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世界はこう変わる

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2020年1月10日

中国への敗北感はおおげさ

(昨年12月25日に発行した、月刊メルマガ「文明の万華鏡」第92号の一部です)

常識を疑う・シリーズその1

1)「ファーウェイの5G」への敗北感
 中国と言えば日本では、これまでの中国蔑視が急に引っ繰り返って、敗北意識が顔を出しているが、ちょっと早いんじゃないか? 例えば5G。ファーウェイの5Gが世界を席巻していることになっているが、何度も言うように、ファーウェイの製品は5Gの信号を受信し、流し、仕分けするだけのもの。つまり電線と交換機に過ぎないので、5G(つまり多数のセンサーが集めた大量の信号を瞬時に流して、クラウドなどで処理した結果をまた瞬時にユーザーにフィード・バックする。例えば無人運転とか遠隔手術などでは必須の技術)と言っても、今のところは映画をダウンロードするのがいやに速いとか、その程度の話しだろう。それに無人運転車は、自分だけで信号を処理することになるかもしれないし、工場設備にセンサーをつけてどこか遠くから集中的に監視、操作するようなIoTにしても、自分の工場の機械の使い方とか状態を、誰がアクセスするかわからない遠方のクラウドに送る企業家はいないだろう。

つまり、フアーウェイが5G適応と銘打って売っている設備は、映画のダウンロード程度ならメリットはあるだろうが、それ以外については、性能や質の面で、これからの5G実用化の段階で使いものにならないことが判明するかもしれないのだ。筆者には、「ファーウェイの5G」騒ぎは空騒ぎに見える。

2)「中国でのスマホ決済」への劣等感
日本のマスコミが、中国でスマホ決済がどんなに進んでいるかについて書き立てるものだから、日本人はすっかり委縮してしまった。実際には、今の現金、クレジット・カード、スマホ決済の組み合わせで一向に困っていないのに。
中国のデジタル・マネーは、集中度がすごいために、一旦悪用する者が現れたり、故障したり、停電があったりすると、全国の経済が止まってしまいかねない。それに、政府が税金を吸い上げることがいとも簡単にできるようになる。

3)「中国のデジタル・マネーはドルを駆逐する」か?
もう一つ、中国政府が今検討している、「人民銀が発行するデジタル・マネーで紙幣を廃止し、ドルを世界の貿易決済から駆逐する」ことはできるだろうか? 

そうなると、中国の国民は現金を完全に持てなくなる。脱税、節税ができなくなる上、預金凍結も簡単にされてしまう。政府が、国民の預金から税金を「自動引き落とし」するのも容易いこと。

しかし、スマホ決済と同じで、システムをハッキングして他人のIDを盗み出し、そのIDで買い物をする、或いはヴィールスを送り込んでシステムを攪乱するなど、中国人には朝飯前のことで、もしそのようなことがどこかで起きると、噂は噂を呼んで、全国の決済メカニズム、いやそれどころか、中国の経済全体をダウンさせてしまうだろう。

外国人は、中国にものを輸出すると、デジタル元での支払いを受けることになる。それはどこかの銀行の帳簿についているだけの話しで、これまでの人民元と変わらない。これを使って中国からモノを輸入することはできるだろうが、第三国からの輸入の支払いにこれを使えるかどうかは、保証がない。これを使って中国国内の株券を買うことも、これまでと同様制限があるだろう。溜まったデジタル人民元を運用しようにも、米国債のような大量、かつ有利な投資対象はない。つまり、レートはドルに結び付けられている上、ドルよりは使い途が限られている通貨。言ってみれば、人民元紙幣がデジタル人民元に代わっただけのこと。ドルのような「国際通貨」にはならない、ということになる。

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