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世界はこう変わる

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2018年7月 3日

アルメニアをめぐる風雲急

(これは、6月27日に「まぐまぐ」社から発売したメール・マガジン「文明の万華鏡」第74号の一部です。このメルマガを毎月早く入手されたい方は、http://www.japan-world-trends.com/ja/subscribe.phpにて、講読の手続きをお取りください)

アルメニアというのは、コーカサス地方で旧地中海文明のあとをひく、文明度の(腐敗も適度にしているらしい)高い国なのだが、人口300万の小国、資源も乏しく、国際政治の波にもまれている。この国では先月号でも紹介した通り、4月に政変があった。何期も大統領を務めたあげく、首相に横滑りすることで更に実権を握り続けようとしたサルクシャン氏。街頭で反対集会がひどくなった4月にはロシアに引導を渡されて――ロシアはこの国に約5000人の軍を置いて、仮想敵国アゼルバイジャンとトルコからアルメニアを守っている――辞任。

後任首相には反政府運動を指揮したジャーナリストのパシニャン氏が5月、国会で選ばれた。国会与党はサルクシャンの政党で、ロシアの差し金でパシニャンを支持していることもあり、パシニャンの足元は何ともおぼつかない

隣国アゼルバイジャントルコが、この機につけこみ、どうも良からぬことを企んでいるらしい。アルメニア南部にはアゼルバイジャンの飛び地ナヒチェヴァン自治共和国がある(アゼルバイジャンにはアルメニアの飛び地ナゴルノ・カラバフがあるのだが、これは別の話し)。これまで静かだったナヒチェヴァンをめぐる情勢が俄かにきな臭くなってきた。

5月末、アゼルバイジャン軍はナヒチェヴァンの高地2カ所に陣取った。他方トルコは国境を接するナヒチェヴァンをめがけて、鉄道を敷設し始めた。ナヒチェヴァンを横断するとイランに出ることができる。トルコとイランは国境を接しているが、ここは山岳地帯で、ナヒチャヴァンは平地なのだ。ソ連時代には鉄道が通じていた。

トルコとアルメニアは敵対関係にある。だから、トルコはイランに通じる鉄道を、アルメニア領を横切って敷設できない。オスマン・トルコの時代、アルメニアはトルコに支配されていて、100万人以上を虐殺された過去を持っているからである。

またアルメニアは右隣りのアゼルバイジャンとは小規模軍事衝突を繰り返すほどの敵対関係にある。それは前述した、アゼルバイジャン領内にあるアルメニア人集住の飛び地ナゴルノ・カラバフ(Artsakhに改名)を征圧するべく、アゼルバイジャンが常に軍事圧力をかけているからである。アゼルバイジャンは原油輸出収入で軍備を強化しているが、アルメニアはロシア軍に依存して、ユーラシア経済連合、集団安全保障条約機構にも心ならずも入っている。

アゼルバイジャンとトルコは人種・言語的に近く、同じイスラム教でもある。トルコがナヒチェヴァン自治共和国を横断してイランに通じる鉄道を敷設することは、アルメニアにとっては心安からぬものがあろう。アルメニアはイランから天然ガスを輸入しては電力をイランに輸出するような緊密な関係にあるからである。

とにかくこのコーカサス地域、シリアと同じでアクターの多いこと。しかも、それぞれの間の関係がねじれにねじれ、歴史の怨念もからむ。合従連衡の動きはほぼ無原則なこともあり、この地域の情勢はとても解けないパズルとなる。

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