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世界はこう変わる

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2017年11月14日

米国は大丈夫と思う? と聞いてくるこの頃のアメリカ人

(これは、10月24日発行したメルマガ「文明の万華鏡」第66号所載の記事の一部です。
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米国から友人が何人かやってきた。僕もトランプになってからの米国には行っていないので聞いてみると、「街の表情に特に変わったところはなく、人種対立の表面化などもないが、政治的には分裂が目立つ」ということだった。しかし、これまで何度も定住先で迫害を受けてきた歴史のあるユダヤ人は、今住んでいる国での安全に人一倍神経質なところがある。あるユダヤ系米国女性は僕に聞いてきた。「アメリカという国、大丈夫だと思う?」。

僕は答える。「トランプが移民を変に制限しなければ、人口は増えるし、技術革新は続くから大丈夫では(ちなみに国土安全保障省の統計によると、今年第2四半期に米国での定住権を得た外国人の数は27万人で、昨年同期より4%の減少を示している。第1四半期では約29万人で1%の増加だったのに比べてかなりの減少ぶりである)? でも既得権を持った連中の富や特権を制限して、国全体、社会全体のことを考えさせるのは難しいよね。今のアメリカは皆自分のことばかり。白を黒、黒を白と言いくるめる屁理屈をDebateだと称して威張っている。まるでローマ帝国末期――つまり我欲に歯止めがきかず、改革不能で破滅に向かっていく社会――のようだと思う時もあるけど。やはり、ソ連がなくなったことで、アメリカ人は思い上がっちゃったんだろうね」。彼女は深く頷いた。

米国は随分劣化した。CNN(しか見ていないので)にそれはよく見える。以前は世界中の重要なニュースをカバーしてくれていたのに、この頃はトランプの宣伝ばかり。いや批判ばかりなのだが、彼のことを報道すればそれは宣伝になる。外国で何か起きても、インターネットあたりから引っ張り出してきた通念を適当にペーストしただけのような、通念に通念を上塗りするような報道ぶりでごまかす。この頃の学生のレポートと同水準。例えば、「日本での安倍総理の勝利は、北朝鮮ミサイルの脅威を煽って実現したものだ」というような報道がそうである。

シリアでは9月23日、ロシアの将軍1名と大佐2名が米軍の支援を受けた反政府派に殺され、これは相当重要なニュースだと思ったが、CNNでは一言も言わない。それどころか、(多分カメラ・クルーが入れないからだろうが)このところ、CNNはシリアもウクライナも何も報道せず(シリア関連報道は、ラッカ解放で一時増えた)、「ロシアがトランプの当選を助けたか、そうでないか」だけを、重箱の隅をほじる様にして報道している。トランプ支持者はCNNを見ないし、反対者もこの報道ぶりには飽き飽きしているようだ。

シリアでは長年、湾岸諸国が反アサド運動を支援(米国の一部機関もこれを助けていたという報道が多数ある)、社会を無用にゆさぶり、遂に500万もが難民となって、シリアは戦場と化した。そのようなウラは、米国のマスコミは全然報道しない。シリアの民主勢力が独裁のアサド政権に反対して立ち上がった結果、今のような混乱が起きたのだ、というストーリーで凝り固まり、共和党、民主党の二派に分かれて、それぞれに都合のいいことばかり言っている。

シリアでは、ISIS掃討作戦が功を奏し(と言っても、ISISの少なくとも一部は、かつて湾岸諸国等の資金を受けていたようで、今でもこっそり取り逃される等、不透明な動きが報道される)、今や問題は戦後の陣取り合戦、つまりロシア、イランの支援するアサド政府、米国の支援する反政府派、クルド勢力、後者に対抗するトルコも加わって、どのようにシリア、イラクで陣取りをしていくのか、ということになっている。そしてクルドと言っても、内部に部族の対立があって一枚岩ではない。そこらはCNNはもはや何も報道しない。ロシアは悪、アサドは悪、クルドは善と決めつけた上で、単純化された有害無益なストーリーを考え出す。

ウクライナでは、この1年以上、モスクワの宥和路線に反対する東ウクライナの野戦司令官が数名殺される等、プーチンが「名誉ある撤退」を模索している様も見えるのに、米国のマスコミはこれも報道していない。そんなことを報道すれば、9月19日には米議会でウクライナ政府への兵器供与予算(5億ドル)が決まったが、こういうものが駄目になるという算段か? それとも、米国マスコミはインターネットに押されて広告を失い、満足な取材や調査をするカネがなくなったのか?

トルコにしても、米国との関係悪化が目立つのだが、これもCNNは無視。足元のプエルトリコについても、9月末のハリケーンで全土が停電してもう1ヶ月にもなるという現状を、ただ「大変だ、大変だ」と言うだけで、なぜ救援がこれだけ遅れるのかについての取材、調査は皆無なのだ。

政権がやっていることも、マスコミと似たりよったり。やっていることが、ちぐはぐなのだ。例えばプエルトリコへの救援が遅れているのは言うに及ばず、米国の裏庭とも言えるベネズエラで起きているひどい人権無視、大荒れの経済情勢について何もしない。メキシコ、カナダとの間ではトランプの掲げた北米自由貿易協定NAFTAの見直し(米国への無関税輸入分の削減など、米国の赤字解消を狙ったもの)も遅々として交渉が進まず、このままでは来年8月の大統領選で左派反米のLopez Obradorの当選を許しかねない情勢にある。

いつも日米同盟の重要さを説いてきた僕にしてみると、自分の商品がどんどん腐ってきているみたいで、やりきれない。在日米軍がしっかりしているから大丈夫だと思っても、10月11日のヘリコプター墜落では原因も明らかにならないうちに飛行再開。これに対して小野寺防衛相が「十分な説明がなされていない」と言葉だけ勇ましい声明を出して頬かむり。これがトルコのエルドアン大統領あたりだったら、もう少しましな対応をしてくれるだろうに。

不安だ。しかし不安だと言っても、日本がやるべきことは反米派も親米派も同じ。自主防衛能力の向上なのだ。

(こんな風にぼやくだけでも仕方ないので、10月31日発行の日本版NEWSWEEK誌に次のことを書くつもりでいる。
1)11月5日からのトランプ大統領の訪日、そしてそれに続くアジア諸国歴訪を前向きに活用しよう。
2)日本は戦後築いた自由で民主的な社会を守るためにこそ憲法改正をするのだと声明して、安倍=保守反動という世界の誤まった既成観念をこわそう。
3)そしてトランプが国連総会での演説で披露した、主権国家間の不介入、公平・公正な分担による安定と繁栄の確保に加えて、紛争やテロの温床となる格差を解消するための途上国支援を中国も巻き込んで展開していくことを共同声明で謳おう。
4)それによって、世界の方向感覚を回復、同時に日本の国際的地位も引き上げる)――
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