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世界はこう変わる

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2018年6月10日

中央アジアの自立

今、中国の青島で上海協力機構首脳会合が開かれている。インド、パキスタンが加盟して初めての首脳会合。さぞかし「中国、あるいは中国とロシアがユーラシアを牛耳った」的な論調が明日からあふれるのだろうが、ことはそう簡単ではない。上海協力機構の「あんこ」に相当する中央アジア諸国が自立傾向を最近強めているからだ。
以下は、5月23日に発売したメルマガ「文明の万華鏡」第73号からの抜粋。全文をご覧になりたい方は、「まぐまぐ」社のサイトからお願いします。

中央アジアの中心的な存在であるウズベキスタン、カザフスタンの双方に、外交自立化の傾向が強まっている。特にカザフスタンはなぜか、ロシアの神経を逆なでするようなことを繰り返している。まず3月17日、カザフスタンの首都アスタナでカザフスタン、ウズベキスタンが中心になって非公式の中央アジア諸国首脳会合(トルクメニスタンは国会議長が参加)を開いたことがあげられる。中央アジア5カ国が集まるフォーラムは2000年代初期まであったのだが、ロシアがこれに強引に割り込んで雲散霧消させ、ユーラシア経済連合に吸収合併したかっこうになった(右連合に加盟しているのはカザフスタンとキルギスのみ)。

これを今回、ウズベキスタンのミルジヨエフ大統領の旗振りで、非公式の集まりと言うことでロシアに気を配りつつも、そろりと再開したのである。ミルジヨエフはロシアと強いコネを持つ人物であるが(ウズベク出身のウスマノフがロシアでも有数の事業家になっていることが大きい)、中国にも既に旧ソ連諸国以外では最初の相手として昨年5月訪問、今回は16日に米国を公式訪問してトランプとも会談した。

これは、トランプがイランの核合意から離脱し、パレスチナでイスラエル軍が弾圧を行っている時だったので、海外のイスラム教勢力からは訪米を批判する声もあったが、米国との関係は進展した。ミルジヨエフ大統領は、ウズベキスタンがロシア、中国に過度に引き寄せられないよう、毒消しとしての米国を必要としている。米国にとっては、米軍がアフガニスタンで作戦する上で、ウズベキスタンは兵站のルートとして重要である。米国は中央アジアでロシア、中国と勢力争い=「グレート・ゲーム」をやろうとしている、という声があるが、今のところ米国にその気はない。

カザフスタンは最近、ロシアとの関係で独自性を強めており、ロシアでのカザフスタン批判のトーンが高まっている。カザフスタンはまず、カザフ語の表記をキリル文字からアルファベットに転換するとの方向を打ち出したことで、ロシアの神経を逆撫でした。実際にはカザフスタンの都市住民の間におけるロシア語への依存度は中央アジア随一とも言えるほどなのだが、どうも外国からの投資を促進するためにアルファベットに移行したいようだ。そうしないと外国人は、道路標示も理解できない。

そして次に摩擦要因となっているのは、カザフスタンが「ロシアを経由しない東西回廊を構築している」ことである。これは中国の一帯一路にも関わってくるのだが、中国と西欧を結ぶ鉄道路線をカザフスタンが開発しているというのである。これまでのルートは中国・新疆からカザフスタンに入り、ロシアに入ってロシアの鉄道で西欧に赴くのであるが、カザフスタンはカスピ海をフェリーで渡し、その先はアゼルバイジャンからトルコへの鉄道を整備して、ロシアを通らないルートを開発しているというのである。

昨年10月にはアゼルバイジャンの首都バクーで、その一環となるバクー・トビリシ・トルコ間鉄道の開通式が行われ、アゼルバイジャンのアリエフ大統領、トルコのエルドアン大統領等が出席したのだが、カザフスタンのナザルバエフ大統領はロシアからの圧力で出席をドタキャンするに至っている。

ロシアとの間でさらに強い隙間風を吹かせたのが、カザフスタンがカスピ海のアクタウ、クーリク両港を、米軍のアフガニスタン向け兵站物資輸送に使うのを許可し、米軍要員の駐留まで認めたことである。ロシアのマスコミは、これに過度と思える程の反発を示している。以前は米軍の兵站物資は欧州からロシア、カザフスタン、ウズベキスタン経由の鉄道で輸送されていたのだが、ロシアを外したルートを作るのは許せないというわけだ。

さらにそれに輪をかけて、米軍がシリアを巡航ミサイルで攻撃したことを非難する、国連安全保障理事会決議案(ロシア主導)の評決(4月15日)で、カザフスタンは棄権したのである。カザフスタンはナザルバエフ大統領が1月に訪米して、政府基金の在米資産凍結(モルドヴァの実業家の訴えに基づくもの)を解いてもらったばかりである。米国に歯向かいができなかったのであろう。

しかしカザフスタンは、ロシアに対して少しやり過ぎの感がある。気をつけないと痛い目に会うだろう。ロシアは、気に入らない国に工作して、騒擾事件を起こすこともできるだろうからである。


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