRBに頭を下げてドルを融通してもらわないと、貿易ができなくなる。

「反米!」と叫んで途上国を自分の側につけることもできない。カネか兵士か、どちらかを出さないと、途上国は相手にしてくれない。実力の世界になったのだ。ああ、何と「邪悪な米国」は重宝な存在だったのか、と彼らは思っていることだろう。

邪悪な米国亡き今、ロシアは「伝統的な価値観」、つまりロシア帝国の権威主義・帝国主義、ロシア正教会の保守的価値観で国内をまとめようとし、中国は毛沢東主義を習近平思想に衣替えして小学校での学習を強制している。しかしこれでは、現代の社会にそぐわず、そのうち自分で自分に足をかけてスっ転ぶことになるだろう。

日本はこうした地図の中で、自由度も増えるが、変な方向に突っ走って大失敗する愚は避けないといけない。戦前の一部軍人、あるいは満州浪人のように国力不相応の大戦略を振り回して世界で袋叩きに会う夜郎自大さ、戦後の我々のように、世界には悪意を持った者が大勢いることを知らず、途上国の人たちを助けたい一心で海外に出て、大変な目に合うようなお人よしぶり、その双方は自戒しないといけない。

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