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2019年8月 8日

対韓輸出規制は中国のフアウェイ狙いなのか

(これは、7月24日に発行したメルマガ「文明の万華鏡」の冒頭の一部です)

日韓関係については、7月23日発売のNewsweekでも書きましたが、この原稿を書いた後、はっきりしてきたことは、半導体材料の輸出管理強化は、徴用工問題に韓国政府が真剣に対応するよう求める圧力には確かになったのですが、他方韓国を通じて中国に先端技術部品・材料が流れるのを規制する狙いもあるのだろう、ということです。

それについては7月20日付の日経が優れた取材結果を報道しているのですが、これら半導体材料・部品はサムスン等の韓国企業が日本から輸入した後、中国にある自社工場に「輸出」し、半導体に組み上げるとそれを世界に輸出するだけでなく、華為フアウェイ等の中国企業にも販売している、ということです。

こうなると、これら半導体材料・部品を韓国に輸出している日本企業は、実際はフアウェイに輸出しているということで、米国政府から制裁を食らいかねないでしょう。日本政府は対韓輸出規制強化は徴用工問題とは無関係と言っていますが、これは別にシラを切っているのではなく、本音なのでしょう。とすると、徴用工問題で韓国政府が日本に歩み寄っても、日本は韓国が対中輸出規制を強化しない限り、韓国への輸出規制は緩和できないということになります。

今回の半導体材料・部品の対韓輸出問題で、日本が実は素材・部品の製造大国である――と言うか、昔は最終製品の製造大国であったのが、そこは韓国・中国に奪われて、素材・部品だけで店を張っているという感じですが――、経済力というのは表面だけ見ていると実力を評価し損ねる、ということが明らかになりました。

この点は、日本経済の実力、将来性を論ずる上で、避けて通れない論点だろうと思います。スマホ等、生産・販売台数だけで、やれフアウェイが、やれサムスンがどうしたこうしたという議論が行われていますが、いずれも米国のクアルコム社が台湾のTSMC社に委託して作らせている(多くは中国本土で)チップがなければろくなものは作れないわけですし、日本の材料・部品がなくても高性能のものは作れないわけです。スマホやパソコンをめぐって、国・企業の番付が時々報道されますが、その多くは上っ面しか見ていない、子供っぽいものであるわけです。

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