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世界はこう変わる

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2019年6月18日

金の切れ目が縁の切れ目 一帯一路

(これは、4月30日付日本版Newsweekにに掲載された記事の原稿です) 

 4月25日北京では、第2回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムが華々しく行われた。中国、中央アジア、インド、中東、ロシア、そして欧州等100カ国以上から、2017年の第1回の30人を大きく上回る人数の首脳 、そして数千人もの代表が馳せ参じた。まるで中世ジンギスカンのモンゴル帝国さながらの光景だ。世界のメディアはまた、中国の脅威を書き立てることだろう。しかし、カネの魅力で諸国の首脳を呼び寄せるのは割と簡単。問題は、中国がこれからどこまで「実のある」協力をしていけるかだ。

もう忘れられているが、1997年に当時の橋本龍太郎総理は「シルク・ロード外交」を打ち出し、その後数年、諸国はユーラシアでの日本の挙動に注目したものだ。日本はアジア開発銀行や世界銀行などと中央アジア・コーカサス諸国への積極的な経済支援に乗り出し、中央アジア5カ国だけで合計5000億円を超える円借款を供与。工場や鉄道、道路の整備を行った。筆者は2002年ウズベキスタンの大使になったが、当時日本はこの国では最大のODA(低利、あるいは無償の公的資金供与、技術支援)供与国になっていて、非常に大きな存在感を持っていた。

筆者はその後数年経って、北京のある国際問題研究所を訪れたことがある。中央アジアの専門家と話しをしようと思って行ったら、向こうは所長が自ら出てきて、「日本が中央アジアで大きな地歩を築いた秘訣」を根掘り葉掘り聞いてきた。当時中国は急成長を遂げたばかりで、これから中央アジア方面に翼を伸ばそうとしていた時。筆者は、日本の場合インフラ整備に融資をすること、カネだけでなく文化面での交流など、心の手当てにも意を用いていることを懇切丁寧に説明した。

と言うのも、中国が中央アジアに進出するのは、日本にとってむしろ良いことだと思ったからである。日本はこの地域との経済関係で、期待するものはそれほど大きくない。中国が乗り出して、日本が失うものは少ない。むしろ旧「宗主国」のロシアが焦って、中央アジアとの協力を進めるだろうから、この地域の開発はもっと進むだろうし、ロシアや中国は日本との提携を求めてくるだろう――そう思ったからである。

しかしそれにしても、その後の中国の進出ぶりはすごかった。相手の心も全てカネで買う、と言わんばかりの鼻息。諸省庁、そして官民の企業がユーラシアの津々浦々、バルト諸国やバルカン諸国にまで分け入り、中国政府予算、融資、補助金を当て込んでは、ありとあらゆるプロジェクトに唾をつけた。それを束ねて2014年、習近平は「一帯一路」という明快な旗印を繰り出す。

しかし、プロジェクトの中には、パキスタンの大火力発電所建設のように、始動していないものも多い。「ユーラシアを横断して中国と欧州を結ぶ」鉄道も、既存のロシア経由のものが細々と機能しているだけで――両地域間の貨物の殆どは今でも海路で輸送されており 、鉄路での輸送は中国政府の補助金を要する ――新たな建設は進んでいない

そして中央アジア諸国がODAよりも直接投資の誘致に政策の重点を変えると――直接投資は返済する必要がないし、失敗しても現地政府官僚は責任を問われない――、日本も勢いを失ったのに似て、中国の製造企業も投資環境の厳しい中央アジアで操業しようとするものは少ない 。そして今、中国の国際収支は殆ど赤字になる勢いなので 、バラマキ外交ももうできない。カネの切れ目が縁の切れ目。現代のモンゴル帝国は、夢に終わることだろう

中央アジアでは、カザフスタンで大統領が代わり、ウズベキスタンでは2016年に就任したミルジヨエフ大統領がまだ権力を固め切れていない等、不安定要因は残る。しかし日本は別に一帯一路に神経質になったり、圧倒されることもなく、中国の手がける案件で良いものがあれば協力すればいいし、中国がインフラを作れば利用させてもらえばいい。中央アジアは中国に牛耳られてしまうこともなく、逆に体力を強化して中国やロシアに物申す存在になるだろう。日本は中国の力を逆用して対中外交に利用する、「合気道外交」を心がければいいのだ。
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