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世界はこう変わる

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2019年4月17日

否応なくアメリカ・ファースト の時代

(これは3月27日に発行したメルマガ「文明の万華鏡」第83号の一部です)

2016年の大統領選における「トランプ候補とロシアの結託」の有無を捜査してきたモラー特別捜査官の報告書は3月22日に司法長官に提出された。内容は発表されていないが、トランプ大統領の弾劾と訴追を可能にするような材料は含まれていないとされる。トランプへの支持率は一向に下がらないどころか、今や上昇の傾向を示し、民主党、反トランプ勢力は青ざめている。

経済はオバマ時代の政策が実ったのだろう、空前の活況。大統領選挙で票を稼ぐには、米国民の多くが老後に備えて投資している株式の相場を上げないといけないが、トランプは空前の(無責任な)減税で株価を押し上げた後は、連銀による利上げを止めさせ、財政をバラマキ、それでも株価が下がると「対中貿易協議が進展するかも」というニュースを流す。いくつもの道具を使って、毎日株価を操縦しているようだ。

財政赤字の拡大が資本市場を圧迫して金利を押し上げ、それが前記の如くGDPの約半分相当にものぼっている社債の返済を難しくして不良債権の山を築き、バブル崩壊を招く危険性も指摘されているが、長期金利は上がるどころか今や下がり始めている。連銀がドルを増刷しても、ドルは市場にあふれたり、住宅投機にまわったりせず、金持ち階級がただ単に「使わない」ことで連銀に戻っているのだろう

大統領選挙に向けてトランプには、インフラ修理の公共支出を拡大し、景気を刺激するという手がまだ残っている。また連銀が金利引き上げを止めると宣言したため、余剰資金は再び途上国に向かって、途上国の景気を押し上げるだろう。つまり経済は米国、世界全体とも、ごまかし半分ながら米大統領選までは好況を続けるだろう。

「トランプは外交が破天荒で、欧州、アジアでの同盟体制を破壊した」と言われるが、例えばメルケル・ドイツ首相との「喧嘩」も言葉の上だけでのことで、NATOは安泰。最近訪米したボルソナーロ・ブラジル大統領にトランプは、NATOのメンバーになるよう勧めているくらいだ。ドイツに向けてロシアが敷設している天然ガス・パイプライン「ノルト・ストレームNo.2」も、トランプ政権による圧力もものかわ、完工間近だ。

アジアでも、北朝鮮とは無原則な宥和に陥る一歩手前で踏みとどまり、韓国や日本からも米軍を撤退させる動きはない。中距離核兵器撤廃条約から脱退したことで、無原則な核武装競争に火をつけたと言われるが、米ロの間ではこれは多分、予定の行動。双方とも中国のミサイルを抑止するためにも、中距離ミサイルを以前から開発中だ。トランプがロシア疑惑から一応開放されたことで、米ロ間の核軍縮交渉は本格化するだろう。長距離の「戦略」核兵器を制限する米ロ間の新START条約が2021年には期限を迎えるので、交渉するべきことは多いのだ。

こうして米国の力は今のところ安泰。世界は多極化どころか、むしろ「米国による世界の統一」の方向に向かっている。米国は今や自分の法律を外国の企業にも押し付けて、従わなければ制裁措置を取る時代になっている。そのあたりを3月12日発行、日本版Newsweekに書いたので、その原稿の一部を抜粋しておく。全文は、https://www.newsweekjapan.jp/kawato/2019/03/post-31.php をご覧いただきたい。

――今の世界を規定する最大の要因はやはり、トランプ米国が内向き、かつ没価値で、自由とか民主主義などの「お飾り的な」言葉には見向きもせず、我利の追求に夢中であることだろう。トランプにとって同盟国は、米国に安全保障を依存する上、貿易で利益を搾り取る、余計なお荷物にしか見えない。ロシアや中国、そして北朝鮮と差しで話しをつけて、同盟国は放り出す。

善意と理想が幅を利かせた時代は終わったのだ。「米国は自由と民主主義という価値観を共有する日本」を必ず守ってくれるだろうというお人好しの対米観は、多分トランプの後ももう通じないだろう。

 では、米国は内にこもり、世界では弱肉強食、ジャングルの掟が支配するのか? そうではないようだ。トランプは就任に当たって、米国を再び世界で尊敬される国にしたい、と言った。その後の彼の言動を見るに、それはどうも世界中を米国社会の自由さと繁栄ぶりで感服させるのではなく、力で脅しつけて言うことを聞かせることを意味しているようだ。

 そしてそれは、うまくいっている。中国は関税引き上げで脅しつけられ、この頃は米国の機嫌を損ねないよう、盟友ロシアとの関係も袖にしている。中ロ両国間の貿易では、決済の大部分にドルが使用され続けているし、ルーブルと人民幣をもっと使おうとする協定の交渉は、昨年末中国が棚上げしている。ロシアも、口では威勢のいいことを言いながらも、核軍拡をしかけられたり、対外貿易でドルの使用を禁じられたり、エネルギー開発・輸出案件への技術・融資を止められると干上がるので、米国の虎の尾は踏まない。

 そして米国は、今や自分の法律を外国企業の海外での行動にも適用し、違反したものには制裁・罰金を科す(米国法の海外適用)ことが増えている。米国の対ロ制裁や対中技術輸出禁止措置に反すると、米国内でのビジネスを禁じられたり、ドルを用いた決済ができないようにされるので、外国企業であっても否応なしに米国の法律を守る。その様は、トランプが世界を解体していく傍らで、「米国政府」という得体のしれない集合体が世界の政府になろうとしているように見える。こうなれば、日本やドイツといった国民国家は、米国に納税する代わりに発言権を認めてもらう、くらいの気構えが必要になる――
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