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世界はこう変わる

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2019年7月31日

トランプは 戦後の世界体制 をどこまでこわすか その七 中国とロシアはどこまで世界から隔離されるか

中国を世界経済から隔離するなどと言うと、そんなことができるのかという声がすぐ返ってくるが、1992年鄧小平が中国の「開国」を宣言するまで、中国は世界経済から隔離されていたのだ。そしてソ連も冷戦中、一貫して世界経済から隔離されていたのである。隔離と言っても、貿易関係はあった。投資と言うか、融資をつけて生産設備を輸出することもあった。金融面でも、ソ連が稼いだオイル・ダラーはユーロ・ダラーとなって海外で運用されていたし、西側の銀行はソ連の企業、銀行に輸出信用も供与した。

一番隔離が厳格だったのは、先端技術だろう。これについては通称ココム(輸出統制委員会)という仕組みが西側に作られ、コンピューター、半導体は演算速度等、金属研磨機械は精度というように、一定以上の性能の先端技術製品は各国の主権で共産圏向け輸出を禁止したのである。もちろん抜け駆けする国、企業はあったが、米国の諜報機関が目を光らせ、企業とソ連の間の通信を解読して違反契約を摘発すると、その企業の政府に圧力をかけた。

この措置は効いた。金属研磨技術で劣るが故に、ソ連のジェット・エンジンは出力と耐久性で問題があり、潜水艦のスクリューは騒音をたてた。コンピューターの性能が劣るが故に、あらゆるものの開発には時間がかかり、西側との技術格差を広げて行ったのである。これ故に、「宇宙に兵器を配備する」というレーガンの脅し、SDI構想は、1980年代後半のソ連政府当事者に絶望と焦りを呼び、改革の手元を狂わせたのである。米国は口先だけで、SDIを実行しなかったのだが。

では今回、中国を西側の先端技術からうまく隔離できるだろうか? 今回の米国の初期動作では、中国は甚大な被害を受けている。「産業の米」と言われる半導体の供給を80%以上輸入に依存していることの咎が表面化した。「半導体は自製している」とうそぶいていたファーウェイも、その半導体の設計図を提供してきた英国アーム社に取引を停止されて、馬脚を露わした。ファーウェイの海外向けスマホの生産は、来年4000万台減少する。そして国内消費向けにも、高性能のものは供給できなくなるだろう。

中国人は誇り高いから、技術を自分で開発して西側を見返すだろう、と言う者もいる。しかし中国で資金を握るお偉方は、もっと自分勝手な行動をするだろう。彼らは資金を海外に送り、その後を追って家族ぐるみで移住しようとするだろう。かくて制裁の原因を作ったエリート達は海外で安穏とした生活を送る一方、大衆は開発途上国に戻った中国に残されるわけだ。国内は不安定化するだろう。

ロシア経済は、1991年ソ連が崩壊した直後、一気に対外開放された。外貨の使用が自由化されたために、消費財の多くは西欧からの輸入品となった。投資も自由化されたことになっているが、既存の国営企業、特にエネルギー部門では自分の利権を守るために西側の直接投資を忌避、あるいは安易に利用しようとして嫌われる傾向があった。自動車等の製造業でも、西側企業による直接投資は、ロシア側既得権益層(例えば自動車部品の流通はマフィア的連中が牛耳っていた)による抵抗、労働者不足、経営者不足等によって大々的なものとはなっていない。

と言うわけで、ロシア経済は今でもかなり世界から隔離されたままなのである。しかし、スマホやパソコン等の現代文明の利器を使いこなす点では、ロシア人は世界の先端を行く。ロボット等モノの生産では将来も望みはないが、AIでは驚天動地のものを作り出すかもしれない。

中国が世界経済から隔離されると、先進国、そして途上国の経済はどのくらい「被害」を受けるだろう。心得ておかないといけないのは、「世界の工場」としての中国が去った後も、中国以外の国々でのスマホとかパソコンへの需要は変わらない、だからこれをどこかで作らないといけない、そしてその作る所では新たな雇用が生まれ、富が流入してくるということである。途上国はこれまで中国から多くの融資を得ていたが、もとはと言えばそれは中国が先進国から得た貿易黒字であり、先進国の富が中国経由で移転されていたのだ。中国が「世界の工場」でなくなっても、中国が得ていた資金はいずれ他の国が得ることになり、それは途上国への融資にも回ることだろう。

そして、中国が隔離されても、西側の多国籍企業は残るだろう。ただ中国以外の国、あるいは「地産地消」の原則で工場を配置換えしていくだろう。これに部品を供給するサプライ・チェーンの移動も含めて、調整には数年かかるだろう。しかしかつて中国にサプライ・チェーンを構築するのも10年はかかったのだ。今回もできるだろう。

そしてこれからは、無人の生産設備にインターネットでデータを送って最新製品を生産していく時代になるだろうから、それは途上国でも採用が可能。政府が国民に紙幣を分配して製品を購入できるようにすれば、経済は回り出し、途上国経済も離陸ができるだろう。
そして中国、ロシアとも、子供っぽい拡張主義を捨てることを誓い、武装解除すれば、世界経済に再び参入させることができる

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