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世界はこう変わる

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2019年9月12日

米国企業が行いを悔い改める? 株主第一主義からの脱却 の虚実

 日経でも大きく報じられていたが、米国の主要な経済団体であるビジネス・ラウンド・テーブル(約200の大企業を集めた経団連的な組織)が18日、これまでの株主第一主義から脱却し、「全国民を助ける経済」をめざすという声明(Statement on the Purpose of a Corporation signed by 181 CEOs who commit to lead their companies for the benefit of all stakeholders - customers, employees, suppliers, communities and shareholders)を発表した。

これは、これまでこの団体が1978年以来折に触れて公表してきたPrinciples of Corporate Governanceを改訂するものである。顧客・消費者の重視、社員給与の改善、サプライヤーに対する倫理的な態度等がその内容で、「短期に利益を上げようと焦るより、長期の利益を目指すべし。それがひいては株主の利益にもつながる」という、大変けっこうなもの。まるで日本企業の倫理コードを読んでいるようだ。

 これがどこまで実効性を持つかは知らないが、方向としては大歓迎。なぜなら、米国企業が(株主の)利益を第一として行動してきたせいで、長期的視点からの投資ができずに滅びた企業(カメラのデジタル化への対処が遅れたコダック等)は多数あったし、労働組合がしかける高賃金と年金を嫌っての海外への企業流出、賃金の抑制が消費不足を起こしてきたこと、金融系企業が規制緩和を貪り、過剰な利益を上げることで、社会の所得水準格差を拡大し、トランプ等のポピュリスト政治家の台頭を招いたこと等は、米国社会だけでなく、世界全体に害悪を振りまいた。ポピュリスト・トランプの「米国第一」主義が世界を混乱に陥れているのも、遠因は米国企業の短期的利益追求にある。利益至上、そしてその利益の多くを少数の株主・企業幹部が独り占めにしてきたことが、世界を壊そうとしているのだ。これが是正されるのは、素晴らしいことではないか。

しかし米国企業は本当に、借りてきたネコのようになるのか? 今回の動きは、誰が音頭を取って来たのか? トランプの選挙運動に利用されるだけではないのか? そこをこれから調べたい。そして、この声明のラインが実行されると、米国企業の利益率は下がっていく。そうなれば株価は下がり、投資も減少する。そうなると、投資銀行や年金基金は、投資する対象がなくなるのではないか? 彼らは一体何に投資して利益を上げるだろう? 土地や金、あるいは利益率は低くても「安定している」日本企業の株に投資を集中させて、バブル的な価格急騰を引き起こすのか?

今評判のアニメ「ライオン・キング」では、ライオンの王子が逃避行中、肉ではなく昆虫を主食にするようになるのだが、そんな動物を襲わないライオン、利益至上主義でない米国企業など、にわかに信じることはできないし、昆虫を食うライオン、他者のことを考えてくれる米国企業など、気味が悪くて仕方ない。

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