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世界はこう変わる

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2020年5月19日

コロナは世界の軍隊を麻痺させ、戦争をなくすのか?

兵がなくては戦はできぬ
(これは4月22日発刊したメルマガ「文明の万華鏡」の一部です)

 コロナは世界の軍隊を麻痺させるかもしれない。米軍では、空母11隻のうち4隻がコロナ感染者を出し航海を中断しているし、4月からNATOで米欧結束を誇示するために計画されていた、冷戦後最大規模の演習Defender Europe2020 (米軍2個師団、2万名が戦車等装備と共に、本土から大西洋を渡って参加する予定であった)はコロナ感染を防ぐため突如、実質的に中断されて、洋上の米軍はユーターンして本国に帰投した。そして3月末、エスパー国防長官は、海外の米軍の移動を60日間禁止したのである。これでは、同盟体制も心もとない。

 但し、コロナにやられたのは他の国の軍隊も同じなので、日米安保もうダメかと思ってパニクる、あるいは喜ぶには及ばない。フランスの空母シャルル・ド・ゴールでも航海中に感染者が出て、急遽帰港したし、米国と敵対するイランでは、シリア作戦を担当していた革命防衛隊旅団長Hossein Asadollahiがコロナで死んだ。2月中旬には中国海軍のミサイル護衛艦艦長も隔離されているのである 。この中で、シリア、イェーメンでは停戦が実現しているのだが、コロナも関係していることだろう。他方リビアでは戦闘が激化しているのだが、これは無人機同士の戦いだという報道もある。

 しかし、コロナが契機で世界中の同盟体制が瓦解したり、戦争が地上から消えたりするところまでは行かないだろう。1918年第1次世界大戦の末期、スペイン風邪が大流行して敵味方の軍隊、艦船を襲った。これは大戦の終結を速めたとも言われるが、証明はされていない。というのは、戦時にはどの国も感染の事実をできるだけ隠蔽して、何が何でも戦闘を継続しようとするだろうからだ。

中国の指導部には、「中国は4000年の皇帝支配国」とか、ソ連的な粗野な力信奉の荒っぽい外交手法が染みついた連中が多いので、コロナでもなかなか懲りない。むしろ、西側の一時的混乱に付け込む構えを見せている。

2日には南シナ海でベトナム漁船に中国の海警艦船が体当たりして撃沈したし、11日には空母遼寧等が沖縄南をかすめて太平洋に進出している(台湾への示威だろう。これが初めてではない)。「足元からコロナ感染者を出したら処罰される」と思い込んでいる中国軍幹部は、洋上で感染者がたとえ出ても隠蔽するだろう。母港に帰ってみたら、乗組員はほぼ全員寝込んでいた、というようなことにもなりかねない。


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