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世界はこう変わる

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2021年3月 9日

米国というブラックボックス

(これは2月24日に発行されたメルマガ「文明の万華鏡」第106号の一部です)

 米国はこれまで公明正大で透明であることを売り物にしてきたが、実際には日本と同じくブラック・ボックス、ウラだらけの国で、そのことはトランプの4年間でこの上なくよくわかった。トランプを囲む「友人」たちの面構え。違法・不法の限りを尽くしていながら、「この世はどうせ皆同じ汚い人間。綺麗ごとを言う奴も、結局はカネで転ぶのだ」という無言の嘲りを唇あたりに漂わせている。トランプはこうしたギャングばりの勢力を、白昼の中に引き出した。

 そして1月6日には、保守白人勢力が議会を暴力で襲う。米国の今の問題は、経済格差だけではない。白人がこれから少数派になるということに対する不安・恐怖、つまり人種問題にあることを、如実に見せた。

それにしても、あの牛の角を生やしたシャーマン姿の男。寒空であの肉襦袢姿では寒かっただろうに。面白かった。まるで民主党側の回し者ではないかと思われる程、今回の保守白人勢力の本質をあの姿で物語っていた。つまり原初的で知識、理性の否定。しかもそのシャーマンは路上でテレビに聞かれると、「俺はトランプの指令で来たし、今彼が家に帰れと言うから帰るんだよ」と、トランプが顔をしかめる(トランプは、議会襲撃は自分が扇動したのではない、と言っている)ような発言をしたから、やはり民主党の回し者だったのだろう。

(政治資金のブラック・ボックス)

そして共和党の(そして民主党の)ブラック・ボックスの極め付きは、政治資金の出どころだ。以前、個人による献金は額が制限されていたが、2014年、最高裁がこれを違憲としたことで、実質青天井になる。この前後からだ。共和党で「茶会グループ」が台頭し、「小さな政府」を掲げて暴れ始めたのは。

後になってわかり始めたことは、これは米国でも最大規模の非上場企業Koch Industriesを率いるKoch兄弟等のカネを受けて活動する議員の集まりであったということ。Koch兄弟は自分の企業の税負担軽減という一念で「小さな政府」を標榜。それは結局経済格差を拡大することにつながり、トランプの台頭、そして民主党の側では反企業の社会主義的機運を招く。このことは既に書いたと思うが、兄弟の一人Charlesは昨年回顧録を出版、自分のやったことが反企業気運を社会で生じさせたことを深く悔いている。MITも出たインテリが、こうなることを見通せなかったとしても、せめて身の回りで現に起きていることを、なぜもっと早く認識できなかったのか。

こうして、カネに弱い共和党(民主党も)は今回、トランプという、有権者たらし込み装置にすっかり参っている。トランプは今回また弾劾をすり抜けたが、下院の共和党院内総務マッカーシーは1月末、彼をフロリダのマル・ア・ラーゴに訪問。まるでトランプが共和党党首であるかのようなふるまいを見せた。今や白人のための党になってしまった感のある共和党は、カネとかトランプのようなドーピング剤がないと、選挙に勝てないのだろう。

(開票操作はトランプ側がした?)

そう言えばトランプは、大統領選で民主党が不正手段で票数を膨らませたと叫んでいるが、彼自身は開票後、ジョージア州の副知事に「票を数え直してウン万票増やせ。簡単だろう」と電話をしている。この言葉、米国のメディアは気が付いていないようだが、共和党が権力を握る州では、こういう開票操作がトランプのために行われていたことを示しているのでないか? トランプは、自らやった開票不正を隠すために、敵方がそうした不正をやったと喚きたて、注意をそらそうとしたのでないか? これはドロボーや三文政治家がよく使う手だ。前回を大きく上回る票を彼が今回獲得したというのは、考えてみれば少しおかしいではないか。

これに加えて今知りたいのは、共和党にカネを出しているのは今誰なのか、特にトランプに今でも貢いでいるのは誰なのか、ということだ。大統領選挙戦では、トランプが集めた資金はバイデンにはるかに劣ったと言われる。それでも彼の娘婿クシュネルはそのカネの配分権を握り、共和党議員達はそれに群がった。
共和党議員が今でもトランプに気を使っているのは、今でもトランプには次の選挙での共和党議員の当落を左右できる――例えば反トランプの共和党議員の選挙区に「刺客」を送り込む――だけのカネが流れ込んでいるからなのか? だとすれば、それは誰からなのか? わからない。米国のメディアは多分知っているだろうに、報道してくれない。なぜだろう? 

しかし民主党の側も、沢山のブラック・ボックスを抱えている。例えば黒人の中には、暴力に訴えてでも黒人の権力を守ろうとする団体があって、これはこれでまた自分の存在をアピールするために過激な行動に出て民主党の足を引っ張る。そしてこれからは、労働組合の動向をよく見ていないといけない。

(労働組合というブラック・ボックス)

1970年代くらいまで、米国で労組が力を持っていた頃は、この労組のやり過ぎが米国経済、特に製造業の足を引っ張った。労組幹部は自分達の地位と富を正当化するために、毎年ストライキに訴えては、企業から過度の賃上げと年金を要求。こうして米国企業は日本や西独の企業との競争で負けて、一部は身売り、一部は海外での生産に活路を見出したのだ。

2019年、今や映画製作でハリウッドをしのぐNetflixが「アイリッシュマン The Irishman」(アイルランド人)という3時間半もかかる長大な映画をレリース。日本でも上映されたので見に行った。これは戦後の全米トラック運転手組合の内情を、実話に基づいて語ったもの。組合のカネを仲間への低利融資に回して袖の下を取る幹部、その幹部を除こうとする陰謀と暴力。マフィア勢力も引き込んでの、何でもありの世界。

すべての労組がこんなわけではないだろうが、バイデン民主党政権の登場で、労組は再活性化するだろう。米国では既に約半数の州で労働組合費の強制的徴収を禁ずる(つまり労働組合を実質的に禁じる)州法が存在していて、外国企業の直接投資もこうした州に集中しているのだが、今年1月カリフォルニア州のGoogleでは200名強の社員が待遇改善などを求めて労組を立ち上げた。これはおそらく伸びないだろうが、昨年10月には全米自動車労組が全国のGM工場、30か所以上で20年ぶりの全面ストライキを組織している。米国に工場を持つ日本の企業も要注意なのだ。

こういった米国の労働組合や教会や、大きな票田の内情を我々はあまりにも知らない。本を探してもない。もっとも、筆者も今回、地元西東京市の政治・利権の内情を全然知ることもなしに、市長選でいい加減な投票をしたのだが。逗子市から移ってきた「市政掃除請負人」は、惜しくも三千票ほどの差で敗れたが。トランプなら、開票の不正をつくところだろう。

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